2月14日 バレンタイン当日の朝方





「ねぇ助けて〜!





台所の方から の悲痛な叫びが聞こえた









「どっ、どうしたんだ


普段とは違う呼びかけに 慌てて飛び出した





台所で見た光景は―









「ラッピングが上手く出来ないの、手伝ってぇ〜











がビターチョコレートの入った箱をラッピングするため
包装用紙と奮闘している姿だった











当初 ヤクモに手作りチョコを贈る為、大分前から
頑張っていた
のだが 出来が芳しくないため
諦めて 彼の好みそうなチョコを買ったのだ







せめてラッピングくらいは…と挑み、今に至る










〜「ビタースイート」〜











「Σ確かお前 早めに起きて準備してたよな!?」





まだ出来ていなかったのか、と言う顔で が言う







「そうだけど上手くいかないの〜だから手伝って!
早くしないとヤクモ様に渡せなくなっちゃう!!





「気持ちはわかるけど…俺 不器用だぞ?」









がキッとを睨みつけ





「いいから手伝って!!」


と 彼女の裾を強引に引っ張った











仕方ない、と溜息をついてを手伝った













そして2時間後―











「ちょっと見てくれは悪いけど…可愛く出来たな!
が笑いながら 目でチョコを指し示す







「うん ちょっとボロボロだけど、愛がこもってるから
大丈夫
よ!じゃ いってきま〜す!!」





嬉しそうにがチョコを袋に入れると
玄関を開けて 出ていった















「ヤクモ様何処にいるんだろう〜見つからないなぁ…」





あたしは伏魔殿でヤクモ様の姿を探していた







「妖怪がうっとうしいなぁ やっぱりも連れてくれば
よかったかしら?」





闘神符で寄ってくる雑魚妖怪を蹴散らしつつ呟く









「でもチョコは一人で渡したいしなぁ…」


ちゃん どうしーたの♪





何でか知らないけど そこにタイミングよくマサオミさんが現れた









「マサオミさん、ヤクモ様見ませんでした?





マサオミさんの笑顔が引きつっているように見えるのは
多分気のせいだろうな〜











ちゃん…出会い頭それはナシだよ;」
「だって 探してたからつい〜」





苦笑しながら マサオミさんは言葉を続ける





「ハハハ…しかしチョコレートの匂いがするね
そう言えば今日はバレンタインだっけ







期待するような目で見られ、あたしはすまなさそうに





「あ ゴメンなさい、マサオミさんの分持ってくるの忘れてた!
後で持ってきますね?」











「だったらこっちでいいよ!もらい!!


そう言って マサオミさんはあたしの手から袋のチョコを奪うと





「それじゃあ〜アリガトウちゃん!





「Σちょっ マサオミさんそのチョコ返し…!


取り返す間も無く すたこら逃げられた











ヤクモ様にあげる折角のチョコが〜〜〜〜〜!!!













「さてさて ちゃんのチョコレートの味は〜っと♪」


マサオミはワクワクしながら 戦利品の包みを開けていく









包装を剥がすと 中から出てきたのは美味しそうな
チョコレートに、一枚のカード







カードには"ヤクモさんへ 愛を込めて" と書かれていた











「……芳川ヤクモめ!!」
彼はそう呟きつつ カードをぐしゃりと握り締めた















「家中まだ甘い匂いが漂ってるな…」


一人残された俺は 誰にとも無く呟いた





薄れてきたとはいえ この間までがやたらと
チョコを作っていた
から、匂いが染み付いているのだ









「……アリが寄ってきそうだな;」





さん 今の季節それは無いと思いやすがねぇ」


後ろから聞こえた声に振り返ると オニシバがいた









「Σお前何処から沸いて出た!?」





「失礼な 無用心なのを立ち寄りついでに
忠告しに来たんですぜ?」







不敵に笑う奴の後ろに 大きく開いた窓が映った







Σ不法侵入かよ、つか匂いに釣られてアリより厄介なのが来た;


窓を閉めつつ 俺はオニシバのほうに向き直る









「お茶ぐらいなら出すけど 飲んだら帰れよ」


「どうせなら茶よりも チョコが欲しいんですけどねぇ」


「Σねぇよ!つかお前甘いの苦手っつってたろ!!」









ツッコミ入れると あいつはニヤニヤしながら





「無いなら代わりの物で十分ですぜ?」
「Σ結局それか 寄るな来るな変態!!











じりじりとお互い対峙して 相手の動きを探っている













〜!チョコ取られちゃったよ〜!!





丁度その時 が家へと帰ってきた





「マサオミさんからチョコ取り返しにい…」









家の中の二人を見た瞬間 の顔が固まった







「Σ何二人でイチャイチャしてるのよ
のバカーーーー!!!」



勘違いをしたが 手に釘バットと闘神符を装備した











「Σ誤解だ!ブルアァッギニャーーーー…





問答無用とばかりに はボコメコにしばき倒された…













虫の息状態の彼女を神操機に戻すと
はオニシバの方を向き







「それじゃ 用事がありますので…
ゆっくりしてってくださいね?


笑顔でそう言うと 再び伏魔殿へと向かった













「……ガシンの旦那 恨みますぜ?」





一人残されたオニシバは そう呟いた








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:何とか間に合ったその二…この時期色々な絵の制作も
同時進行
だったからきついよ〜(吐血)


マサオミ:ていうか駄文なだけじゃ飽き足らず オレの役割
今回ちゃんのお邪魔虫かよ!?(怒鳴り)


オニシバ:しかもあっしの扱いが放置ってのは幾らなんでも
酷過ぎやせんか?(ジト目)


狐狗狸:タイトルからして普通に甘いのもらえると思ったら
大間違いだ貴様らあああぁっ(何故威張る)


二人:……滅んどけ(殺意オーラ充満)


狐狗狸:スンマッセン 調子乗りすぎましたぁぁ!!(逃)