ハロウィンが終わって、少し過ぎた休みの日
玄関先のポストの中に 新聞やチラシと一緒に
まぎれていた手紙を見つけた
「手紙なんて珍しい〜誰からだろ?」
普通の白い封筒で 見覚えのない字で
あたし宛に書かれてたのに
どこを探しても手紙を書いた差出人の名前がなかった
「…中の文に書いてあるのかな?
不幸の手紙とかだったら嫌だなぁ」
なんて思いつつ、余り深く考えずにあたしは封を開けた
中身は便箋一枚で、ハッキリ目立つ赤い文字で
たった一言だけ こう書いてあった
「もう一度あなたに会いに行きます」
前言撤回
不幸の手紙よりも、もっと嫌な感じの
手紙を受け取っちゃったみたいです
〜「間が悪い頃に」〜
「何これ、悪質な嫌がらせ〜?」
やんなっちゃう、後で帰ってきたら
庭で燃やしてもらおうかな
…そう言えば 、遅いな
また迷子になってるのかな
帰ってきたら お仕置きしてやんなくちゃ…
ガタ、と音がして 身体がビクッと振るえた
「あ…あんな手紙、嘘に決まってるし
何も怖がることないじゃん」
そう言って強がってみたけれど
何だかんだいって こういうホラーみたいなの
すっごく苦手なんだよね…
無音の状態が妙に怖くて、TVをつけた
あ、何か番組やってる…何だろこれ
「―ある日 その家で、私は一人で
留守番していたんですよ」
語り口調と一緒に、家の再現VTRが
再生されている
…何これ?何かのドキュメントかな?
じっと見ていると 画像はソファで
本を読む男の人を映し出す
「一人で家にいたんだけど、玄関で声が聞こえて
親友の声だと思ってドアを開けたら…」
TVの中の人が玄関のドアを開けた映像が映り
そこでしゃべっていた男の人の言葉が切れた
そう思った 次の瞬間
「血塗れの鉈男が!!」
大音量の叫びと一緒に血塗れの鉈を持った
怖い顔の男の人が ドアップで映って
「「きゃああぁぁぁぁぁっ!!!?」」
TVとあたしの悲鳴が重なって、あたしは
慌ててTVを消した
つつつ 点けなきゃよかったTVなんて!
もう冬になるのにこんな怖い番組やってるなんて
思わなかったよ〜!!
余計一人でいるのが怖くなってきた…
あーん、 早く帰ってきてよ!
玄関の方から、ノックの音が聞こえて
心臓が跳ね上がった
ここここ今度は何!?
「ちゃん いないのか?」
え…ヤクモ様!?
別の意味で驚いて あたしは
思わず玄関を開けに行こうとして、
さっきのTVの話を思い出した
―親友の声だと思ってドアを開けたら…!―
もしかして この声は幻聴!?
玄関を開けたら鉈男に襲われる!!?
「おーい ちゃーん」
声が遠くに聞こえていたけれど、
あたしは怖くて その場所を動けなかった
やがて、玄関からのヤクモ様の声の幻聴は
完全に途絶えた
…ひょっとしたら本物だったのかな?
ちょっとだけでも確認すればよかったかな
いやいや!ダメダメあたし!!
こういうホラーはそのちょっとだけで
気を抜くと怖い目に…!
キン!と鋭い音がしてすぐ側に襖が出来る
ビックリして飛びのくと
その襖が ガラリと開いて―
そこからズルズルと出てきたのは、
「ま…マサ…オミさん……!?」
髪の毛の色とチラッと見える顔がそうだけれど
長い髪で顔を隠すようにしたその形相といい
白装束といい、這う姿といい 普通じゃない
おまけに、血塗れの鉈まで持ってる
怖い かなり怖い!
何で白装束なの!?
何で血塗れの鉈なんて持ってるの!!?
これじゃTVの鉈男と同じじゃない!!!
「ねぇ マサオミさん?
何でそんな格好をしてるの?」
恐る恐る聞くけど、答えは無い
マサオミさん?は無言で這いよってくる
「ねぇっ 聞いてるの、マサオミさん!?
