とある本を買う為に、いつもの本屋じゃなくて
近所のデパートまで足を運んでみた
「しばらくこないうちに大分変わったなぁー…」
中のお店の配置に戸惑いながらも
目的の書店のフロアは変わってなくて少し安心
エスカレーターで登れば スグ目の前の本屋
割と大きなそこに、目当ての本は見つかった
「あったあった さて、家で待ってる
あの子の為にも早く帰んなくちゃ」
レジで会計を済ませて、
下りのエスカレーターへと移動して
フロアの一角で開かれた物産展に気付いた
〜「遠路はるばるやって来た」〜
「ただいまー」
『お帰り、ズイブン遅かったな』
笑顔で出迎えてくれたのは 神操機から出てきた
半透明のコロク
『…買うのは本だけじゃなかったのか?』
「初めはそのつもりだったんだけどねー
デパートで物産展やっててね」
『"ブッサンテン"?』
コロクと同時に背中の蛇も
キョトンとした顔で首を傾げる
そっか コロクは式神だから
物産展の事は知らないんだ
「色々な地方とかの食べものとか料理を大々的に
売り出す…言っちゃえば食べもののお祭かな?」
『ふぅん、現代では面白いこと考えるんだな』
しみじみと感心するコロクが可愛い
こうして見ると、とてもあたしより年上には見えない
『で は何買ったんだ?』
「北海道の物産展だったから海産物が
一番多かったけど、そういうのって結構高くって」
それに ナマモノ系は足が早いから
食べきっちゃわなきゃいけないしね
『、貧乏学生だもんな』
「まあね、乾物とかはそんなにでもなかったけど
お酒飲まないからさ だから甘いものを中心に
買ってきてみました」
言って それぞれの袋から品物を出して
ちゃぶ台サイズのテーブルに並べていく
夕張メロンのゼリーに白の恋人
北海道限定の巨大メロンポッキーに
蜂蜜に生キャラメルクリームに…
『…貧乏なのに こんなに買って大丈夫か?』
「あはは、ノリでちょっと買いすぎたみたい…
あ そうだ!」
ある品物を出した所で 陳列を一時中断し
あとの袋をテーブルにまとめて置く
代わりに、神操機を手にして
『どうした?』
「式神降神!」
あたしはコロクを降神した
「玄武のコロク 推参!
…って、何でイキナリ呼び出したんだ?」
「それはねー、これを一緒に食べようと思って」
テーブルに置いておいたその品物を
取り上げて コロクの目の前に差し出す
それは、箱に入った まだ温かいスイートパンプキン
「このスイートパンプキン、出来立てを持って
帰ったからさ 温かいうちがおいしいかなって」
お店にはスイートポテトも並んでたけど
時期的にハロウィンがあるから、こっちにした
だけど コロクは困ったような顔をする
「オイラたち式神は、食べなくても平気なんだけど」
初めに契約した時 お夕飯を作った時にも
この子はそう言って同じ表情をしてたっけ
"契約中の式神は、闘神士の気力が力の源だから
食事を取る必要は無い"
…でも あたしはご飯を進めた
「それは知ってるんだけどね、ご飯とかは
一人より二人の方がおいしいじゃない」
ニッコリ笑って、あの時と同じ言葉を繰り返す
まだ一人立ちする前、ご近所の子を
任されることが多かったからか
小さな子が一人で過ごすのを ほっとけない
厳密に言ったらコロクはあたしより年上だし
……お節介や、自己満足かもしれないけど
「…迷惑なら 無理にはすすめないよ」
コロクはブンブンと首を横に振り、
「そ、そんなことないっ!せっかくが
買ってきてくれたんだし食べるよオイラ!」
顔を赤くして力説しながら席についてくれた
この流れも、前の時とほとんど一緒で
安心すると同時に 少し笑ってしまった
「わっ笑うなよっ!」
「ゴメンね、それじゃお茶と食器も用意しなきゃ
ちょっとだけ待ってて」
あたしは居間からすぐのキッチンに移動する
割と名前の知られてるらしいお店のお菓子には
不釣合いな安紅茶の入ったコップを並べ
コロクと向かい合ってスイートパンプキンを食べる
「おいしい?」
「―ん、うまいよ」
背中の蛇も おいしそうに食べてるみたい
「喜んでもらえると 買ったかいがあるよ」
言いながら、もう一口
舌に優しく溶けて広がるカボチャの味に
頬が緩むのがわかる
ああ…甘いもの バンザイ
両方のほっぺたを膨らませたままコロクがたずねる
