さん 今日もまたあっしに会いに来たんで?」


「…まぁ 暇だったし」





伏魔殿に来るたび


俺はオニシバの姿を探すようになっていた








理由としてあげるなら…主に迷子の時の案内役だが
最近は話し相手にもなってもらっていた





今日は 悩みを話すためにここに来たのだ












〜「ようやく聞こえた」〜











「ここ…座ってもいいか?


「構いやせんが?」





俺はオニシバのとなりに腰をおろすと
少しの間 空を見つめる







何処から切り出したらいいのだろう…とか考えていると









さん 何か相談事でもあるんですかぃ?





急に図星をつかれ 俺は少し驚いた





そんなに俺 深刻そうな顔してたか?…スマン」


「思いっきりしてやしたねぇ、まあ 話してくだせぇ
聞きやすよ」





俺は首を縦に振って 言葉を切り出し始めた










「お前…流派は確か 地流だったよな?
「そうですが それが何か?」


「俺さ…昔は地流だったけど 今は天流なんだ」





あいつの表情が 真剣になる


…当たり前か、本当なら 敵同士だもんな俺ら





「俺は流派なんか関係ないと思ってるけど…
時々、嫌な夢を見る












それは いつから見るようになったろう?












とても暗い闇の中 俺は…顔の無い奴らに囲まれている








『たとえ流派を変えようと お前がしてきた事は消えない』


『お前が向けた憎しみは お前の大切なものに返る』


『ずっとそのまま平和が続くと思うのか?』


『お前などに  宿主は守れない』








「うるさい うるさい黙れ!








そう叫びつづける俺 奴らは嘲笑いながら続ける






『どんなに力をつけようと


どんなに逃げ隠れしようと


誰と契約を結んで 信頼しようと





お前は 永遠に非力だ』











そう言うと いつの間にかがいて
奴らが二人に襲いかかる







助けようとしても 体が動かなくなって―












二人の悲鳴と自分の悲鳴で目を覚ます
















「その夢で目を覚ますたび…
と別れた、あの事件を思い出す





あの男の姿と あいつの泣き顔が頭を掠める







今なら、あの男が神流だと理解できる





目的も正体も謎だらけで、流派関係なく襲い掛かってきた―


それがどこか、昔 妖怪に襲われていたことを憎み
力をつけて滅ぼしていた あの頃の俺のように見えた








もしかしたら神流は どっちの流派にも
憎しみを抱いているかもしれない










「俺は…流派の争いから 本当にを守れるのか?
守りきれないんじゃないかって思うと…不安になるんだ」





天流と地流は昔から戦い続け、そして神流が加わって


今はまだリクやヤクモさん達や
がいるけれど、天流は途絶えかけている







俺は オニシバの目を見ていられなくなって、
地面に視線を落とす







「なぁ…俺は 本当にの側にいてもいいのか?







俺は ずっとに言えないでいる…自分の過去を





言ったら あいつを俺の下らない過去に
巻き込んでしまいそうな気がして


いたずらに不安だけをあおってしまう気がして








その事と今の事とがないまぜになって
不安だったから…



こいつに話をした





俺のことをよく知る他人のこいつに 何か助言が欲しくて








でも 結局は俺がいなくなればいいのかもしれない


隣のこいつも、それをすすめるかもしれない











取り返しのつかない事に巻き込むぐらいなら いっそ…










そう思っていた途端…










"ビシ"と音が鳴るくらいのデコピンをかまされた








痛っ 何するんだよいつもいつも」





デコを抑えながら言うと オニシバかニヤリと笑って





…やっといつもの顔になりやした


とか言うから思わず





真面目に聞いてるのか!?


と叫んだ









「アンタに沈んだ顔は似合いやせんぜ?
さんはいつもみたいに
真っ直ぐ進めばいいんですよ






「でも、俺があいつの側にいるせいで
もしあいつが取り返しがつかない事になったら…
だったら俺なんかいない方が…っ」












言葉をとぎらせた直後 俺は抱き寄せられていた





「じゃあ聞きますがね?アンタはあっしが神流だといったら
あっしと闘えやすかぃ?」





「…え?」





「アンタは本当にさんの元を離れられるんですかぃ?
あっしと闘いたいんですかぃ?
…今逃げるおつもりなら そういう事になりますがね?」












俺は 泣きながら言葉を搾り出していた










「嫌だ 嫌だ…を守りたい…アンタと闘いたくなんて無い」





「あっしも同じです 天流だろうが地流だろうが
あっしはアンタを愛してますからね」












その言葉でやっと気付いた 俺は…怖かったんだ








大切なものが傷つくのと すべて失ってまた一人になるのが







だから 自分の過去や流派のことを…言えなかった


知られる前に、傷つける前に、傷つけられる前に





逃げ出そうとしていたんだ









「それにさんなら譲ちゃんを守れますぜ?
大丈夫、アンタは強いし 流派のことなんざ
気にせず、前を向いて闘いやしょうや


…でも 今は泣いちまいましょう





その一言で すべてが救われたような気がして







俺は―我を忘れて泣いていた
















声が枯れるほど泣いて…少しずつ 落ち着いてきた





もう 大丈夫ですかぃ?


「…ああ ありがとう、お陰で だいぶ楽になった」





俺は顔を上げて 心に誓う







もう、逃げ出したりしない


まだ過去を話せなくても あいつにどこまでも着いていく











「オニシバ…ありがとう あんたの事、ちょっと好きになれそう










言って その恥ずかしさに自分から顔を真っ赤にする





するとこいつは俺の頭を撫でながら 呟いた








やっぱりアンタは その顔の方が可愛いさ


「…なんだよ 笑ってんじゃねぇよ」





少しムッとしながらも、俺は話をしに来て良かったと思った











オニシバのお陰で 俺は少しだけ強くなれたような気がした








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あとがき(と言うか楽屋裏)


狐狗狸:完成〜つか ハズッ!!125%ハズッ!!!
恥ずかしさと締め切りとパソコ不調の為
微妙につじつま合わなくなってたりします!すいません!!


オニシバ:もう少し落ち着いて書きましょうや


狐狗狸:うるさし 私はシリアス一辺倒は普段書かないんだよっ


オニシバ:というか恋愛モノが書けないんじゃないんですかぃ?


狐狗狸:メンタルダメージっ!!


オニシバ:まあ 今回はさんがあっしを頼ってくれたり
したから虐めるのはこのくらいにしときやすよ


狐狗狸:……ありがとう もうこの先頼られないかもしれないけど


オニシバ:………今の発言は聞き捨てなりませんねぇ


狐狗狸:しまった またついうっかり!


"ガアアアアアアアアアアアン!!"