そこかしこで蝉が鳴き 生垣に昼顔が
ちらほらと見える時間帯









さーん、いませんかー?







家の玄関の前で 僕は何度目かの呼びかけをする







彼女の家に来てから十分位、呼び鈴を押したり
ドアを叩いたり 声をかけたりしてるけど





何も反応が返ってこない







「おかしいなぁ…確かさんも
学校が夏休みの筈なのに…」







呟いて 僕は額から流れる汗を拭う









きっかけは、リュージ君が豊作だって言って
持ってきたスイカだった





とても大きくて美味しかったけど







一個だけならともかく、何個もあったら
流石にみんな飽きがきて





腐らすのは勿体無いから何とか食べてたけど


それでも何切れか半端に余ったから







さんとさんをうちに呼んで
食べてもらおうかな、と思って





彼女の家にやって来たんだけど…












〜「昼顔と蝉の音と」〜













「留守 なのかな…」







電話して確認すればよかったかな、と思いながら
諦めて 帰ろうとしたら





家の横手奥から さんの声が聞こえた







「もー疲れた もー無理!」


「あれ…いるのかな?」







気になったので、失礼かなーと思いつつも


横の方に回ってみると





奥の物置の扉が開いていて、







「ねぇ、もう諦めてどっか涼みに行こうよ〜」


オイ 言い出しっぺが先に音を上げんな」







そこからさんとさんの声が聞こえた









「だあぁってさっきからずっと物置漁ってんのに
扇風機の陰も形も見当たんないしー」


「物置をちゃんと整理してないお前が悪いんだろ?」


「こんな所いつもは探さないもん!
もー駄目、暑いのイヤ!!









何でかは知らないけど、扇風機を探して
物置の中にずっといたみたいだ







それは…想像すると暑そうだな





今日は天気がいいから余計辛いだろうし…









「あの…こんにちは、さん
良かったらうちに涼みに来ませんか?」







その言葉で 物置からさんが顔を覗かせる









「あ、リクくん いらっしゃい〜って今の話本当!?







言いながらすごい勢いで詰め寄られ


僕は少し後退りながら







「はい あの、うちは割と涼しいし もらったスイカが
余ってますので食べてもらおうかと…」





おずおずとそう言うと、





「そういうことなら よろこんで!」







さんが笑顔で即答した













「本当 クーラーが壊れた時はどうしようかと思ったけど
リクくんが来てくれて助かったよ〜」







スイカも食べ終えて 幸せそうな顔でさんが言う









「そう言っていただけると嬉しいです
急なお誘いでごめんなさい


「いいのいいの、こーいうのなら大歓迎!







