夜、パソコンでネットサーフィンしていると
スキーツアーの広告がやたらと目に付いた
「この時期はシーズンだから多いなぁー」
始めは、特に興味はなかった
…けど その広告の一つのアオリ文句が
なんとなく目を引いた
"彼女と一緒に 銀世界にシュプールを描く…"
気がつけば、予約の手続きをしていて
明日 相手を誘おうと思った
頭に浮かんだのは…年上なのに幼いあの人
「こんにちは、さん」
「あ、こんにちはソーマくん」
「実は僕 さんに聞いてほしい事があって」
僕の言葉が終わる前に、さんが
手を合わせて頭を下げる
「ゴメンっソーマくん、用件の途中悪いんだけど
あたし今、探してるの」
出端をくじかれて、少し戸惑う
「また 迷子なの?」
「そうなの、また買い物行ったきり帰ってきてなくて
多分、伏魔殿に迷い込んでると思うけど…」
"予測"を司る六花族のはずなのに
どうしては超がつくほどの方向音痴なのか
ぶっちゃけ気になる謎の一つだ
「折角だから、一緒について来て探すの手伝って?
お願いお願いお願い〜」
さんに頼み込まれて断る事も出来ず
「しょうがないなぁ」
僕も一緒にを探すことになった
〜「謎も混乱も不条理も」〜
伏魔殿に引っ張り込まれて数分後、さんが
向こうに目をやってから 手招きした
「いたいた ソーマくん、こっちこっち」
「え?もう見つけたの?」
少し息を切らしながら 側まで駆け寄る
…うう、最近株に集中してて運動不足だから
体力落ちたのかなぁ
「うん、保護者さんと一緒〜」
「保護者って 誰…」
さんと同じ方向に目を向ける
と一緒にいるのは…え、オニシバ!?
頭の中に、様々な疑問符が駆け巡る
あまりに予想外の光景に固まっていた
僕の腕を さんが強く引く
「隠れて!」
言われて、僕も思わず
近くの茂みにしゃがみ込んで身を隠す
「な、何で?どうして!?」
まだ混乱している頭を必死で落ち着かせながら
僕はさんに小声でたずねる
「…珍しく仲良さそうだから、ちょっと様子見てようよ」
「ええっ、でも 僕たちを
迎えに着たんじゃ…」
『ソーマ、諦めろ のあの目じゃ何言ってもムダだよ』
…神操器から聞こえるフサノシンの声に
僕も 納得してため息一つ
さんの今の目は明らかに
"面白いもの発見!"って感じの子供の目だもん
僕らは近くのしげみに隠れたまま
楽しそうな二人の会話に耳を澄ます
「お前ん所の味付けって どんな感じ?」
「あっしは旦那の好みもありやすから、薄味で
素材そのものの味を生かす感じでやすかねぇ」
「へぇ 俺はがお子様味覚だから
どっちかっつーと濃い目だな」
なんて言いながら、ほがらかに笑ってる
「米と一緒に鶏を煮ると、肉が柔らかくなって
味も一段とうまみが増しやすよ」
「そいつは知らなかった、じゃあお前は
納豆を酢で炒めてみた?」
いいや、とオニシバが首をふる
「酢で炒めると臭みが抜けるらしいぜ?
こないだ作った納豆チャーハン好評だったし」
「なるほど、今度試してみやすよ
上手くいきゃ旦那もすんなり食うかもねぇ」
「…意外と盛り上がってるねー料理談義」
となりでさんがそう呟いた
僕はどこからツッコんだらいいんだろ
まず、なんで地流のタイザン部長の式神のオニシバが
ここでと一緒にいるのか
何気に知り合いってか 付き合ってるっぽくない?
てゆうか伏魔殿で二人揃って
なんで料理の話で盛り上がるの?とか
オニシバってそーゆうキャラだっけ?
あまり口聞く機会なかったけどもっと
カッコよくて渋くて大人って感じじゃ…とか
でもその二人を さんと僕が一緒に
覗き見してるこの状況からして既におかしいから
例えツッコんでも返されるよねー…
いけない、冷静になれ ソーマ!
たしか僕はさんをスキーに誘いに来たはず
正直今の状況はかなりアレだけど
隣で二人っきりってポジションは悪くない!
「さん、実は僕 聞いてほしい事が
あって来たんだ」
「そう言えばさっきも言ってたよね、なあに?」
「あの…今度 僕と一緒にス「あゴメンしゃべんないで!」
えええええええええええええ〜!?
思い切って出した言葉が途中で遮られた…!?
