そろそろハロウィンがやってくる、秋のある日





天神町にすむ闘神士のちゃんと
その式神のちゃんは


たくさんのパンプキンパイに囲まれて困っていました







「…なぁ、これ作り過ぎだよな 明らかに」


「そんなの見ればわかるでしょ〜」





ちゃんはむぅっとホッペをふくらませて
ごきげんナナメに言いました





「いくらハロウィンだからって
張り切りすぎたからこうなったんじゃん!」


「お前だってリュージから半端なく
カボチャもらって来ただろが!」


「まさかあんな沢山くれるとは思わなかったもん!」







どうやら二人がパイに囲まれているのは


おすそ分けにたくさんのカボチャを
もらったからのようです





おうちのゴハンで食べ切れなかったのでしょう


のこっているカボチャを一気に消費しようとして
たくさんのパンプキンパイができたのです







「ねぇ、こうなったら このパンプキンパイ
お裾分けしに行こうよ」





ちゃんの呟きに、ちゃんも頷いて





「…そうだな、もう俺らじゃ食い切れねぇし」







そうして 二人はそれぞれ持てるだけ
パンプキンパイを持って出かけました











〜「南瓜の始末」〜











「少し多く持ちすぎたかな…でもアイツなら
結構知り合い多そうだから何とかしてくれるハズ」







パイの入ったふくろを重そうに持ちながら
ちゃんが道を歩いていると





向こうから知っている人がやってきました







「何故こんな所にいる…また迷子にでもなったのか?」


は一緒ではないのか?』







地流闘神士のユーマくんと、式神のランゲツさんです







「別に ん家に行くだけだ」









というのは、ちゃんが
ちゃんの前に組んでいた闘神士







とてもキレイでやさしいけれど


すこし親バカなのがたまにキズ、の女の子





今でもときどき会ってお話をしたりするくらい
二人はとてもなかよしなのです







パンプキンパイもちゃん直伝レシピです









「それよりお前らは 任務の途中じゃねぇのか?」


「今回は非番だ、何もない日に自由に
外をうろついていたらおかしいか?」


「へぇ〜それはそれはうらやましい こちとら
休む間もないのにヒマそうでうらやましいぜ」


「お望みなら、この場で決着をつけてやろうか?
もっとも闘神士不在の式神など恐るるに足らんが」





立場のためか、それとも単にウマが合わないのか





ユーマくんとちゃんは微妙に
仲がわるいみたいです







けれどもちゃんは、相手の売りコトバを
買おうとしませんでした





なにかを思いついたように そうだ、と呟いて







「…どうせ会ったのもなんかの縁だ
お前らにも、これやる」







ふくろからパイを二つ取り出して、
ユーマくんへと手渡しました







「何だコレは?」


「見ての通り、パンプキンパイだ
言っとくけどおかしなモンは入ってねぇから じゃ」





つっけんどんにそうまくし立てると、


ちゃんは二人の間をすりぬけて
ふりかえらずに進んでいくのでした









「何だというんだ 一体」


『珍しいこともあるものだな』







二人は 不思議そうにちゃんのうしろ姿と
もらったパイを見つめていました











「あれ…?この道、なんか違うような…?」





記憶と微妙にちがう風景にとまどうちゃん







「ヤッホー!!!」







そこに陽気にさけびながらキバチヨくんに抱きつかれ
ちゃんはとてもおどろきました





「おわあぁぁぁっ!?」


「そんなにビックリしなくていいよ、僕だよ僕」


「いや驚くだろ!つーか離れろっ!!」





耳まで赤くなりながら、ちゃんは
必死にキバチヨくんからはなれました







「…で、何でキバチヨがここにいるんだよ
マサオミの奴は近くにいねぇのか?」





問いかけに キバチヨくんはアハハと苦笑いします





「それがねー妖怪をバスターするために
僕を降神したのはいいんだけど…」









キバチヨくんの話によると







妖怪をたおしたあと、ぐうぜんにも
ちゃんがどこかへ行くのを見かけて







キバチヨくんをほったらかして
どこかへ消えてしまったらしいのです









それをきいて、ちゃんはあきれてしまいました





「なんじゃそりゃ、自分の式神その場に放置って
…闘神士の自覚あんのか?」


「アハハ がそれを言うのは
色々とマズいんじゃない?」





それもそうか、とちゃんは思いました







ちゃんも、ふつうの闘神士では
やらないようなことを色々行っているからです







「そんなわけで、がどこに行ったのか
知ってたら教えてほしいんだけど」


「ああ、アイツ リクん家行くっつってたから
多分太刀花荘じゃねぇか?」


「リアリ?ならマサオミくんもそこに来るかも
サンキュー!」





明るく言って去ろうとするキバチヨくんを引きとめ





「待てよキバチヨ、お前にもこれやるから持ってけ」







ちゃんはパンプキンパイを差し出しました







「ワォ!本当にサンキュー !」


