好きで来てるわけじゃねえのに 俺は伏魔殿に来ちまう





メンドイから数えんの止めたが…
多分軽く50超えたな 回数










俺はあたりに気を配りながら出口を探しつづけている





どうやらはまだこのあたりに居ないようだが
今日こそは奴に見つからないうちにここを出ねぇと…!







「一体何してるんですかィ?さん」









聞き覚えのある低い声に 思わず身体を硬直させた












〜「君の背後に奴は居る」〜













ヤバイ ヤバイヤバイヤバイ 見つかった…つか早すぎだろ





考える間にもこっちに近づく気配 どうする?どうする俺?







「もう一度聞きやすが 何してるんですかィ?





その問いかけを合図に 俺は迷わず走り出した


と同時に奴が目の前に立ちふさがるが
すかさずハリセンで叩いて怯んだ隙に横を通り抜ける









「…逃がしゃしやせんぜ?」



そして今回もまた 伏魔殿での逃走劇が始まった













奴の名は霜花のオニシバ


前に伏魔殿で迷い込んだ時にお世話になったのだが…


その時の"貸し"を返させようと今でも俺を追いかけつづける





え 何で逃げるかって?





答えは単純 代償が俺自身だからだ!














「だぁあっもう しつけぇなっ…もう追いかけてくるなーっ!


「嫌ならこの前の貸し 払ってもらいやしょうか」


「だからそれは 可能な範囲でって言っただろっ!」


「別に不可能じゃねぇし 減るもんじゃないでしょう?」







お互い全力疾走しながら 何度目かわからない
会話を繰り返す





冗談じゃない 減らなくても奪われるだろっ!!










…にしても今日はいつもよりしつこい
いい加減こっちが根負けしそう





埒があかない、と 俺は覚悟を決めて足を止め 向き直る







恐らくそのまま突っ込んでくるオニシバを迎え撃―


ってあれ?いねぇ?








その時 いきなり後ろから羽交い絞めにされた!





「さーて やっと捕まえた」
「げっ 背後取られたっ


「あんたよりあっしの方がここの地の利を生かせた
それだけですが?それじゃ 遠慮なく…」





とかいって俺の向きを変えて 顔を近づける












ヤバイ! こうなりゃ一か八かっ―――












正に後3センチの瞬間 俺は
渾身のボディーブローをお見舞いした!





「グホッ」


奴の身体が"く"の字に折れる







力が緩んだ隙に 腕から逃げ出せた


















「っもう ここまでくれば、流石に追って来ない筈…」





無我夢中で逃げた為 俺は今更あたりを見回す







「…ヤベェ 何処だここっ」









どうやら結構奥の方に来ちまったようだ


少しあたりを歩き回って 道を聞こうとしてみる…





があたりに誰も居ない











途端 急に不安になってきた












もし、このまま帰れなかったら?





もし、に会えなくなったら?








気がついてもらえず 忘れ去られてしまったら―――?


















「ようやく 見つけやしたぜ?







俺の背後に呼びかける 声





振り向くと オニシバが息を切らして佇んでいた





「…泣くくらいなら ここまで逃げなきゃいいんですよ」









言われて初めて 自分が泣いていた事に気付く











「もともとは そっちの、せいだろ…?





ようやく絞り出した声は 酷く弱々しかった







「とにかく 出口まで案内いたしやしょう」


そう言って差し出された手を 俺は強く握り返す












実は…来てくれて 少しホッとしている













「ほら 着きやしたぜ?」


「ありがとう…なんかまた貸し 作ったみたいだな」





奴は大した事じゃない といった感じの顔をする







…今度何か 借りを返さないとな、と思っていると――










一瞬の内に身体を捕まれ 唇と唇が合わさっていた








「…っ んぅぅ ブハッ!





ようやく腕を振り解き、俺は怒鳴ろうとするが
あまりのことに声にならない







これで、貸しは帳消ししまさぁ
気をつけて帰って下せぇ」





してやったり なオニシバの顔を見て俺は思った












"やっぱりコイツ やな奴だっ…!"









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あとがき(と言うか楽屋裏)


狐狗狸:オニドリ完成〜…実は何だかんだいって
結構好きなんですよこの人(藁)


オニシバ:でもあっしの口調が難しいってよくぼやいてやしたね
狐狗狸:ぬぉっ また背後から現れるし!


オニシバ:まあ 今回はこんな感じでいいですが
次回は一体どうするんで?


狐狗狸:え 次回?書かなきゃいけないのか…はっ(シマッタ!)


オニシバ:書きやすよね 当然(銃を構える)
狐狗狸:……………さいなら!




"ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガン!"