そろそろハロウィンがやってくる、秋のある日
天神町にすむ闘神士のちゃんと
その式神のちゃんは
たくさんのパンプキンパイに囲まれて困っていました
「…なぁ、これ作り過ぎだよな 明らかに」
「そんなの見ればわかるでしょ〜」
ちゃんはむぅっとホッペをふくらませて
ごきげんナナメに言いました
「いくらハロウィンだからってが
張り切りすぎたからこうなったんじゃん!」
「お前だってリュージから半端なく
カボチャもらって来ただろが!」
「まさかあんな沢山くれるとは思わなかったもん!」
どうやら二人がパイに囲まれているのは
おすそ分けにたくさんのカボチャを
もらったからのようです
おうちのゴハンで食べ切れなかったのでしょう
のこっているカボチャを一気に消費しようとして
たくさんのパンプキンパイができたのです
「ねぇ、こうなったら このパンプキンパイ
お裾分けしに行こうよ」
ちゃんの呟きに、ちゃんも頷いて
「…そうだな、もう俺らじゃ食い切れねぇし」
そうして 二人はそれぞれ持てるだけ
パンプキンパイを持って出かけました
〜「南瓜の宴」〜
ちゃんがやって来たのは太刀花荘
「あ、こんにちは さん」
「こんにちはリク君 ナヅナちゃん達は?」
たずねるちゃんに、リクくんは
すこし困ったようなわらい顔で言いました
「お買い物です、ソーマ君もどこかに出かけてて
いるのは僕とコゲンタだけなんですよ」
リクくんのとなりに 音もなく
半透明のコゲンタくんがあらわれました
『それで 何か用かよ?』
ちゃんは持っているふくろの
大きいほうをかかげて言いました
「パンプキンパイたくさん作ってきたから、
みんなに食べてもらおうと思って〜」
リクくんがかしこまったように言いました
「わざわざありがとうございます…でもみんなが
戻るまでまだかかりますから 上がってください」
「いいの?じゃあ遠慮なく〜」
おうちに上がらせてもらってほどなく
コゲンタくんが たずねてきました
『なぁ、それ作ったの まさかお前じゃねぇよな?』
コゲンタくんは、ちゃんがリクくんと
同じぐらい料理が苦手だと知っています
前に作ってもらった料理を食べたあと
とてもとてもキレイなお花畑がある川原に
たどり着いたことがあってから
ちゃんの料理も、おそれていました
「ううん あたしが作ったのはこの一個だけ
ちなみにコレは成功作なんだよ」
と、小さいほうのふくろをかかげて言います
「あとは全部が作ったものを
渡すから 気にしないで食べてよ」
「あ、ありがとうございます」
さしだされた二つのパイを、リクくんは
ホッペを赤くしながらうけとりました
リクくんとコゲンタくんは さっそく
もらったパンプキンパイを食べました
「あ…これ、すごくおいしい…!」
「ホントだ ウメェなこれ」
口をおさえながらそう言うリクくんのとなりで
パイをパクパクと口にはこびながら
コゲンタくんもそう答えます
「でしょ?なんたって手作りだもん」
ちゃんはもうイヤと言うほどパイを
食べていましたから、お茶だけをのんでいます
「おいしいパイを持ってきてくださって
ありがとうございます、さん」
「いえいえ どーいたしまして〜」
「何食べてはりますのん!?」
パシーンといきおいよくフスマを開けて
部屋に入り込んできたのは
ナヅナちゃんの式神の ホリンちゃん
「あ、ホリンちゃん」
「ズルイやないの、うちがお菓子に目がないんは
みなさん知ってはりますやろ〜」
ビックリしている二人をよそに、ちゃんと
ホリンちゃんはふつうに会話を続けています
ホリンちゃんの後ろから、ナヅナちゃんが
あわてたように現れました
「ホリン どうしたのですいきなり…
あら、さん こんにちは」
「こんにちは〜ナヅナちゃん
今日はみんなにお菓子のお裾分けしに来たの」
はい、とちゃんはパンプキンパイを差し出します
ホリンちゃんはうれしそうにうけとりましたが
ナヅナちゃんは、困ったように首をふります
「いえ、西洋のお菓子など…」
「でもこれ スッゴクおいしいんだから
食べて食べて食べて〜!」
やんわり断りつづけていましたけれど
ちゃんの押しの強さと、リクくんたちの
説得に勝てず ナヅナちゃんもパイをうけとりました
「…カボチャのパイも 中々おいしいのですね」
「でしょ?気に入ったなら今度作り方も教えるね」
「ナヅナはん ぜひとも覚えてくんなまし!」
そこにただいまー、と声がして
ソーマくんが帰ってきました
「みんなしてなに食べてるの?」
「こんにちは〜、ソーマくんも
パンプキンパイ遠慮せずに食べてね」
出会いがしらにいきなりパイを渡されて
ソーマくんは すこし面食らいました
「え、あ、ありがとう さん」
「どーいたしまして」
ソーマくんはあんまり野菜が好きじゃありません
けれど、もらったパンプキンパイは
とてもおいしいと思っていました
