実は前から ずっと見ていたんですよ


迷ったアンタが顔を会わせる前から ずっと








いつから あっしはこの娘に惹かれたんでしょうねぇ











〜「ジレンマ」〜











「…でさ が最近、神流の情報を得ようと張り切ってんだよ
まあどうせ いつもみたく"ヤクモ様"の為だろうけどな」





ここの所 もう馴染みとなった話し合い


苦笑をもらしながら この娘は―六花のは言う







「何だか そっちは楽しそうでいいですねぇ」


そうかぁ?





適当に打った相槌に 眉をひそめる顔すら可愛らしい








「まあでも今の環境は確かに、楽しいかもな
と居る日常も
不本意ながら お前との話し合いも…でも」





「でも どうしたんですかぃ?」









思わず聞き返すと この娘の目に陰りが宿る









時々…昔の事を思い出すんだ
















時折見せる、暗い表情


その表情は
はじめてこの娘を見た時に、目を奪われた顔だった









…瞳に映る強さと悲しみは その時も
今も 変わっちゃいなくて

















しかし ふいにその表情が苦笑いに変わる





「でも、後悔はしてないし や他の奴らがうるさいから
感傷に浸る暇無ぇけどな」


誤魔化すように 平気そうに笑うさん





「そういやよく話で聞くんですが…さんは、
他の男とも付き合いがあるみたいですねぇ」


「ああ、単に知り合いなだけだ イキナリなんだよ?







「いや 特に深い意味はありやせんぜ」


むっとするこの娘に 笑いながら答える












…でも さんがもし他の男と楽しそうにしてようもんなら





隣のそいつを撃ち抜いちまうかもしれないねぇ










あながち あの怖い姐さんの気持ち、わからなくもないなぁ














「どうしたんだよオニシバ お前…今日なんか変だぞ?





さんが心配そうに顔を覗き込む






その目にあっしが映っていると考えちまうと








視線も表情も何もかも 独り占めしたくなる衝動に駆られちまう












どうしてこんなにも この娘が欲しくなる?

















「…体調が悪そうだから 俺、帰るよ」





その気持ちを感じ取ってか さんは立ち去ろうとした







あっしは腕をつかみ 呼びかける








お待ちなせぇ








普段なら 即座にこの娘の反撃がくるのに



この時はあっしの目を見つめたまま 動けなくなっていて








その不安げな顔が、誘ってるようで




















そのまま欲の赴くままに この娘を引き寄せて唇を重ねた
強く 強く…飲み干すように







「ん…ンン…ンウゥ…」







息苦しさと恥ずかしさの為か 目を伏せ頬を染めて
突き放そうと抵抗をするさん





悶える表情をもっと見たくて あっしは口の中へ舌を入れる












抵抗が激しさを増すが 逃げられねぇようにがっしりと押さえ





舌を押し込み ゆっくりとさんのそれへと絡ませる







「ん…ンンン…んんいぅ…!…う…









触れていた手が 縋るようにしがみつく













さんは目を深く瞑り、大人しく舌を受け入れている


やがて呻きも聞こえなくなり 耳には水音に似た音と
呼吸だけが届いた


















頃合いを見て腕を緩め 唇を離すさんは
胸の中へと倒れこみ 呼吸を荒げて問い掛ける





はぁっ、はぁっ…イキナリッ…何…するんだよ…」





途切れ途切れに聞こえる言葉が 妙に心をざわつかせて





欲しくて、欲しくてたまらなくなる








いっそこのまま 心まで全て奪っちまおうか?
















いや…今は、まだ駄目だ





すんでの所で踏みとどまる












「…ツバ、つけさせていただきやした」


「…なっ…ツバ?





意味を飲み込めずに顔を上げるさんに
あっしはさらに冗談めかして





「アンタが他の男に浮気できねぇように





そう言った刹那












"スパ―――――――ン!!"












物凄く景気のいい音と共に顔面に痛みが走った





おそらく ハリセン攻撃だろう







するか馬鹿野郎!


お陰で死ぬほど苦しかったんだぞっ!!






怒りと恥ずかしさで 顔を耳まで真っ赤に染めて
怒鳴るさん





「あーもう 消えろっ!滅べ!


お前なんかっ もうホント!!」









顔を赤くして言っても 照れ隠し以外にゃ聞こえないねぇ













「人間も式神も 素直が一番ですぜ?」


…知るか!俺はもう帰る!!





そう言い残して この娘はすたすた歩いてゆく







帰るのはいいけど…





「あっしがいないと また迷うんじゃないんですかぃ?


う゛







足を止めて考え込む


この娘は本当わかりやすいねぇ







やがて 覚悟を決めたようにこちらを振り向く





「…わかった 案内頼むよ


「承知しやした」





顔を少しだけ 朱に染めながら







「変な事したら 本当に滅ぼすからな?









と言うこの娘に





「おお恐いねぇ 気をつけさせていただきやすよ」


冗談交じりでそう答えた














―今はまだ ジレンマ抱えて側に居させていただきやしょう










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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:思い立って勢いで書いてみたものの、あまりの展開と
ヘタレな文章力に
血反吐吐いてる狐狗狸です(汚っ)


オニシバ:まぁ ヘタレなのは元からだから気にしなさんな?


狐狗狸:グハッ(更に吐血)…今日はやけに機嫌いいですね?


オニシバ:いや、この分ならさんとイイ仲になるのも
そう遠くねぇな〜と(ニヤリ


狐狗狸:そう?むしろ私的にはオニシバさんファンに申し訳ない
とか思うから そろそろ他キャラ夢増やそうかな…と(汗)


オニシバ:…とかいいつつ、夢ネタ、あっしの絡みが
多いじゃねぇですかぃ(鼻で笑い)



狐狗狸:それは言うなぁぁアっ!!(叫)