長い年月を生きてる割に、闘神士との
かかわりが薄めの俺としては





宿主も含めて そーいった奴等の言動には


そこそこ興味があったりする







…っつっても、観察できる余裕とかが出てきたのは
と組んでしばらく経ってからだが











〜「…にも程がある」〜











「ヤクモさんは、得意な科目とかあるんですか?」


「いや…何でまた急に?」


「あ、その…今やってらっしゃる勉強とか
スラスラ解けてるみたいなので ちょっと気になって…」







今の所はまだ二人きりで家にいるこの状況





待ち人のついでに溜まっている勉強を消化する
ヤクモさんを眺めながら


ふいに、が訪ねたのだ







「んーそうだなぁ、あんまり高校に来ないから
何とも言えないけど…強いて言えば体育と日本史かな」


そうなんですか!あたしも日本史は得意なんですよ〜」







のこの台詞は 真っ赤な嘘







テスト勉強のたびに「年表なんて覚えらんないよ〜」
涙混じりに騒いでるし


ソーマやリクだって覚えてるくらいの
歴史上の武将とか言う人間が言った台詞すら





「えーと秀吉が言ったのは…
"鳴らぬなら、壊してしまえエレキテル"だっけ?」


「全然違うからさん!」





うろ覚えの上間違えて覚えてたくらいだ









「そっか、じゃあ今度日本史のテストがある時は
ちゃんに勉強を習おうかな?」


、あ、うぅ…そんな恐れ多い…」







ほら見ろ出来もしねぇ事言うから、かえって
自分の首を絞めてるじゃねぇか





…こりゃヤクモさん帰ったら


速効日本史とやらの勉強を始めるパターンに入りそう





やだなぁ、一人で勉強してる時のって
すーぐ俺に八つ当たり交じりのグチかましてくんだもん







仕方ねぇ ちょっと助けてやるか







「止めといた方がいいですよヤクモさん
こいつ、ちょっと見栄張ってるだけですから」


は余計な事言わないでよっ!」


るせぇよ本当の事言っただけだろ!」





人の親切に気付かずにケンカをふっかける
の口上に受けてたち


見かねたヤクモさんが俺達を諌める





「まあまあ二人とも…勉強云々については
冗談だから、気にしないでよちゃん」


「え、そうなんですか…何かゴメンなさい
ヤクモさんのお役に立てなくて」


いいんだよちゃんはそのままで」


「えへへ そう言ってもらえると嬉しいです!」





微笑むヤクモさんへ、は顔を僅かに
朱に染めてニッコリと笑い返す







…こういう状態だと見た目に違わず"可愛い奴"









けどの場合 ヤクモさんの前では
散々乙女ぶっておきながら





、ちょっと〜」


「何だよ?」


「ヤクモさんのお茶のお代わりよろしくv」





…俺に対しては平気でこーいう態度を取りやがる







「へいへい」


「ありがと〜ついでにあたしのもお願いね?」







頷いて、俺はヤクモさんとの湯飲みに
お茶を目一杯注いでいく









…今更ながら 扱いに差があるというか
裏表が激しいというか


普段の言動との落差がありすぎる







「何か悪いねちゃん」


「気にしないで下さいよ、ヤクモさんは
お客さんなんですし」







胸の内でだけ 悪いのはの方だし、と
こっそり付け加える









ヤクモさんが絡んだ時の宿主の行動は異常だ







本人がそこを調査してるだけで伏魔殿探索とか
情報集めが今でも日課になってるし





過去やら好みのタイプや好きな料理とか
調べまくって、それに近づく努力とかするし


隠し撮りした写真のアルバムは増える一方だし







……いくら好きだからって、そこまで
やってんのバレたら気味悪がられるだろうなー









お茶お茶!


「っと悪ぃ悪ぃ!」





ぼんやりしてて、湯飲みに注いだ茶が
ちょっと縁に近く入りすぎ 慌てて止める





「も〜そそっかしいんだからは〜
でも、入れてくれてありがと♪」







一言余計な台詞と共に礼を言いつつ
伸ばした袖越しに湯飲みをつかんで口に運び





「あち!」


「当たり前だろ注いだばっかだぞ」





短い悲鳴を上げてから、は茶を冷ますべく
ふーふーと息を吹きかけていた







ちゃんは本当に可愛いな」





…そう言えるのもこいつの本性を知らないから







けど時たま、ヤクモさんはの気持ちに
気付いてるんじゃねぇかと思う時がある





…気のせいなのか?







けどもし俺のその想像が当たってたら


ヤクモさん、相当なタヌキだよな…





いやいや 無いと思う、うん!


もしそうだったらちょっと怖ぇよ!







「そう言えばちゃん、さんは元気?