そういう冗談キライですよ!!?」
重ねて聞いても ただただ無言
こっちが逃げようと後退りしても
這いながらついて来るその姿が怖さを増した
「イヤッ…こ、来ないでっ!」
それでも マサオミさん?はゆっくりと近づいてくる
「…ちゃ…ん…会いに…来たよ…?」
下から見上げながら にんまりと浮かべたその笑みに
あたしの中の恐怖心が理性を上回らせた
「嫌あぁぁぁこないでっ!!」
まさに恐怖心から後先全く考えず
あたしが投げた闘神符"爆"が
白装束のマサオミさんを思い切り吹っ飛ばした
「…ごめんなさいっ!!」
あの後、焦げて倒れたマサオミさんから
ハロウィンがあるのをすっかり忘れてて
遅まきながら脅かしに来たと聞かされて
とりあえずあたしは謝った
「痛た…何も符で吹っ飛ばすこと無いじゃないか」
符で治療しながらも なお傷だらけのマサオミさん
「だから謝ったじゃないですか、てゆうか
元々はマサオミさんが悪いんですよ?」
少し怒りながら あたしは捲くし立てる
「あたしが怖いの苦手だって知ってて
こんな脅かしかたするなんて!」
「いやだって ハロウィンはこうやって
脅かすんだって知り合いから…」
「そんな怖い脅かし方はありません!」
「ええっそんな!衣装とか鉈とか
がんばって自作したのに…!」
その鉈がより一層 怖かったんだってば!
「反省してるんですか!?」
言って あたしはぷいとそっぽを向く
「…ゴメンちゃん 反省してる
だからそんなに怒らないでくれよ」
上目遣いに優しげに マサオミさんは言う
「むぅ…」
確かに、遅くなったけどマサオミさんなりに
ハロウィンを祝いに来てくれた訳だし
それに符でふっ飛ばしちゃった負い目もある
「わかりました もう許してあげますよ
でも、もうこんなことしないでくださいね?」
ニッコリ笑って言うと、マサオミさんが頷く
「わかってるって でも、ちゃん
怖いの本当にダメなんだねー」
「本当に怖かったんですから、ヤクモ様の
声まで仕込んであるなんて…」
「え ヤクモの声って?」
きょとんとするマサオミさんの言葉に
逆にあたしの目が丸くなる
「確かに手紙はオレの仕込みだけど
ヤクモの声なんて知らないよ?」
え、じゃあまさか あれは…本人の!?
「いやああああああぁぁぁぁぁ!!」
あたしは頭を抱えて絶叫した
ヤクモ様が訪れたチャンスを
みすみす逃すなんてェェェェ!!
「え、何 どうしたのちゃん!?」
慌てたようなマサオミさんの方を向いて
「…マーサーオーミーさんの、バカー!!」
あたしは床に落ちてた作り物の鉈を取ると
それでマサオミさんを殴りつけた
「うわわわわっ!?」
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あとがき(というか楽屋裏)
狐狗狸:式神の方でホラー風味のハロウィンやったんで
闘神士の方も…と思い、書いてみました
マサオミ:どうせならもっと甘そうなのにしてよー
あっちは抱きついてるのに、こっちは殴られ損だよ
狐狗狸:そういうキャラだから仕方ないじゃない
マサオミ:仕方なくない!オレだってちゃんと
ベタベタしてみたい時だってあるんだ!
狐狗狸:そーいうキャラじゃないから無理(ドキッパ)
マサオミ:…ところでさ、鉈男って何?
ベットの下の斧持った男なら聞いたことあるけど…
狐狗狸:元ネタはそこからだけど完全なフィクションです
まぁ…鉈とかホラーは某ホラーを参照してます
マサオミ:ああ、実際に鉈の殺人が起きて
ニュースで問題に取り上げられたアレだね?
狐狗狸:そう でもそういうホラーは悪くないと思います
マサオミ:同感だね、悪いのは犯罪をやった奴で
ゲームの悪影響だーなんて言い訳なのにね
狐狗狸:それを言い訳にするのもアレだけど、
過剰反応する方もおかしいよねー
論点がかなりずれてきたので強制終了