「マサオミさん ちょっといいですか?」


ちゃんが珍しく 真剣な顔でオレを呼び止めた





「どうかしたの?ちゃん」


「最近 のことで一寸、悩んでるんですよ
だから話を聞いて欲しいかなって」









これも珍しい事だった 悩み事を滅多に話そうとしない
ちゃんが わざわざオレに頼み事をしてきたのだ





いつもみたく "ヤクモ様"を持ち出さなかった事も嬉しくて







「勿論聞くとも、じゃあ立ち話もなんだし座ろっか☆


「そうですね…って何かナンパされてるみたいなんですけど」


「え〜気のせいだよ 気・の・せ・い♪





オレとちゃんは 適当に座る所を見つけて
並んで座っていた









「そういえば…ちゃん本人はどうしたの?」


いつものように お使い行かせた後お留守番です〜
マサオミさんも、キバチヨ君がいないじゃないですか」





彼女にそう返され オレはアハハと笑いながら







「そりゃそうだね、実はオレもキバチヨ留守番させてるんだ」


「ならお互い様ですよ〜ていうかキバチヨ君
お留守番させられてて寂しくならないんですか?」







それはちゃんにも言えるのだが、そこはまぁ置いとこう







「前はよく寂しいって言ってたから、最近は知り合いみたく
伏魔殿を散歩させてたりするよ」









軽い感じで言ってるけれども、実はこれ
気力と実力の伴ったコンビでないと出来ない芸当なんだな☆













〜「開いたままの距離」〜













いつもみたいに雑談を交わして、本題に入る







が契約したときから ずっと
気になってたんですよ」





さっきまで明るい感じだったちゃんの調子が
その一言から少しずつ、湿っぽく変わっていく









「前に別の人と契約していた事も 話そうと
してくれてなかったし、更にその前、
自分がどんな事をしてきたのかも…言わないんです」


「けど、前の人の事とかは もうお互い知ってるんだよね?」





オレはまだ会ったことはないけれど、ちゃんと
ちゃんがその人と会っていて 仲もいい

割とよく聞かされていた







「ええ…でも」





一瞬 オレの隣にいる彼女が、弱々しく見えた







 いつまで経っても自分の過去を話そうとしない
あたしの過去を聞こうともしないんです」





ちゃんは そこで一呼吸置き







「…まぁ 過去を話さないのはお互い様なんですけどね」





と言って、少しだけ辛そうに苦笑する









「たとえどんな過去があったって それはただの過去だから
あたしは気にしないのに…」













軽く 彼女はそう言うけれど、その言葉が彼女なりの
強がりである事をオレは知っていた







ちゃんの前の式神がいなくなって
ちゃんと会うまでの間、


彼女の心が虚ろだったのを幾度となく見かけていたからだ











ちゃんは…それが辛いのかい?





そう聞くと、彼女は 首を少し傾けつつ







辛いっていわれれば…辛いです 本人にその気がなくとも
本当は信頼してないんじゃないか、って思って…」












そんなに不安そうな顔をしないでくれよ









いつもみたく"ヤクモ様"のことを考えている
元気なちゃんに戻って欲しくて











「きっとちゃんだって 君の事を信頼しているさ
もう少し時間が経てば、いずれ話してくれるよ」







なんて、気休めでしかない事を言ってしまう









「…話してくれると思いますか?」





おずおずと聞くちゃんを元気付けようと
オレは無理やりに笑顔を作って それに答えた







ちゃんは 彼女の事を信頼してるんだろ?」





「はい、短気で意地っ張りで
すぐに落ち込む駄目な子
だけど
とても優しくて何に対しても一生懸命で強い子ですから」











何だかんだ言って普段こき使っていながら
やっぱり信頼してるんだな、なんて思いが頭を掠めた







「それなら それでいいじゃない…
君達の過去に何があろうと
今の君達が信頼しあった相棒なんだから」





「そうですね…そうですよね?


その言葉に やっと彼女に明るさが戻った







ちゃんのその姿を見て、ようやくオレはホッとした











ああ、やっぱりそうでなくちゃ君らしくない















「マサオミさんと話せてよかったです、
また何かあったらその時はよろしくです」





嬉しそうな笑顔でちゃんは家へと帰っていった











一人 オレだけがその場所で座り込んでいる









オレは 君に対して大した事が出来ない





けれど、君の負担を軽く出来るのなら…







君の笑顔を見られるのなら 何でもしたいと本気で思う





「例え…距離が縮まる事が 無くてもな」


誰にともなくそう呟いた








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あとがき(と言うか楽屋裏)


狐狗狸:やっとシリアス書けた…と思ったら、前書いたのと
ほとんど変わらないって話…ゴメンナサイ皆様(謝罪)


マサオミ:てゆうかさ〜色々ツッコミ所あるけど、まず
オレ達が話し込んでたのはどこなんだよ(汗)


狐狗狸:特に決めてないけど…多分公園とかじゃないの?
そこらの


マサオミ:Σ軽っ ずいぶん適当だな…;


狐狗狸:うん、場所より"二人で過去を交えた話"って
所を重点的にしたかったから そこはお留守になったの


マサオミ:まぁ…それなら駄文なとこにも目をつぶるよ
ちゃんに悩みを打ち明けてもらえるなんて滅多にないし


狐狗狸:ありがとう 今度はちゃんとシリアス…いつ書くかなぁ?
マサオミ:オイ!(裏手ツッコミ)