移ろい 変わりゆく季節の中で





ふと気紛れに、訪れる瞬間は


まるで夏の夜に垣間見る アゲハ蝶のよう











「やあ ちゃん、急にゴメンね〜





玄関から出迎えたに マサオミがニッコリと笑う





「あ、マサオミさん」





対するは 一瞬微妙な表情を浮かべていたが
即座に笑みを作って返す





「今日は季節限定の牛丼持ってきたんだ〜
一緒に食べながら話でもしない?」


「う〜ん…悪いんですけど 今日はダメなんです
ゴメンなさい マサオミさん」





白い手さげ袋を掲げたマサオミに、苦笑交じりで
やんわり断る







「え 何か用事でもあるの?」





すると、の頬が思い切り緩んだ





「はい 今、ウチにヤクモ様がいるんですよ!





「え……ええええ!?







マサオミのその叫びを聞き取ってか





「ん どうかしたのかちゃ…!?」









玄関までやって来たヤクモとマサオミがバッタリ対峙する











〜「君が望むのは?」〜










その後 玄関先で色々とやり取りがあり、今現在


の家で テーブルを挟んでヤクモとマサオミが
険悪な表情で向かい合っている





ちなみには 二人の真ん中の方に
ちょこんと座って、お茶を飲んでいる









「…伝説の闘神士ってのも 随分ヒマなんだな
色々と忙しい筈なのに、ここにいるなんて」


「…そうだな しかし、そういうお前もヒマそうだな
天流として活動してもいなさそうだし」


「オレはちゃんと今後のことについて
話し合おうと来ただけだ…いつものようにな」


「奇遇だな、オレも実は ちゃんの事が心配で
来たんだ…同じ流派としてな」











家に招き入れられてから ずっと二人がこの調子なため
室内の空気はひたすら重い





いつもならその空気を和らげそうな、キバチヨや
が こんな時に限って不在だった


珍しくヤクモも源流神操機を自宅に忘れてきている









……しかし 三者の式神がいたらいたで、
それはそれでややこしくなりそうな事請け合いだろう











やがて その重さに耐え切れなかったのか


が笑みを浮かべて口を開いた





「どうせなら 皆で仲良くしましょうよ〜」







ほんわかとしゃべるに、拍子抜けするヤクモとマサオミ





「なっ仲良くっていわれても…」


「オレもそう思う ちゃんが優しいのは分かるが
こんな得体の知れない奴を信じるのはどうだろうか?」


「なっ!そういうお前だってかなり怪しい格好だぞ
いまどきマントなんて!!」


「常に丼持って現れる方が怪しい」





険悪なオーラを再び展開する二人に対し
はただただうろたえている











(こんな時にいないなんて…の役立たず!!





終いには買い物に出した自分の式神に
心の中で八つ当たりしていた









(ああ もう本当帰ってきたらお仕置きしちゃうんだから〜)





なんて、完全にに責任転嫁しつつ


早く帰ってくる事を願って 時計をちらちら見ていた
家の中にいた、あるものに気がついた











「あれ?家の中にちょうちょ?





の声に ヤクモとマサオミもオーラを引っ込め
彼女の視線の先に 目を向ける







そこには 漆黒の羽をはためかせ


一羽の蝶がひらりひらりと舞っていた








「あれは…アゲハ蝶、かな?珍しいな〜」


「そうだな どこから入ってきたんだろう?」







ぼんやりと見上げる三人の側を 蝶はつかず離れず舞い遊ぶ













「…そういえば、昔友達と三人で
アゲハ蝶を見たことがあったんですよ」





不意に過去を思い出し ポツリとが呟いた







「その時は流派の事とか関係なく仲良くって…
三人でアゲハ蝶見てて、キレイだねとか
標本にしたいねとか言って笑ってたなぁ」





懐かしそうに笑うの言葉に
どこか寂しさが混じっていたのを


ヤクモとマサオミは気づいていた







(ああそうだ ちゃんは
流派同士の諍いが原因で友達を……)


(明るく振舞っててもちゃんは
あの事を気にしてるんだ…)





二人の中でめいめいに思いがよぎり―







((……でも 標本はちょっと残酷じゃ?))





お互いに同じところでツッコミを入れる









そんな二人の胸中に気づかず はニコリと笑顔を作る









「だから、流派や素性とか関係なく あたしは
二人と一緒に笑いあっていたいんですよ?













ヤクモとマサオミは お互いに顔を見合わせ


そして―苦笑をもらした










ちゃんにそう言われちゃ、仕方ないよな〜
どうだ?ここはお互い、一時休戦ってことで」


「そうだな、今日くらいは一時休戦するか」





"一時休戦"の言葉に うれしそうに顔を輝かせる





「本当ですか!?」







彼女のその様子に 微笑ましそうに目を細めて笑う二人







『約束する(さ・よ) ちゃんが望むのなら』







「嬉しいです〜!!」





その言葉に、両手を合わせて満面の笑みを浮かべる









年はそんなに離れてないのに、
まるで小さな子供のようなを見ていて


ヤクモもマサオミもさっきまで、ケンカしていたのがバカバカしくなった







しかし、そんな風にほのぼのとしていたのも束の間









「こんなに嬉しいの初めて〜…そうだ、二人が仲良くなった記念に
あのちょうちょを標本にして飾りませんか?





無邪気に放ったの一言で ほのぼのとした空気は
あっけなく壊れた





『え』







「ダメですか?」





ウルウルとした瞳で迫られて 二人には否定も肯定も
出来るはずがなかった











三人はその後 アゲハ蝶を捕まえるのに四苦八苦したが


結局誰一人として 蝶を捕まえることはなかったらしい













―マイアラワレタ キマグレナチョウ


ソノスガタハトキニ ダレカヲクルワス









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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:久々にシリーズ物UPです!


これは特に時期などを限定していないですが、まだオミさんが
神流だとにばれてない時でもいいな〜なんて思ったり




マサオミ:てゆかさ この話本当は
夏に更新する予定だったんだろ?


狐狗狸:ギクーン!(ショックなポーズ)


ヤクモ:それと 何故オレたちが
ちゃんに頼まれたからとはいえ
アゲハ蝶捕獲に必死にならなきゃいけないんだ?


狐狗狸:ギクギクーン!(ショックなポーズ再び/笑)
……書きたかっただけだもーーーーーん!!(逃)


二人:逃げやがったーーーー!!(叫)




はい 最後までグダグダですいませんでした


読んでくださってありがとうございました〜