旦那と伏魔殿に赴き 闘神石を取りに来た筈が







どうやら誰かが先に闘神石を取っちまったようで









唐突に出来た裂け目に飲まれ あっしは旦那とはぐれちまった















「…ったく ついてないねぇ」







旦那の姿を探し 見慣れぬ風景をうろついていた










ー!どこだー!!







そこに聞こえたのは 聞きなれた声





高く澄んでいながらも凛と響いてよく通る―









思わず声のした方を探すと そこには見慣れた姿があった







一括りにした銀色の髪と 同じ色の狐耳と尾







こちらを見つめる金の眼が意外そうに見開かれていた









何でお前がここに居るんだよ オニシバ


「会い頭にそれは つれないってもんですぜ?さん」









目の前にいるのは "予測"を司る式神
六花のさんに間違いなかった











〜「芽生えてた感情」〜











「まあそれはおいといて、見かけなかったか?


「いや、見ていやせんがねぇ」







すると この娘は腕を組みながら呟く









「そうか……ちゃんとアイツに会えてりゃいいけど
最悪神流の奴に会っちまってたら 何されるか…










「そいつぁ 偏見って奴なんじゃないんですかぃ?」







言ってから 手前の台詞に手前が驚く







「まるで神流の方にいるような口ぶりだな…









その真摯な眼差しに どんな嘘も通用しないと感じた








腹を括って あっしは真っ向からその瞳を見据える












「唐突に言いやすが あっしは神流の側に居るんでさぁ





「…やっぱりそうだったのか」







意外にもあっさりとした反応に ちょいとばかり拍子抜けする







「何だ 気付いてたんですかぃ」





「何となくな…昔からヤな勘だけは当たるんだ







軽く舌打ちをして呟くこの娘









そこで 思い立って言葉を紡ぐ











「何でしたら…あっしの元へ来やせんか?


「っ何だよそれ、俺にを裏切れって事か?」


「ひょっとしたら もう裏切られてるかもしれませんぜ


どういう意味だよ







わかってるくせに 今更何故そんな事聞くんですかぃ?







「あちらさんも 同じように誘いがかかってるって事ですよ」


「なっ…にも!?









慌ててその場を離れようとするさんの前に先回りする













「…この誘いにのらねぇなら アンタとあっしは敵同士
ってことに なるんですぜ?
いいんですかぃ」







この言葉に 金の目に映る光が揺らぐ―迷っている









戸惑うこの娘に 追い討ちをかけるように言葉を放つ





「もしそれで戦いになったら…あんたはあっしを倒せますかぃ?







目の前の相手は顔を歪めて目をつぶった













黙ったまま動かないこの娘に 返答を促す







「さぁさん…返答を聞かせていただけやすかぃ?















刹那、この娘はカッと目を開き 左の拳を力一杯握り締めた





即座に広がる 赤い華と鉄のニオイ











「俺は迷わない…あいつがどちらに着こうと
あいつを、を守りつづける!







瞳には今までにない強い意思が宿っていた











全てを抱えて前へ進む…真っ直ぐで


妬ましくなるほど、透き通った強さを
垣間見た













「…交渉決裂ですかぃ なら、次に会う時は敵同士ですかぃ?





「かもな、なるべく会わない事を祈るよ…」







さんは顔を伏せながら言って あっしの横を通り過ぎた











「…待って下せぇ 本当にそれでアンタは…」





納得できるのか?と問い掛けたくて







思わず追いかけて 肩を掴んだ













振り向いたあの娘の目に 涙が一筋―音も無く零れた















慌てて逃げたさんを 追いかける事は出来なかった







透き通る強さと隣り合わせの脆さで 触れたら今にも
…壊れちまいそうなあの娘を











「あんな顔するなんざ 反則ですぜ…?







我知らず苦い顔をして呟く













やっぱり、諦める事なんて出来ねぇよ








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:ついにダークサイドネタ書けた!!っていうか
本当は放送時に間に合わせたかったんですが…


オニシバ:手前の自堕落さとからくり箱の不調のせいで
ここまで遅くなったと(呆れて呟き)


狐狗狸:だからそれは言わない方向でぇぇ!!(嘆)


オニシバ:にしても…この展開じゃまるでさんと
別れたみてぇ
じゃないですかぃ


狐狗狸:確かに…でもアナタの性格からしてもぶっちゃけ
諦めずしつこく誘いつづけそうですが
(ぇ)


オニシバ:当たってるだけに否定はしやせんが…


狐狗狸:というよりこの後がそんな展開ですしね


オニシバ:って事はさんと寄り添える日も近いと?(期待)


狐狗狸:……その辺は今後のアナタの頑張りで(笑)




強制終了(コラ)


ちなみに が手を握り締めたのは
自分の迷いを断ち切るためです


ちょっと力が入りすぎて 爪が食い込んで
出血した…って感じです


いや 決意と流血書きたかっただけなんで スイマセン