きっかけは、現代のヤクモ宅にお邪魔してた
マサオミの何気ない一言だった









「カバディは楽しかったな、また皆でやりたいよな〜」







前に四人+式神を交えて 自分達の闘神士としての
力量を測る名目でのカバディ大会を思い出し





しみじみマサオミが呟く







ああ、とヤクモも思い出しながら賛同し







「そうだな まあ、勝つのはオレだろうけど」







これまた何気なく放った一言で、
マサオミの片眉がピクリと跳ね上がる







「それは聞き捨てならないなあ〜オレだって
日ごろ特訓してるし そうそう勝ちは譲れないよ?


オレのカバディの力量をもう忘れたのか?」







穏やかな二人の間に、確実に火花が散り







「ならもう一回 カバディで勝負だ!


「いいだろう…受けて立つ!











そんな経緯により、木枯らし吹き荒ぶ空の下







あの時と同じ面子でカバディ大会
開催されることとなった












〜「冬口の空に響く声」〜













電話で突然呼び出され その経緯を
説明されたリクとユーマ









二人はそれぞれ言いたいこともあったのだが







ヤクモとマサオミが団結している今
何を言っても無駄だと知っているため黙っていた











メンバーは公正にアミダくじで決め







ヤクモとリクのチーム、ユーマとマサオミのチームに
分かれて陣地に立った







もちろん 彼らの式神達は強制参加









「この季節はカバディやるには ちょっと寒くねーか?」


「そう?寒い時期にはかえって身体が
あったまっていいかもよ?」







腕をさするコゲンタに 場の雰囲気を
盛り上げようと、微笑んでリクが返す







「フン 日ごろ鍛えているオレ達のパゥワーを
見せるには丁度いい機会だ…!」


「ユーマ…無茶はするな」







すっかりカバディに乗り気になったユーマ
やや後ろでランゲツが淡々と呟く











「よーし いくぞ、ヤクモ!


いつでもこい、返り討ちにしてやるさ!」







ヤクモの問いかけにマサオミが応じ、









カバディが始まろうとしていた まさにその時







「ちょっと待って!!」







上がった声に、みんなの視線が集まる









「審判って何すればいいの?
カバディなんてわからないよ〜」







異議を唱えたのは、今回 審判役として
呼び出されただった







「え?さん わかってて審判を
引き受けてくださったんじゃ…?」











頭に疑問符を浮かべたリクの問いかけに答えたのは
彼女の式神 六花の







「あーこいつ、例の如くヤクモさん
いるからってだけで二つ返事で参…」







彼らには ちょうど後ろを向いたの表情が
見えなかったけれども







がそこで黙ったことで、





大体どんな顔をしているかは予想がついた







「しかたないなぁ…そんなちゃんにはコレ!
ジャッジャジャーン







効果音とともにマサオミがに手渡したのは
一冊の冊子





丁度修学旅行のしおりみたいなサイズと厚みで







「マサオミさん、何ですか このカバディガイドブックって?」







が呟く通り 表紙にはでかでかと









"初心者にも安心!カバディガイドブック"









と書かれている







「知識でヤクモに負けたあの後 悔しくて必死でカバディのことを
研究した…その成果をこの本にまとめたのさ!」


「暇人だなお前」







かっこよくポーズを決めるマサオミに
が冷めたツッコミを入れる







ヒマ人って言うなヒマ人って!
オレは真剣にカバディの勉強をだなぁ!!」


「いや まごうことなく暇人だろそれ」


同感だな」







コゲンタとユーマがのツッコミに同意し







「オーゥ やっぱり皆そう言うじゃん
だから止めとけって言ったのにマサオミくん」







更に追い討ちのキバチヨの一言で
マサオミは途端に言葉に詰まる









「あ、でも結構詳しく書いてある!
これならあたしでもカバディわかるかも!!







しかし、パラパラとページをめくるの言葉に





我が意を得たり、とマサオミは表情を明るくする







「だろ!」


「それじゃ あたしガンバって審判しますね!」











何はともあれ カバディ大会が再開されたのだった













きゃああぁぁぁ!がんばってヤクモさん!!」







文字通り黄色い声援をヤクモに送る







その声援に気づいたヤクモがカバディの声を
休めないまま微笑んで手を振り







が笑顔を輝かせると







残りのユーマやリクなどは苦笑し
特に、マサオミが渋い顔をする











初めはキチンと審判をしてたのだが







ヤクモの活躍ぶりに、徐々に観客へと
早代わりするだった







「いつものように様付けじゃねーんだ」


「だぁって本人の前で様付けするの恥ずかしいもん!」







審判代行をさせられてた、小声のの問いかけに
は同じく小声で返す







「今更そんなことで恥ずかしがるタマかよ」







が鼻で笑うと、が膨れっ面をして







「何よーにはわかんないだろうけど
あたしは乙女なのよ!」


「自分で乙女って言う時点でオシマイだろ」


「なんですって…!?」







襟首掴んで詰め寄るに 
カバディをしている彼らの方を指差す







「おい、審判しなくていいのか?
何か ヤクモさん押されてるっぽいぞ」


「えっウソ!?」





が振り返ると、





「カバディカバディカバディ…!」







マサオミが予想外の大奮闘でヤクモを追い詰めているようだ









どうやらヤクモびいきな応援





マイナスの方向でマサオミをパゥワーUPさせたらしい









「カバディカバディカバディ…っ」







負けじとヤクモも盛り返すが、マサオミの
優勢は中々崩せないようだ









「…ヤクモひいきはいつものことだろうに
マサオミの反応振りは少しおかしくないか?」


「ぼ 僕にはなんともいえないな…」







二人のハイレベル(?)な攻防
ユーマもリクも式神達も少々引き気味だ











そしてヤクモの劣勢を見て







審判だということを忘れてが困り果てていた







「どっどうしようどうしよう!
ヤクモ様がピンチよ どうしよう!