「いっ!?」





唐突な問いかけに ビビって変な声を出しちまった





「な、何でまたイキナリ?」


「特に他意はないんだけど 最近電柱の影に
いるのを見かけないからふと気になっちゃってさ」


「ああさんでしたら、この間ウチにケーキと
新作のドレス持って来てましたよ〜ねっ?」


「おお 相変わらず派手なのをな」







電柱に潜んでるか否かの認識があるってのも
前に契約してた宿主としては色々とまたアレなんだが


事実だから否定できないんだよなぁ…









のヤクモに対する思いと同じか
もしくはそれを上回るくらいは





俺に対してのの親バカも異常だ







特に俺へと言い寄ってくる奴を見かけようもんなら
たちまち鬼神と化して相手を叩きのめすし







…こいつも親バカさえなけりゃ、とても優しくて
何でも出来る美人だって所が残念でしょうがない









「相変わらずだね さんも…」







それはヤクモさんとて、同じ思いらしい





あいつからの話によると 相談相手として
会う率が高いらしいからな…







「そりゃさんは親バカですから〜」


「…俺としてはもうちょっと
自制してもらいてぇと思うんだがな」


「オレもちゃんの意見には賛成かな」







ん?今、ヤクモさんの目が
ちょっと本気だったような……







見間違い、だよな?







「二人だけ会話に加わっててズルい〜」


「はは、ゴメンよちゃん」









軽やかな笑い声が響いた所で、玄関から
誰かの呼ぶ声が聞こえた







「…どうやら、ようやく到着したらしいな
それじゃあ俺が出るから二人はそこにいてくれよ」


「すまないなちゃん」


「よろしくね〜」











玄関の戸を開けると、そこには


ヤクモさんの待ち人であるマサオミと
奴の"お姉さん"が ニコニコ笑って立っていた







「こんにちは〜ちゃんは?


「奥でヤクモさんとまったりしてるトコだよ
…つか、何でウチを待ち合わせ場所にする」


「や こっち来たばっかりの姉上が心細くないよう
ちゃんに話し相手してほしくてさ」





この男のことだ、どこまで本気やら…







着物姿の"お姉さん"は俺の方を見ると





「本当にゴメンなさい ガシンがいつも
ご迷惑をおかけして…」





少し寂しげな微笑と共に頭を下げた







「初対面の人間に謝られる筋合いはないし
こいつの場合は自業自得だから気にしなくてもいい」


「相変わらず手厳しいなーちゃんは」


「うるせぇ事実だろが丼魔人が」


『ねぇ、そろそろ僕らを家の中に
エスコートして欲しいんだけど』





半透明のキバチヨに諭され、俺は自らの役割を思い出す





「おっとそうだった悪い悪い 二人とも
中で待ってるから、上がれよ」


「それじゃ遠慮なく〜さっ姉上!


「お邪魔させていただきますね」







礼儀正しい姉の手を引いて、勝手知ったる
なんとやらという風にマサオミが上がりこみ


その後ろを ゆっくりとついていく







「……姉弟だってのに似てねぇな
つかあいつ、あーいう奴だったっけ?」


『マサオミくん 意外とシスコンだから』





本人に聞こえないように、キバチヨがささやいた







にしてもマサオミのあの性格は 初めて会った時から
寸分たりとも変わってねぇな…


むしろ もう少し年相応の落ち着きを持てよな





仮にもヤクモさんと同年代のはずなのに
あの違いはどっから来るのか今でも不思議だ









「よっ、お待たせ〜」


「マサオミさん、お久しぶり〜」


遅いぞマサオミ お前が呼んだくせに」


「いやー姉上つれてここまで来るのに
手間取っちゃってさー」


「申し訳ありません、こちらの世界は
勝手が分からなくて…」







頭を下げた姉につられ 室内の二人も
ついでに俺も頭を下げる







「あなた達の事は、この子から聞いてますよ
ヤクモさんとさん でしたっけ?」


「はい、初めまして〜」


「今日は私のワガママの為に付き合ってくださり
ありがとうございます」


「いいんですよ、こっちの世界に興味を
持ってくださるのは悪いことではありませんし」





そこでマサオミが姉の横からズイっと出てきて
ヤクモさんの肩をポンと叩く





「そうそう、それじゃヤクモくんに
オススメの場所を色々教えてもらおっか!」


「お前は少しばかり遠慮しろよ」


「こらガシン、はしゃぎ過ぎですよ」


「いいんですよ〜マサオミさんは
普段からあんな感じですし」







困り顔の姉に笑いかけてから、
こちらの方を向いて 一言







 マサオミさんとお姉さんの分
お茶とお菓子追加ね!」


「了解、宿主サマ」







端的に言って頷くと 台所へと引っ込み
増えた来客をもてなす準備を始めた









…本当、俺の周りにいる奴等は


一癖や二癖あるにも程があらぁ








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:夢のジャンルから逸脱しそうですが、今回は
夢主は話のナビに徹する方向で書いてます


ヤクモ:一応オレ主体の夢なのに なんで最後
マサオミが出て来るんだよ?


マサオミ:オレの台詞だろそれ!てゆうか姉上は
オレがエスコートすれば十分だモン!


キバチヨ:仕方ないじゃん二人とも、ヤクモだけで
オチまでもってけない作者のパワー不足が悪いんだし


狐狗狸:…その通り(泣)だから大戦後設定で
ウスベニさんを引っ張ったんです


ウスベニ:そうだったんですか…




あっちを見てみたいと言ったウスベニさんに
色んな文化を紹介したいマサオミさんが
ヤクモを呼び出した…的な発端です


蛇足に頼りまくった駄文でスイマセンでした!