みんなでパイを食べているところに
勝手口のほうから大きな声がしました
「ようリク、野菜持ってきたぞー」
リュージくんが 野菜をとどけに来たみたいです
「おっ、そのカボチャパイはもしかして」
「その通り〜リュージ君から死ぬほどもらった
カボチャで出来てるよ 本当にありがとね」
ニッコリと笑って ちゃんはリュージくんにも
パンプキンパイを渡します
「そうか、オレのカボチャで作ったなら
うまいパイが出来ただろ」
皮肉もものともせず、明るく笑って
リュージくんもパイを食べはじめます
「まーたしかに おいしいカボチャだけどね」
「あはは…」
「やっ、みんな何食べてんの?」
なんの前触れもなく現れたマサオミさんに
みんなはビックリしてしまいました
「「マサオミさん!?」」
「テメッ 毎度毎度どっから沸くんだよ!?」
コゲンタくんがどことなくケンカ腰になります
おなじ天流とは言っているけれども、素性が
わからない とても怪しげなお兄さんだからです
「しっつれいだな〜人を害虫みたいに」
「害虫です!地流のもの以上に怪しいことこの上ない!」
「お前 それどーいう意味だよ!!」
ソーマくんとナヅナちゃんが口ゲンカをはじめたので
間にリュージくんが入って 二人をなだめます
「まーまーケンカすんな、野菜でも食って落ち着け」
「リュージ君 それ火に油注ぐと思うよ?」
ちゃんは他人事みたいに言いました
「さんから パンプキンパイを
おすそわけでいただいたんですよ」
「そうなんだ〜じゃあオレにもちょーだい」
笑顔でパイをねだるマサオミさんに
「ゴメンなさい マサオミさんの分までないんですよ〜」
ちゃんは笑顔で言い切りました
あからさまにヘコみまくるマサオミさんを
哀れと思ったのか、コゲンタくんが言いました
「その一個残ってるやつをやりゃいいじゃねぇか
今回は上手く出来たんだろ?」
「ダメっ、これヤクモ様の分だもん!」
「ええええええええええぇぇぇぇ…」
地の底からひびくような声を出すマサオミさん
けれど他のみんなはどこか納得したような
まなざしをのこったパイに向けています
ちゃんがヤクモさんを好きなのは
だれもが知っていましたからね
「…運が悪かったと思って諦めなよ
それか誰かにパイをわけてもらうとか」
淡々とつぶやくソーマくんにマサオミさんは
ブンブンとかぶりを振ります
「ヤダッ オレだってちゃんから
パイをもらいたいっ!」
そういって聞かず、他の人からのパイは
まったく手をつけようとしません
呆れたように見やりながらも、ナヅナちゃんは
ちゃんにたずねます
「新しく作ることは出来ないのですか?」
「作ろうにももうカボチャが無いもん」
その一言に リュージくんが目をかがやかせます
「カボチャが無い?なら新しく持ってくるぞ」
「お断りします!」
けれど、ちゃんが断ると
すぐにションボリと落ち込んでしまいました
「あの…さん、お気持ちはわかりますけれど
せめて少しだけでも 分けてあげられませんか?」
やんわりと リクくんがいいました
ちゃんはしばらく悩みました
けれど、悲しそうなマサオミさんを
見ていられなくなったようで
「…仕方ないなぁ、じゃあ マサオミさんにあげますよ」
一つのこっていたパイを差し出しました
「え…いいの?」
「珍しく成功したあたしの手作りなんですから、
味わって食べてくださいね?」
ほほえんだちゃんに、マサオミさんは
コクコクと何度もうなずきながらパイを受け取りました
「ーん、ホントだ おいしい!」
「でしょ?あたしの渾身の成功作ですから」
マサオミさんはうっすら涙くみながらよろこんでいます
「ありがとうちゃん 本当にありがとう」
みんなも、どこか嬉しそうにしています
ヤクモさんにあげるパイが無くなってしまったけれども
幸せそうなマサオミさんを見て これはこれで
良かったのかも、とちゃんは思ったのでした
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あとがき(というか楽屋裏)
狐狗狸:今回は童話風に進めてみました
コゲンタ:前半、の文と全く一緒だよな
明らか手抜きじゃねぇのか?
リク:まぁまぁコゲンタ
狐狗狸:手抜き言うな!こっちはハロウィンに
間に合わせようと血ヘド吐きながらガンバったんだぞ!
ナヅナ:努力の方向が間違ってると思います
ホリン:そやなぁ
狐狗狸:出ておいてそーいうこと言うか君たち!
ソーマ:久々のシリーズなのに、いつも以上に
雑な展開でやんなるよ
リュージ:もっと野菜を食わないからだ 食え!
狐狗狸:それ以上責めるなぁぁ!
つうかそんなに野菜はいらん!!
マサオミ:シリーズでのちゃんとの絡みで
なんでオレあんな情けない役回りなんだよ!
狐狗狸:だーっとれ丼!
はい今日はこれにて解散!!
投げやりかつグダグダなあとがきで
本当にスイマセンでした