「って言われても俺達 審判だから
勝敗を黙って見守るしかねーだろ」


「そうだけどヤクモ様がピンチなのよ?
じっとしてなんてられないよ〜!!」







露骨にパニクる
が飽き飽きとした顔でぼそりと呟いた







「そこまで言うなら次はお前も
カバディ大会に参加するって言っとけよ」









冗談で言った彼女のその一言を







至極真面目に受け取った











はいターイム!リク君とコゲンタ君は
あたしとミノリンに交代!!」








その一言に、今まさに勝敗が決しようとしていた
四人+式神たちが一斉に固まり







『はいぃ!?』







以外の 全員一致の叫び声が上がった











「「ちょっと待て それアリか!?」」







コゲンタとユーマのダブルツッコミが飛ぶが
はルールブックをかざしながら







「だってルールブックには審判との交代
禁止なんて書いてないもん!」


「「なんじゃそりゃ!!?」」







信じられないという顔をする二人だが
は全くお構いなしで







ちゃん これはオレとヤクモの戦いなんだ
悪いけどそれは諦めてもらえないかな?」


「そうだ、頼むから審判として勝敗が
決するのを待っていてくれ」


嫌です!あたしはヤクモさんの味方です!
じっとなんてしてられません!!」







やんわりと諌めるマサオミとヤクモの言葉でさえ







は頑として受け入れない







「リク、の奴を説得しろ!
このままじゃオレ達が審判にとって変わられるぞ!


「…でも 今のさんの雰囲気
ただ事じゃないよ、コゲンタ」







まとっている鬼気迫るオーラを感じ取ってか、
リクはただじっと成り行きを見守っている







「だからって何で俺まで!?
俺は関係ねぇだろ!!」


「今更うるさいわよ、あたしの式神なら
これも運命だと思って諦めなさい!


「うわこいつ理不尽!」











一歩も譲歩しないに、ついに皆が折れ







已む無く審判交代となった











「しかしお主ら二人 カバディのルールを
ちゃんと把握しておるのか?」







ランゲツが、訝しそうに訊ねる







もちろんです!さっきガイドブック読みました!」


「…知らねぇぞ 俺は」







自信満々なとは裏腹に 
沈痛な面持ちを隠そうともしなかった













結果は…言うまでも無く惨敗だった







ガイドブックを読んだだけの付け焼刃でルールが
覚えられるはずも無く、が足を引っ張りまくり







労せずして マサオミのチームが勝った











「ごめんなさい…ヤクモさん
あたしが 足を引っ張っちゃったせいで…」











かなり責任を感じてしおらしくなり
半泣き状態になる







ヤクモだけでなく、他の皆が慌てふためく









「気にするな、ちゃんは一生懸命
がんばってくれた」


「そうそう、お前 カバディやったこと
無ぇんだから気にする事無いって!


ちゃんは初めてだから仕方ないさ!」


「マサオミさんの言う通り さんは
カバディ初心者ですから気にしなくても大丈夫ですよ」







に笑顔になってもらおうと、四人も
式神達も必死で明るく励ます







「それにこれから皆で練習すれば
腕も上がるかもしれんしな」


イエース!まだまだこれからなんだから
ブルーになることないって!!」







が 潤んだ目で皆をじっと見つめる







「本当?」


「ウソじゃねぇよ な!


「無論だ」







普段は仲があまり良くない筈のコゲンタと
ランゲツさえも、互いに相槌を打ち







ようやく が嬉しそうに微笑んだ









「ありがとうみんな…じゃあ カバディの腕を
上げるために付き合ってくれる?」


『え』







いきなりな いつものらしい発言に
全員の目が点になるが







初心者だから練習したいの、いいでしょ
お願い お願い〜









先程の励ましの言葉を言ってしまった手前もあり、







のおねだりを突っぱねられる者は
一人としていなかった













こうして 日が暮れるまでを交えた
カバディ大会が続き







大会を始めた張本人の二人さえ





すっかり趣旨を忘れてしまったのだった








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:11月なので暦上はギリギリ秋!ってことで
カバディネタを書いてみました


ヤクモ:のわりに カバディの試合描写ほとんどないな


マサオミ:というより、カバディに審判いるの?
いや ちゃんがいるのはいいんだけどさ


狐狗狸:一応 競技として認められてはいるから
審判入るんじゃないかなーと思って…


ユーマ:アバウトだな


リク:なんだか僕のポジション、事なかれ主義
みたいですごく不本意なんですけど…


狐狗狸:ごめん 本当にごめん




カバディの委員会とかはマジであります
(↑そこは聞いてねぇし)