ショックを受ける僕なんておかまいなしに
さんは二人の方に意識を集中してる
…どうやらオニシバがちょっかいだして
雰囲気が変わってきたっぽい(修羅場に)
恨めしく思いながら、黙ってその様子を見ていた
「あ、見事なハリセン連携コンボ〜」
「わー痛そう」
の華麗な技が立て続けにヒットして
やむなくオニシバは強制的に帰らされたっぽい
「あーあ 保護者さん強制退場〜」
他人事のように(じっさい他人事だけど)
へらへらと笑うさんがちょっとコワイ
が急にこっちを向いて、
「とソーマ テメェらいつから
隠れてやがったんだ、そこから出て来い」
不機嫌そうに怒鳴り
さんが僕をチラッと見て頷き、
同時に立ち上がって しげみから出た
「面白そうだったからついね〜てゆうか
元々は帰りが遅いが悪いのよ?」
「うっ…そりゃそうだけど…で、ソーマは?」
「僕はさんに頼まれたから」
間髪いれずに答えると、が
すまなさそうに耳まで垂れさせて
「そうか、すまねぇな 迷惑かけちまって」
『へー珍しい お前も反省すんのか』
「どういう意味だコルァ」
神操器から出てきた半透明のフサノシンと
ケンカ腰な雰囲気になりながらも
そのままさんの家にお邪魔する事になった
「ありがとうございます、あんまり
何もしてないのに なんか悪いなぁ」
「いいのよ ソーマくんには
探し手伝ってくれたお礼しなきゃだし」
ニコっと笑うさんにすすめられて
僕は出されたお茶とお菓子に手を伸ばす
「あーやっぱり寒い日はお茶がおいしい〜」
両手で湯飲みを包みながら、お茶をひとすすりして
さんが幸せそうに呟く
普段年上のくせに 僕より子供っぽかったり
コロコロと色んな表情を見せてくれたり
本当に可愛い人だな…ってぼんやり考えつつ
お茶を口に含んだら ちょっと熱かった
「あち!」
「大丈夫?慌てると舌、火傷するよ?」
「大丈夫だよ」
舌がまだ少しヒリヒリするけど、
子供扱いされたくなくて平気なフリをした
そう?と心配そうに見つめて
急に、何かを思い出したかのように
さんは両手をポンと打った
「あ、そうだ あの時ソーマくんが何か
言おうとしたの遮っちゃってゴメンね」
「え、あ いいよ気にしてないから」
てっきり無意識でやってるのかと思ったけど
ちゃんと覚えてたんだ…
「で、何を言おうとしたの?」
言いながら さんが僕の顔を覗き込む
くりっとした目に、思わず顔が赤くなる
もフサノシンも今は神操器の中だし
言うなら…今しかない、きっと!
「こ、今度 二人で一緒にスキーに
行きたいなって思って…一緒に行かない?」
変に緊張して 声が少し上ずった
もう予約や宿の手続きも決まってる、とか
言いたかったけど言えなかった
…ほんの少しだけ マサオミを尊敬した
「あーゴメンね、誘ってくれるの嬉しいんだけど
あたし 運動オンチだから〜」
すまなさそうに笑って謝るさん
あっさりと諦める事が出来なくて
「だったら、僕がやり方覚えて
分かるように教えてあげるよ!」
そう言って しどろもどろになりながらも
なんとか説得を試みる
…仕事とか普段の取引とかならスムーズに話せるのに
どうしてこんな時は、上手くいかないんだろ
「本当にありがとう でも、あたしはこうして
一緒にお茶飲んでまったりしてるのが好きだから」
ほんわかと、優しい笑顔を浮かべて
さんにそう言われたら
もう何も言えなかった
「…わかった、じゃあ 今回は諦めるよ」
あーあ、折角 色々手続きしたのに
全部キャンセルかぁー
悔しいって思うけれど、
ごめんねとやんわり謝るさんを見ると
なんでか許したくなっちゃう
「でも 次の時は諦めないからね?」
だから、笑顔を浮かべて宣戦布告
「え、うん…楽しみにしておくね〜」
困りながらもさんは笑って返事を返した
彼女のもたらす謎も混乱も不条理も、
全部吹き飛ばして
いつか 僕の事を意識させてみせるから
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あとがき(というか楽屋裏)
狐狗狸:久方ぶりーのーソーマ夢ー、ギャグ目指したのにー
またアレなオーチー
ソーマ:何 某メガネ探偵の初期のOP風に言ってんのさ
狐狗狸:だって君書くのガチで久々なんで
ソーマ夢少ないんで増やしていくぞー的な
ソーマ:僕の夢もそうだけど、兄さんの夢とか
ヤクモさんの夢とかリクの夢とかも増やしたら?
狐狗狸:うーんそうかも、特にヤクモとリク
シリーズや複数じゃ結構書くけど単品少ない…ごにょごにょ
ソーマ:あと、名前変換で地流夢増やすとか
あそこタイザン部長一人だけだし
狐狗狸:だね あまりにも部長がフビンだ…(汗)
ソーマ:さんってインドア派なの?
僕が言うのもなんなんだけど
狐狗狸:どっちかというとね あと冬は寒いし
話でも言った通り運動オンチだし
ソーマ:あとさ、スキーの予約とかはどうなったの?
狐狗狸:当然キャンセルでしょ、他に誘えそうな
人とかいないだろうし
フサノシン:ナヅナあたり誘えばいいのに
ソーマ:だっ、誰があんな奴なんかと!(真っ赤)
狐狗狸:…本人がこういう調子だし、ナヅナはナヅナで
地流のものとなど〜とかいうから無理だよ
ほのぼの?のまま終了