戦いが終わって、オレは自分の時代に戻り
姉上たちと平和に暮らしていた





でも 時々は現代に顔を出すこともある





やっぱり牛丼が恋しくなったり
リクたちの顔を見たくなるのも原因のひとつだけど







今回の場合は、それとはちょっと違った













「やっほーちゃん、元気?


「あっマサオミさん お久しぶりですねぇ〜」







コートを着たちゃんが振り向いて ゆるく微笑んだ







「奇遇だね ちょうど今こっちに来たとこで
君に会えるなんて」


「そうですね〜あたしもバレンタインで
チョコを届けに行ったとこだったんですよ」









そう、今日はバレンタイン!





(昨日あわてて思い出したけど)





せめて今年くらいはまともに
ちゃんのチョコもらいたい!!







だからこうして現代にやってきたのだった












〜「大事なのはハート?」〜













「さっきヤクモ様に届けに行った帰りなんですよ」


「そっか 今日はバレンタインなんだ〜」







予想通りの会話にオレは適当に相槌を打つ









彼女のことだからヤクモには絶対に
チョコを渡しに行くだろう






だからこの辺で待ち伏せしてたんだよね





この公園は、彼女がよくヤクモのところへ
行くショートカットで利用するのを知っているし







「ところで、渡すチョコって もう無いのかな?」







とびっきりの笑顔を浮かべて


さりげなくチョコを強請ってみる









すると、ちゃんも笑顔で







ごめんなさ〜い マサオミさんの分のチョコ
用意してないんですよ〜」


「え…ええっ!?そうなの…」


「だっていつこっちに来るかわからないし〜」









たったしかにそうだけどさ







オレはガクリとヒザを落とした


てゆうか比喩表現なしにorzになった







「そんなに気落ちしないで下さいよぅ
お菓子のチョコ 分けてあげますから」


「…はは、ありがと ちゃん」











二人で近くの遊具に腰掛けて、







ちゃんから一口大のチョコを手渡しでもらう









折角 バレンタインにワザワザこっち来たのに





もらうのがお菓子のチョコって…







「このチョコ、最近発売されたすごく美味しい
人気のやつなんですよ?」


「へぇ〜…あ ホントだ」







もらったチョコは 本当においしかった









でも、欲を言っちゃうと


もっとバレンタインっぽい雰囲気
合ったやつを期待してたんだけど〜…







「どうかしました?マサオミさん」


「え、ううん 大丈夫だよ」









ニコニコしてるちゃんに、ついつい
そう言ってしまう







だって彼女が笑顔でくれたものに 文句なんて言えないし







「…あれ?そういえばちゃんは?」





いつもならうるさいくらいにオレの邪魔をするのに
いないなんて珍しい





「ああ、保護者さんにおセンベ渡しにいきましたよ」


「そうなんだ…そう言えばさ、
前から気になってたけど、保護者って誰?







ちゃんの口から出たのは 意外に
身近にいたやつだった







「伏魔殿でよく会う 霜花のオニシバって言う
式神さんですよ〜」


「えっ…オニシバが!?


あれ?マサオミさん 知り合いだったんですか?」


「あー…うん、まぁ仲間だったというか
知らない仲ではないかな?」







納得しながらチョコを食べるちゃんの横で、





オレは新たな事実にただただ驚いていた









へぇそうなんだぁ オニシバがねぇ…物好きだなあいつ







でもうらやましいなぁ〜









「何だかんだ言って、ってば
保護者さんのこと好きですからね」


「だよね、ちゃんと相手に渡しに行くもんね」


「…マサオミさん 何見てるんですか?


「え?何って ちゃんだけど?







これは本当 さっきから彼女の一挙一動を
オレはじっと見つめてる





だけど、彼女は信じなかった







「嘘だ 本当はこのチョコを狙ってるんでしょ〜」


「そんなことないよ」







ニッコリ微笑むけど、疑いの眼差しは消えない







「そんなにじっと見つめててもチョコはあげませんからねっ







言いながら ちゃんはチョコを慌てて次々口に入れる





…そんなにオレ もの欲しそうな顔してたのかな?







「むぐっ…げほっげほげほ!


「ああもう慌てて食べるから〜」





咳き込むちゃんの背中を擦る





「あっ…ありがとうございます マサオミさん」









微笑んでお礼を言う彼女を見ていて


ふと、頭によこしまな思考が浮かんだ











今キスしたら チョコの味がするのかな?











―気がついたら、ちゃんの肩を
抱き寄せて キスしようとしてた









「キャアァァァァ!!」







ちゃんが思い切りオレを突き飛ばしたため
オレは思い切りよろけた





突き飛ばした反動か、彼女もしりもちをつく







「なっななななな何するんですかマサオミさん!!









顔を真っ赤にして震える手でオレを指差す







その様子が、あんまりにも面白くて
ついつい 笑ってしまった









「ッアハハハハ!


「笑わないで答えてください!!」


「ゴメンゴメン、冗談だよ」







軽くそう言ってみるけれど、実はかなり本気だった





一瞬 自分でも何やってるかわかんなくなった位に





我ながら突拍子も無いことをやるもんだ
ちょっと感心していると







「やっていい冗談と悪い冗談があります!」





立ち上がったちゃんがオレの口に
お菓子のチョコを押し込んで





「帰ります!」







きびすを返してスタスタ歩いていってしまった











「……あーあ、何やってんだろオレ」







先程のちゃんの反応と、押し込まれた
チョコの甘さを噛み締めながら







後で謝りに行こうとぼんやり考えていた











……この後 ちゃんとの仲直りに、
かなり大変な思いをしたけど、それはまた別の話








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:バレンタインネタってことで久々にシリーズで
書いてみました〜遅くなってスイマセン!


マサオミ:遅くなったのは 作者が夕べのチョコ作りで
苦戦してたからなんだよね


狐狗狸:うるさいな!フォンデュを固まらせるのが
死ぬほど大変だと思わなかったんだよ!!


マサオミ:しかも反動でものすごく寝るし、動画見ながら
作業するからこんなにおそ


狐狗狸:(遮って)言うなあぁぁ!!てゆうか
ストーカーのあんたに言われたかない!!


マサオミ:……誰がストーカーだって?(黒笑み)


狐狗狸:アンタだあん




狐狗狸はその日から行方不明になりました