「はぁ…」







伏魔殿の奥深くにある 寝殿造りのような





ウツホの建てた都の、とある池のほとり





彼の腹心で 神流として活動している
赤毛の男ショウカクが頭を垂れて溜息をついた











「溜息なんて辛気臭いね〜ショウカク」


「っ…!?」







ショウカクが驚いたのも無理はない







一つは、出会った相手が 神流内でも
人を巻き込むホラー好きと恐れられている事





一つは、千年後の現代で活躍している筈の彼女が
自分の目の前に ひょっこり現れた事




そしてもう一つは、その相手の顔が


かなりの至近距離にあった事だ












〜「正に虚心坦懐」〜













「こんばんは ちょっとウツホ様に報告ついでに
こっちに寄ってみたんだ、驚いた?


「おおおお驚くわ普通!余り近寄るな!!」







勢い良く後退ったショウカクに はクスクスと笑い







「何怯えてんのさ?別に今日はホラーネタもって来てないよ?」


「そういう事を言いたいのではない!」









憤慨した様子で ショウカクが食ってかかるが、







「年頃の娘が みだりに男の眼前まで顔を近づけるとは…!!


「あーハイハイそう言う事?相変わらずバカがつくほど真面目だね」







は慣れきった様子であっさりとかわす









「所で何時も夜とか池の近くにいるけど
こんな何もいない池見てて楽しいの〜?」


そんな訳なかろう 私はこれからの神流の
行く末を色々と悩んでいたのだ」


「ふぅん こんな夜中までワザワザ?


「そうとも、大方お前は 幽霊や妖怪が出易いから
とかなどと言う下らん理由で起きてるだろうがな」







フン、と鼻で笑いつ腕を組んでショウカクが言う







「くだらない 理由ねぇ…」





溜息を少しつき が問いかける









「ショウカクはさ、神流…
ウツホ様とタイザンの計画が上手くいくと思う?」









ショウカクは少し考え 静かに返した






「分からん、だが…もう我等は引き返せまい











無言でショウカクを上目遣いで見つめていたが、





突如調子を変えて 言い放った







「ショウカクってさ 言い方は居丈高なのに
根は真面目でヘタレだよねー」


「なっ!?」





いきなりの発言に ショウカクが鼻じろむ





その表情にニヤニヤしながら、は尚も言葉を続ける







「だって 私がホラーネタ見せると真っ先に怯えるし、
今だってあれ位でお説教とかだし」





ヤレヤレ、と言うように肩を竦めるポーズをとって





「そこいくとタイザンとかウツホ様って
もーホント真っ黒でさー色白いのに」


「そっそれはお主も 似たような者ではないか







ようやく言い返してきたショウカクの言葉に は―





プッ、と噴出し 弾けるように笑い出した







アハハ 確かに、言うねーショウカクも」


笑うな







しかし は腹を抱えたまま笑いつづけている









髪同様に 顔まで真っ赤になりながら
ショウカクが腹立たしげに怒鳴る







「あれはお前が怖がらせるから怯えてやってるだけだ!
そもそも、何が面白いのだ!妖怪や幽霊の話など









そこでようやく、は笑うのを止める







「あー これショウカクには話してなかったっけ」


「何をだ」


「聞きたい?」







何時になく真面目な雰囲気に、ショウカクは
少したじろきながらも 首を縦に振る











は 遠くを見るように







視線を池に向けて、語り出した











「私さー化物とか言われていい家に生まれてたのに
追い出されて、話し相手が幽霊や妖怪だったんだ しばらく」









ショウカクが 目を驚愕に見開くが、


はそれに構わず平然と続ける









幽霊とか妖怪達と会話できて、ある程度
使役も出来るからか 権力者に利用される事多くてさ」







の横顔はキレイで、そして何処か悲しげだった







「それがヤで村に来たのに、天流の奴等に
ヒドイ目に会わされちゃったんだよね」









二へっと笑ったに ショウカクは何も言えなくなった









それは ある意味ショウカクにも覚えがある事柄もあり





彼女の現状も、昔と余り変わっていないようだったから









その雰囲気に気付いているのかいないのか、


分かりかねるような調子で が言う







「いやー悪いね 昔の愚痴になっちゃって
聞いてくれてありがと、お陰でちょっとスッキリしたよ」





「…先程はその、済まなかったな 









搾り出すようなショウカクの呟きに、は目を驚きに見開いた







「ヘ?…ああ ひょっとして、妖怪とかの
話がくだらないって言ったアレ?









コクコクと頷くショウカクに は微笑んで







「いいよ、慣れてるしそーいうの それに気にしてないから」


「そ…そうなのか」


「それに ショウカクと話してると
気負いがなくなるから、いいんだ







ニコニコと わだかまり無く笑う











ショウカクは、ジッの顔を見ていたが





やがて 少し視線を逸らし気味







「…今日みたいに 普通の会話ぐらいなら
まぁ、付き合ってやらないでもない







この言葉を聞いて、はポカンと呆気に取られた顔をする







「珍しいね そう言う事言うなんて…でも、ありがとう ショウカク









嬉しそうに笑うに ショウカクは


ムッとしたように小声で零した









「……会話ぐらい付き合うから、無闇に人前で笑うな








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:短編集とか更新してないなーと思い、手始めに
名前変換書きましたが 初・ショウカク夢っす


ショウカク:そのせいなのか 私の口調が
随分とメチャメチャな気がするが…いいのか?


狐狗狸:まーね、てかの設定が フツーに
某妖怪退治漫画の主人公と被っててヘコむ(泣)


ショウカク:まさか、貴様 パクったのではあるまいな!?


狐狗狸:滅相も無い!今日やっと溜めてた漫画読んだら
偶々そう言う感じでネタ知ったんだもん!


ショウカク:そ…そうなのか?


狐狗狸:まーアレで彼女のイメージ固まったってーか
キャラ似ちゃったってーか…やっぱパクリかな?


ショウカク:知らん!それを私に聞くな!!


狐狗狸:うう…ちなみに、サブタイの「虚心坦懐」って
わだかまりのないさっぱりした心って意味だけどさ


ショウカク:それがどうかしたのか?


狐狗狸:いや 話の中でのの心境&笑顔を
現したんだけどー…どだった?可愛かった?


ショウカク:だだだ だから私に聞くなぁぁ!!




何気に神流ホラー少女お気に入りっす…甘いのか
シリアスなのか相変わらずな話でスイマセンでした




さん そして読者様、ここまで読んでいただいて
ありがとうございました!