「さっきは聞きそびれたけど は何で
物産展で買い物する気になったんだ?」
「他の地方とかだったら、ちょっと考えたかな
でも北海道の物産展だったからね」
こっちを見つめるコロクの頭に
?マークが見えたような気がした
あたしは 笑って続きを口にする
「はるばる北からやって来たんだって考えると
何だかコロクみたいだなって思っちゃって
それで ついね」
「…確かに玄武は北の方角を司るけどな」
それきり 無言でお菓子を食べるコロク
照れてる顔も、子供らしくて可愛いなぁ
…でも コレは口に出来ない
コロクは案外、子ども扱いされるのを嫌がるから
思考とか行動は完璧に子供なのになぁー…
手の平サイズのスイートパンプキンを平らげて
「「ごちそうさまでした」」
あたしたちは両手を合わせてそう言った
「コロク、口の周りに食べカスついてるよ」
「えっ ホントか?」
袖で拭おうとするコロクを手で止めて
「いいよ 拭いてあげるからじっとしてて」
テーブルの上に常備してあるティッシュを一枚取ると
口の周りを優しくふき取った
「はい、取れた」
「…あ ありがとな、」
「どういたしまして」
空になったお皿とコップを流しに下げて
洗おうとする前に、コロクが声をかけてきた
「 オイラを神操機に戻さなくていいのか?」
式神を降神している間は、闘神士の気力が
行動などに比例して消費されるらしい
だからか 降神してしばらく経つと
コロクは必ずこう聞いてくる
気遣ってくれるその優しさが、嬉しい
「んー、戦ってる時じゃないし まだ平気だけど
…コロクは戻りたい?」
「オイラは…が平気なら、まだここにいる」
「わかった、じゃあ洗い物してる間
買ってきた本を読んでていいよ」
本の入った袋を目で示すと、途端に
コロクが怪訝そうな顔をした
「…が探してたのって またオイラの本か?」
「うん」
今回買ってきたのは、昔ながらの児童書
"大納言バズーカ"シリーズの3番目
最初のと2番目のはいつもの本屋にあったのに
どうしてか3番目が無かったから、デパートまで
買いに行ったのだった
「オイラの為に本買うくらいなら
まずは部屋を片付けろよー」
「そ、それは言わないで…」
家にいた時から、あたしは片づけが苦手だ
ちゃんとキレイに整頓しているはずなのに
いつの間にか部屋の中がヒドイ有様になる
…現在でもそれが変わらないのは
部屋の荒れようを見れば一目瞭然
がんばって片付けると、なぜか余計に
ヒドくなるから 忙しさを理由に放置してた
―コロクと契約するまでは
「でも、これでも努力して大分マシに
なった方なんだよ」
「そうだな 初めの頃は人の部屋には
とても見えなかったもんなぁ」
それを言われるとイタイなぁー…
「本当はもうちょっとちゃんと片付けて
人を呼べるようにしたいんだけどね…」
「大丈夫、にはオイラがついてっから
きっと何とかなるさ!」
しょげるあたしを元気付けようと
胸を叩いてコロクが自信を見せる
…そうだよね 式神界からやって来た
"運命"の式神が言うんだもんね
君と一緒なら、何とかなるかなと前向きに捉えて
「うん、ありがとう コロク」
お礼を言ったら なんでかコロクは真っ赤になった
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あとがき(というか楽屋裏)
狐狗狸:何とか更新に間に合いましたっ、10月の
初っ端でのハロウィン系ネタ!
コロク:は何で掃除だけあんなにヘタなんだ?
狐狗狸:そーいう設定だから
コロク:それで片付けちまうなよ…でもコレ
よく考えたらハロウィンあんまり関係ねぇぞ?
狐狗狸:言わなきゃ気付かれなかったのに
何で言うかな!何で!?
コロク:お、オイラが悪いのか!?
狐狗狸:…いや 君の言ったことは正論なんだけどさ
コロク:どっちなんだよ…あと、の買った
本の題名 かなり無理やり過ぎねぇか?
狐狗狸:だって実際のものの名前出すのマズいじゃん
だから商品名も少し気を使ったんだよね
コロク:……そんなことより、って
天然入ってないか?
狐狗狸:入ってますよ(キッパリ)
ある意味"年の差"な話でスイマセン
てゆうか相変わらず展開がヒデェ…(ガクーン)
さん そして読者様、ここまで読んでいただいて
ありがとうございました!