「だーもう 俺は自分で自分が信じらんねーよっ!!」
そう吐き捨てて 目の前の名落宮の風景を見据えた
ここの所 にお使いを頼まれる事が
日課になっていた
でも 通いなれた道でさえ迷いこめる超方向音痴の俺は
今回もスーパーの帰り道からここに迷いこんだ
…これで伏魔殿に25回 名落宮には14回来た事になんのかな(泣)
〜「史上最強の方向音痴」〜
「今度からなんか対策考えてもらおうかな〜
アイツ迎えに来る度に 戦うのヤダって言うしな」
溜息つきながら とぼとぼ歩いていると
イキナリ 声をかけられた
「お嬢さん、貴方のような可憐な女性が
この名落宮へ何故参ったのです?」
「誰だっ」
俺は思わず声のした方を向く
そこにいたのは…豊穣のアンジだった
「なんだ ロデムか」
「さん、再三言いますが
僕の名はロデムではなくアンジです」
やや不機嫌そうに 名前を訂正するアンジ
「いや あんたが飼ってた猫に似てるから」
「ふっ さぞかし美しい猫だったのでしょう…」
「確かに美猫だったね メスだったけどな」
「…」
その言葉に、気取ったポーズのまま アンジは固まった
近頃ここに迷いこむ回数が増え 俺は妙に顔が広くなった
アンジとはそのたびに良く会うから
今ではすっかり顔見知りなのだ
「それにしても…何故地流だった貴方が
天流の彼女と契約したんです?」
「なっなんだよやぶからぼうに」
「いえ 貴方はあまり過去を話さないようなので、
少し聞きたくなったんです」
そのまましばらく 足音だけが響く
「…本当に聞きたいのか?」
「嫌であれば 話さなくても構いませんが…」
俺は 上を見上げながらため息をついた
「いいさ アンタとは付き合い長いから
一回だけ話してやるよ」
…俺は伏魔殿から抜け出して ずっと彷徨いつづけていた
納得が出来ず あいつに…に会う為に
―どうして契約を取り消したんだ―
暴れまわってて封じられ、居場所がなかった俺を
途方もなく ただただ信頼してくれた
流派同士の争いに いつも心を痛めていて
俺のことを親身になって心配してくれた
せめて もう一度だけ、会いたかった
それから幾度 森の中を歩いたろう
思いもかけずあいつの故郷に着いたこともあった
闘神士や人間に見つけられて 攻撃された事だって
一度や二度ではなかった
ボロボロになりながら 天神町の神社に
辿り着いたのはいつの事だったろうか
そのときはただ 体を休める為に寄っただけだった
すると―――が現れた
『コイツも 俺と同じだ』
直感的にそう思った
そしたら アイツが声をかけてきた
「ねえ あなた、あたしの式神にならない?」
「…嫌だ 何で俺が?」
「いいじゃないの 見たところまだ契約されてないみたいだし
あたしは闘神士だから」
闘神士と聞いて のことを知っているかもしれないと思い
「あんた…流派は?」
と聞くと 意外な答えが返ってきた
「ヤクモ様と同じ天流よ」
ヤクモは誰か知らないが
こいつが敵の流派であることに心底驚く
天流なんて数が少ないのに あっさり言うかコイツ?
「あのな 俺は地流の式神なんだけど」
「だったら あなたは今日から天流を名乗ればいいのよ♪」
さらに予想外の答えに 俺は思わず叫んだ
「何で俺がそんなことを!」
「だって流派を聞いたって事は 契約するって事なんでしょ?」
「いや そうじゃなくて…」
なんとなく言い出しにくい、と口篭もったら
「ね いいじゃん お願いお願いお願いおねが〜い〜!」
が執拗に頼み込んだ
くそう…ここまで頼まれたら契約するしかないじゃねえか…
ってか、断ったら恐ろしい事が起こるという
悲しい予測しか浮かんでこねぇ
「…っいいよ わかった契約する、すればいいんだろ」
その言葉に は嬉しそうな顔をして手を差し出した
「ありがとう!あたしは よろしくねv」
「俺は 六花の…よろしく」
差し出された手を 俺は握り返した
「後で聞いたら あいつも式神を探してたんだと…
契約して後悔もあるが、アイツと組めそうなのは
俺ぐらいだからな」
「苦労したんですね…」
と少し困り顔なアンジ
わかる その気持ち凄くわかる
俺が逆の立場に居たらそんな顔してるから きっと
でも 満足はしている
もう寂しい思いをしなくてもさせなくても済むから
結局そのあと 俺とアンジはいつもの様にの居る
ラクサイじーさんの祠まで喋りながら歩いたのだった…
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あとがき(と言うか楽屋裏)
狐狗狸:やっとこさ迷子シリーズの後編を埋めれました〜
アンジ:というより これ僕の出番少ないじゃないですか
狐狗狸:(ギクッ)そそそ そんなことは無いさ!
アンジ:しかも過去の話にしかなってないし カラミも少ない
狐狗狸:…申し訳ない 本当にすまない
アンジ:まあ 今回はこの辺で勘弁しておいてあげますよ
狐狗狸:面目ない
アンジ:それではさん
お読みいただきありがとうございました