「じゃ、俺もう行くから またな〜」


「グッバイ 気をつけてね〜」











大きく手をふったキバチヨくんと別れて







それからちゃんのおうちを目指して
いっしょうけんめい歩いていたのに









「…どこで間違えたんだ!」







ちゃんは、伏魔殿という
べつの次元にある場所を歩いていました





おまけにもどろうとしたら 妖怪の集団に
囲まれてしまったようです







「ったく俺もよくよく運がねぇな!!」





おそいかかる妖怪を、ハリセンでたたき
あるいは火術やケリなどでおいはらい


なんとか囲みを突破しようとしています









ふだんならこの程度の妖怪はなんでもない
ちゃんなのですが





パイが台無しにならないよう守りながらだと
やっぱりすこし苦戦するみたいです











すると、とつぜん横から爆発がおきて
妖怪たちがふっとびました







さっそうとちゃんの前にあらわれたのは
伝説の闘神士 ヤクモさん







「大丈夫かちゃん!」





どうやらさっきの爆発は、手に持っている
闘神符を投げたみたいです





「ちょうどいい所に来てくれた、悪いけど
こいつらを倒すの手伝ってもらえます?」


「ああ もちろんだとも!」







ヤクモさんの助成のおかげで 囲んでいた妖怪は
あっという間にいなくなりました







「助太刀してもらえて助かりました、
本当にありがとうございます」





深々と頭をさげるちゃんに ヤクモさんは
苦笑しながらも軽く手をふって言いました







「たまたま通りがかっただけさ、帰り道は
あっちをいけばいいから」


「スイマセン色々と…
そうだ、これ受け取ってください」





ちゃんはパイを六つ取り出して
ヤクモさんに手渡します





「ありがとう…しかし、こんなに
パイをもらっても食い切れないぞ?」


「後の五つは ヤクモさんの式神の分ですよ」







ああ、と納得し ヤクモさんは笑いました







「ありがとうちゃん 気をつけてな」


「はい」











ヤクモさんともわかれ、おしえられた道を
ひたすら進むちゃん









…けれども 元の場所にもどるどころか







よけいに深く迷い込んでしまったようです









「っとに 自分で自分が嫌になりそうだ…」







その場でガックリと手をついて落ち込んでいると







「年頃の乙女が、何やってんですかぃ」







ききなれた声がちゃんの頭上から
ふってきました





そばには、これまた見覚えのある二本の足







「ほっとけよ、お前に関係ねぇし」





顔を上げることなく そっけなく
相手に言いかえすちゃん





「関係なくても、気にはなりやすよ
カボチャのパイなんて持ってどうしたんで?」


「なっ…なんでわかんだよ」







そこでようやくちゃんは顔を上げました







「そりゃ、あっしは犬ですから」





口のはしをニッと吊り上げたオニシバさんに





「そういやそうだったな」







そう呟いて、ちゃんは立ち上がりました







「大方、そいつを運んでて迷ったってトコかねぇ」


「悔しいけど当たりだ んトコに
持ってくつもりだ」


「おや、あっしの分じゃないんですかぃ?
さん」





いつもと変わらない口調でたずねるオニシバさん


ちゃんはそくざに首を横にふります





「違ぇよ…お前に渡しに来たわけじゃねぇし
残ってるパイは もうこれだけだ」







とたんに、オニシバさんから笑みが消えました







「…本当に?」


「くどい」





短くこたえるちゃん







でも、サングラス越しの悲しげな視線は
ずっとちゃんを見つめたままです









「…わーったよしつけぇな!
やるからありがたく食え!!」





いたたまれなくなったらしく、ちゃんは
諦めてさいごのパイを差し出しました







「ありがとうございやす、
じっくり味わわせていただきまさぁ」







うれしそうに笑うオニシバさんに、白々しいと
悪態をつきながらも





まあいいか、とちゃんは思いました







の分のパイを譲ってやったんだから
帰り道はきっちり案内しろよ?」


「承知してやすよ さん」








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:今回は童話風に進めてみました〜


ユーマ:って…この文はの方の話でも
言っていただろう


ランゲツ:使い回しをするとは、貴様も落ちたものだ


狐狗狸:こっちはこっちで辛辣な言い方だなオィ


キバチヨ:と絡めたのはいいんだけどさ〜
ストーリーはかなりメチャクチャだよねぇ


狐狗狸:笑顔で追撃もナシよ!(泣)


ヤクモ:オレの出方もかなり唐突だしなぁ
自分で言うのもなんだが、都合よすぎないか?


狐狗狸:正義の味方っぽくしてあげたんだから
文句言わんといてくださいよ!


オニシバ:…久々だってぇのに、
あっしの役回りがアレなのは解せねぇなぁ


狐狗狸:銃口突きつけるのもナシだから!
ハイ今日はこれにて解散!!




投げやりかつグダグダなあとがきで
本当にスイマセンでした