「はあ〜、如何したものか……」
「どうしたの、?」
自分にしても珍しく 深く悩んでいるとが
とりあえず形だけだが理由を問いかけてきた
「別にたいしたことじゃねぇけど……」
「それじゃあ、心配しなくても大丈夫だよね?」
「………おい!」
とりあえずの前置きを述べたつもりだったのだが…
考えてみりゃこいつに前置きなんて必要なかった、と
心の中で後悔しつつ
一応は話を聞いてほしい俺はついつい
相棒を引き止めてしまった
「なによ〜!あたしこれから伏魔殿にいって神流について
調べるっていうとっても大事な用事があるんだから 手短にね!」
ギャーギャー文句を言いつつも話を聞く気はある
の様子に俺は安堵する
実際に今、話を聞いてくれそうなのは 目の前の相棒だけなのだ
「なあ、…今日は駅前のスーパーで安売りを
やってるんだが いった方がいいか?」
「当たり前でしょ?ていうか、行けv
それより何であたしにそんな事聞くの ?
答えは分かりきってるくせに」
…確かにならこう答えるだろう、と予測はついていた
それに俺は予測の式神 自分でもその事については誇りを持っている
しかし 予測が外れるのを期待して聞いたのではない
少しでいいから"行かなくていい"と言ってほしかった…
心の中で涙を流しつつ反論を試みる
「駅前のスーパーはここからかなり遠いんだぞ!
自慢じゃないが、俺は長距離になればなるほど伏魔伝や
名落宮に迷い込む確立上がんだよ!」
念のために言っとくけど 俺は決して怠惰な理由から
行きたくないわけじゃない
むしろ悲しいことに家政婦っぽい習慣が身についてきたからか
“安い”という言葉の為なら多少の犠牲も仕方ないと
考えるようになってきてるのだ
ああ、と軽く手を打ったは
にっこり笑顔を浮かべ、空恐ろしいことを口にする
「迷った時のために保護者さんに連絡いれとくねv」
「それだけはやめぇい!!」
必死の叫びにやっとにも
俺が買い物に行くのを嫌がる理由が分かったらしい
〜「男の友情?」〜
「何だ、 保護者さんと喧嘩したの〜
早く仲直りしなきゃだめよ?」
「まぁ…そんな所だ、アイツに会うの気まずくてな;」
勘違いさせた方が好都合なので 適当に言葉を濁す
「仕方ないなぁ、今日はあたしが買い物に行ってきてあげるよ
今朝テレビの占いで 遠出すると吉って言ってたしね?」
は喧嘩っ早いんだから、とか
何発殴ったの?などと
色々 根も葉もない事を好き勝手に織り交ぜて言ってたが…
買い物を変わってもらえるだけで有難いので
何も言わないことにした
それに俺自身が目当てで襲われかける、
なんぞ絶対言いたくなかったから
思いつきの 面白半分でしかない推測は知らん振りした
買い物かごをもって家を
後にしようとするを俺は笑顔で見送った
そのわずか数十分後、留守番していた俺に
別の意味での危機が訪れていた
何故ならが買い物に出発したわずか数分後に、
天流最強闘神士吉川ヤクモが家に来たからだ
意外な所で敏感なアイツはヤクモさんの気配とあらば
どんなわずかな気配であってもかぎ分ける
端からヤクモさんの訪問を隠し通すことが
不可能とわかっている為
が帰ってくるまで、どうやって家にあげたヤクモさんを
引き止めるかに頭を悩ませるはめになってしまったのだ
どうしてたかが数分なのに入れ違う、とか
なぜよりにもよって今日なんだ、など
多少の不条理さを感じるところもある…
けれど彼がここに訪れた理由が、
最近 神流についての捜査を始めた
が大変なことになってないか、
という宿主の心配の気持ちからであり その本人は出かけていて、
しかもその原因を作ったのが俺自身
なので毎度のことながらヤクモさんには申し訳なく思ってしまう
そのことを話しても、
「気にしなくていいさ 単にすれ違っただけだから」
と爽やかな笑顔で返されてしまうのだから尚の事
「茶のお代わりいるか?」
「ああ、頼む」
今、俺に出来ることは ヤクモさんのために
おいしいお茶を入れてあげること
とっておきのお茶菓子を出してしまったが…
彼のためならばも怒らないだろう
