今いる伏魔殿のエリアを ただひたすらにうろついてたら







ぽつり、ぽつりと雫が天から滴り





程なく雨が降り出してきた









「げっ…降り出してきやがった」







空を見上げ 自分の気分を表すような
灰色の雲を見つめる










また迷子になっちまったからなぁ





早く帰んねぇと にどやされるってのに







「どこか雨宿り出来そうな場所は…と」







雨足が激しくなる事を予想して、





俺は辺りを見回すが 生憎良さそうな場所は…









急に頭上に影が差し


同時に雨粒が落ちてこなくなった







振り向くと 予測通り、アイツが俺に傘を差し出してくれていた









俺が困った時に限って、
アイツが待ち構えたように現れるのは





別に今に始まった事じゃない












〜「送り傘」〜













「…そのカサ どっから出したんだよ」







胡散臭そうに見つめるが、アイツは笑ったまま







「まぁそれは言わねぇ約束で」





「……じゃあ今回も 案内頼むぜ、オニシバ」









オニシバは 口元をニヤリと歪める







おやすい御用でささん」













譲も相変わらず、人使いが荒いみたいですねぃ」


「まーアイツのは今に始まった事じゃねぇよ
そっちは 宿主と上手くやってるか?」


「こっちも おかげさまって奴でさぁ」


「ふぅん、まあ仲がいいのは何よりだな」











伏魔殿をうろつく道中、俺達が自分達の
宿主の近況とか 他愛も無い話をしている最中







雨足はいよいよ土砂降りに近くなった











「雨の伏魔殿ってのも 中々オツなもんですねぃ」


「んーああ、まあな」







俺は傘に入れてもらいつつも





なるべくオニシバから離れて歩いている







さん そんな端にいると濡れやすぜ?
もう少しこっちに寄ったらどうですかぃ」


いい 俺はここで」









迂闊に側に寄って 何かされたらたまったモンじゃねぇ







…それに ぴったりくっついて歩くの恥ずいし









オニシバは、溜息混じりに俺を見て







「風邪引いちまったらどうするんですかぃ」


「うるせぇよ式神は風邪なんか





言いかけて、以前風邪を引いて寝込んだ事を思い出し





風邪なんか…そうそう引かねぇんだよ」







言葉を濁して訂正する













「仕方のねぇお人だねぇ」









オニシバが 手を伸ばして俺の肩を掴む







自分の方へ引き寄せるようにして抱き込んだ







「っテメ 放せよ!





抵抗はしてみるものの、


やっぱりびくともしやがらねえ











「…妙な真似はしやせんから、大人しく
身を寄せておいてくだせぇよ」







言いながら サングラスの奥から紫色の目が俺の顔を覗く









俺は舌打ち一つして、







「…妙な真似しやがったら 頭から燃やしてやる」





少し アイツの方に身を預けた







「おお怖いねぇ、少しはあっしを信用してくだせぇよ」


「だったら日頃の態度を改めろよ」


「…その言葉、そっくりそのまま
今のアンタにお返ししやしょうか?」


「う わかったよ、今のは俺が言い過ぎた」







ペッタリ引っ付いた状態のまま
俺達は道中 こんな具合で話を続けた





…無理にでも 会話を続けてないと眠ってしまいそうな位







オニシバの身体が暖かくて、妙に
安心させられるからだ









いくら顔見知りになったとは言え、いつ敵になるか
分からない奴に





どうして俺はここまで安心するんだ?













その状態で伏魔殿をしばらく歩いていると







ようやく、雨が上がってきた











「見事に晴れやしたねぇ さん」


「そうだな」









今の所は、オニシバは約束を守って
俺におかしな真似をしていない










の奴…怒ってないかな?」


「多分 大丈夫じゃないんですかね?」


根拠もないし予測も出来ないのに
何で断言できるんだよ」


「まぁ これはあっしの勘って奴ですがね」







噂をすればなんとやらって奴か







 どこにいるのー?」









向こうの方から、の声が聞こえて







ー!俺はここだーーー!!」





俺は反射的に呼びかけて、ハッとなった









迎えに来るに駆け寄りたいけど…





この状態で再会するのは、正直恥ずかしすぎる







でも 世話になっといて"それじゃあな"なんて


都合が良すぎるし言い辛ぇ…











譲の元へ 行きたいんで?」







俺の心を読んだかのように、アイツが尋ねる







「ん、ああ そうだけど…」


「それじゃあ、ここでお別れしやしょう」









言って オニシバが俺の肩から手を放した











嬉しい反面、何故かは分からないけど
物足りない感じがした









「折角送ってくれたのに、何か悪ぃな」


「気にしないでくだせぇ さん
いつもの事ですからねぃ」







ニッ、と顔を笑みに歪めて







「それじゃあ あっしはこれで」









傘をたたまないそのままで、オニシバは
俺に背を向けて 歩き出した







「…ありがとう、オニシバ」







俺は それだけ言うとの元へと駆け出す













少し走って、ちらりと後ろを振り向くと









小さくなったあいつが 後ろ向きのまま
手を振っているのが見えた
















毎度毎度心配させないでよね!


「ご ごめん…







反射的に謝ると、はクスッと微笑み







「いいよ もうそんなに怒ってないし
…ヤクモ様にもお礼言うのよ?」


「え、ヤクモさんも来てたのか?」









ちょうどそう呟いた直後
の背後から ヤクモさんがやって来た







ちゃん、ちゃん見つかってよかったな」


「ヤクモさん 本当にありがとうございました


「あ ありがとうございました」





「大した事はしてないよ…どうせなら、送ろうか?









滅多にない申し出なのに は首を横に振って







「ここからは二人で帰れますから さ、帰ろう


「……い、いいのか?」






いつものにしては しおらしい言葉に
俺は小声で問いかけた











「いいのよ 送ってもらえるのは嬉しいけど
これ以上、お邪魔になりたくないし」







小さく呟き 微笑んで、が闘神符で道を作る









「それじゃあヤクモさん 伏魔殿探索、頑張ってくださいね!」







のその声を 後ろに聞きながら













俺は、アイツに掴まれていた所にそっと手を重ねて







あの時感じた 物足りなさの答えをずっと探しつづけた








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:久々のシリーズ話の対ネタも完成です


オニシバ:今回は 本当に珍しく甘い感じに
書けてんじゃないですかぃ


狐狗狸:たまにはこーいうのも悪くないかなって
 ツンデレだから描写に苦労するね(笑)


オニシバ:…そういや さん、
風邪引いた事があったんで?


狐狗狸:あったね(シリーズ話「今年の風邪も〜」参照)


オニシバ:出来ることなら 看病しに行きたかったねぃ


狐狗狸:余計追い返されたと思うよ、色んな意味




雨ネタっぽい感じになってるかは不安です(爆)


読んでいただき ありがとうございます!