さんは笑って手を振りながら







「それにあたし リクくん達のお誘いは
なるべく参加する方だし」


「でも優先順位はヤクモさんがダントツ一位


!!」





打って変わって一瞬怖い顔をしたさんを見て
さんは首を竦める







おお怖っ…てーか悪ぃなリク、
俺までスイカもらっちまって」


「いいんですよ 元々そのつもりでしたし」







けど さんは少し考えて、








「世話になりっ放しも悪いから、ナヅナと
二人で買い物に行ってくるよ」






呟いた次の瞬間





助かります 今日は沢山買う物があるので
荷物を持てる方を探してましたから」







さんの後ろからナヅナちゃんが現れた







「「ナヅナちゃん、いつの間に?」」









僕らの視線を受けて恥ずかしいのか、





ナヅナちゃんはほっぺたを少し赤らめる








「先程お洗濯が終わったので、リク様にお買い物へ
行く事をお伝えしようとここへ」







僕がさんに何か言うよりも先に







「流石 腐っても予測の式神だね」


「腐ってもは余計だ!」





さんの言った言葉に反応して
さんは眼を吊り上げる





二人の口ゲンカが始まりそうになるのを


溜息混じりのナヅナちゃんの一言が食い止めた







「こんな所で小競り合いを始めたら
タイムセールに間に合わなくなりますよ?」


「っとそうだった…それじゃお供させてもらうぜ?」


「こちらこそよろしくお願いします
それではリク様、さん 行って参ります







ナヅナちゃんが礼儀正しくペコリと頭を下げた





「行ってらっしゃい 気をつけて」





スタスタとナヅナちゃんが玄関に向かう







、ナヅナちゃんに迷惑かけたら
駄目だからね〜」







さんをちょっと睨みつけて、
さんもナヅナちゃんの後に続く











ナヅナちゃんとさんが買い物に出て








居間に居るのは さんと僕だけ





縁側に面したベランダからは、夏の日差しが
さんさんと降り注いでいる







窓の端に 昼顔がちらほらと見える





そういえばさんの今日の服の色
昼顔と同じ色合いだ









「ソーマ君は部屋にいるの?」


「はい、朝から株がどうたらって
ずっと部屋にこもってパソコンに集中してます」







僕は そう言ってから、神操機を取り出して









「コゲンタも夏バテで最近寝てばっかりだし」


「ああ、それでこんなに静かなんだ」







この場所で聞こえるのは、僕とさんの声と
外で引っ切り無しに鳴く 蝉の音





普段はコゲンタ達がいて賑やかだけれど





今は、蝉の音が少し うるさい位









「戦いの時には起きるんですけど、それ以外は
何言っても起きなくて ちょっと寂しいです」


「ふーん ちょっと試していい?」







言いながらさんが 僕の隣にやって来た





僕が戸惑っているのを余所に、
彼女は神操機に向けて声をかける







おーい コゲンタくーん!
…本当だ、何にも反応ないみたい」


「そ、そうですね…」









蝉の音よりも僕の心臓の音の方が
少しうるさい気がした









僕は さんが少し苦手だ







あっけらかんとしていて明るくて





普通にしてればとても可愛らしい人で







いい人なんだけど 結構はた迷惑な所もあって


今みたく僕の隣にやって来る行動や動機みたいに
突飛な事も平気で行うし





お陰で色んな意味でドキドキしっ放しだけど







…そう言えばさんは
僕の事、どう思ってるのかな?











「リクくん、あたしの顔ジッと見てるけど
どうかしたの?







さんが目をパチクリさせて
僕の顔を覗き込…近いって!





そう言えば隣に移動してたんだった







「え、いや 何でもないです








言いながら慌てて少し距離を取るけど








「いーや、絶対何か考えてたでしょ?
白状しないとお仕置しちゃうよ〜?





さんは尚も僕に詰め寄ってくる





「いっ言います言います!







何とか手で押し止めて、何を言おうか
少し考えてから 言葉にする







さんに今度、符の修行を
つけてもらえないかなって…」









さんの目が点になる









「え あたしが?


「あの…駄目 ですか?」







ううん、とさんは首を横に振って







「いや、リクくんが積極的
修行して欲しいって言うの珍しいなって」


「最近 符をあまり使わないから…一度、
誰かと一緒に修行しておこうかなって思いまして」


「でも、符の扱い上手い人 あたしの他にも
いると思うけど〜?」





ヤクモさんとか、と言う彼女に





僕は首を横に振って答える







「僕はさんがいいんです」







さんは 少し驚いたような顔をしていたけど





ニコっといつもの顔と声で言う









「そこまで言われたら仕方ないか〜
スイカまで出してもらっちゃってるし」







続く言葉は少し真剣みを帯びて









「それにリクくんは、大切な―







言いかけて さんはそこで言葉を途切る





その続きを、蝉の鳴き声がうめる







「大切な?」





続きを聞きたくて促すと、笑顔は苦笑に変わっていて





大切な…仲間だし、ね?」











本当は何て続いていたのか、
どうして言葉を途切ったのか





聞いてみたかったけれども







何となく 聞いてはいけない気がして







開いた口を、閉じた








さんはそんな僕の様子に気付いてか
ことさら明るく、元気な調子で







「そうと決まればちょっと厳しめに
修行つけちゃうから覚悟してね?」





と言って 笑っていた







「…はい、よろしくお願いします」







僕も、笑顔で返した









仲間でもいい、大切だと思われているなら
それでも構わないと 思った







それだけで十分―











「ただいまー」


「ただいま帰りました」







買い物に出かけた二人が帰ってきて、
また 部屋の中は賑やかになる









けど、窓の外には昼顔と蝉の音がある








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:を主でリク夢・仄々淡目?に挑戦という
無謀を冒して 失敗しました


リク:見も蓋も無いですね…(汗)


ソーマ:僕も話に出たかったよ!別に一日中株に集中してる
ワケじゃないんだぞ―――!(怒)


コゲンタ:ってか、オレ等の絡みを書くのが面倒くて
出番を減らしただけだろ?


狐狗狸:……ごめん


二人:認めたよ…(汗)


狐狗狸:だってこれ 本当は修行まで書くつもりだったけど
ネタがそこまで出なくて約束だけになっちゃったし…


コゲンタ:しかも終わりが意味不明だぞ、アレ


ソーマ:終わり所か最初からツッコミ所満載だね
ひょっとして狙って書いてるわけ?


リク:どうせならもっと考えて書きましょうよ


狐狗狸:うぐっ…ごめんなさい
三人で色々責めないで…




夢なんだか甘いんだかな文でスイマセンでした(いつもだろ)