ヤクモさんの湯のみに茶を注ぎ終えたとき
「スマナイな わざわざもてなしてもらって…」
「いいんですよ、をお待ちして頂いてるし…」
お互い苦笑交じりで言葉を交わす
スマナイのはこっちの方ですよ;
もともと彼との接点が少なかったためか、
時が進むにつれ話題も減ってくる
それに俺にとってヤクモさんは、
に "仕入れた情報を言うな"と
口止めされている為、余計に気を使ってしまう相手である
しだいに、沈黙が重く二人の間にのしかかっていった
「ところで ちゃんはどうして
神流について調べようと思ったんだ?」
おそらく自身に聞く筈であった事を問われ
俺は一瞬硬直してしまう
まさか正直に、
"ヤクモさんの役に立ちたがっている"など
とても言えない
そんな事言った日には 絶対アイツに殺される;
しかしそれよりも 俺は逆に気にかかった…
「アンタこそ、どうしてそんな事を聞きたいんだ?」
目の前の相手がまだ 何を考えているのかはわからなくとも…
まずは"相手の意図を汲み取ること"が
何においても重要だ、と思った
俺の胸の内が伝わったのか、
ヤクモさんは苦笑しつつ
右手で頬をかきながら
「ちゃんって
どこか危なっかしい感じがするから…だろうな
見ているこっちが冷や冷やさせられるし」
「へぇ…アンタもそう思ってたんだ」
彼女には内緒にな、と付け足すヤクモさんの言葉に俺は
まったくだ、と心のなかで同意する
性質の悪いことに 本人にその自覚はない
いや、"それがあたしの魅力でしょ〜?"などと
ほざくからには自覚はある
ただ直そうとしないだけだな……ったくあの確信犯女は;
「そんな彼女が神流について調べるなんて言うから
いままで以上に心配になってな」
の事をこんな一生懸命心配してくれるなんて…
この人はなんていい人なんだ と思う反面、別の感情が
俺の中でふつふつと湧き上がる
「ご心配いただきありがとうございます
ですがは俺がしっかり守ります」
「頼もしいな ちゃんは」
口元にうっすらと笑みを浮かべたヤクモさんにそう言われると
まるで連帯感のような、なんともいえないものを感じた
これが男の友情ってやつかな
俺は女だけれども、
過ごして来た年月のせいかそう考えてしまう
近頃、女扱いばかりされていたから
ヤクモさんの言葉がただただ嬉しい
不意に俺は昔の、
かつての自分と相棒を襲った相手の事を
話してみたくなった
「ヤクモさん、ちょっと俺の昔話に付き合ってくれますか?」
「いいとも、聞かせてくれるか?」
「そうか、そんな事があったのか……
辛いことを聞いて悪かったな」
「気にしないでくれ、俺が話したかったから話しただけだ
アンタこそ…聞いてくれてありがとう」
目を閉じてじっと耳を傾けて
俺の話を最後まで聞いた、彼の第一声
哀れみでも同情でもなく
事実をしっかり受け止めようとするヤクモさんを見て
やはり話してよかった、と俺は思った
話を終えてふと時計を見ると 長針は既に一回りしているようだ
「あ もうこんな時間か…
そろそろが帰ってくると思いますよ?」
「そうか、早く帰ってくるといいな」
「また寄り道してなきゃいいけど」
と呟くと
「確かに」
ヤクモさんの顔に柔らかい笑みがこぼれた
たまにはこんな…迷子にならない、
穏やかな日々もいいなと思った
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あとがき(というか楽屋裏)
狐狗狸:この話もMからのお礼話を アレンジしてUP〜
マジでありがとうM!!
ヤクモ:今回は珍しく ちゃんとの話なんだな?
狐狗狸:そうみたいです〜まぁアナタが相手の場合 友情風味な為
元の話の白ヤクモっぷりを 強調してみました(ぇ)
ヤクモ:それはいいとして…
オレの台詞が少ないような気がするのだが
狐狗狸:これでも増えた方なんですよ?
原作もちと少なかったし
ヤクモ:しかしちゃん苦労してるな…
ちゃんの事も見守ってるし
苦労かけ過ぎないようにしてあげてくれ(穏やかに)
狐狗狸:……一番それで動かしやすいキャラだから無理かも(合掌)