戦いが終わって…あっしは式神界に戻された







戻ってから ずっと気になっている事がいくつかある










契約していた タイザンの旦那の事もその一つ


(もっとも、負けちまったから記憶は消えているだろうけど)







そして あの娘の事もその一つ







愛しいあの娘は
強くて強情で意外に脆くて、真っ直ぐなあの娘


今頃どうしているのだろう?











「また…会える時が来るでしょうかねぇ…」


我知らず 静かに呟いた時だった





探したぞ! こんなとこに居たのか、オニシバ







あっしは 思わず手前の目を疑った


目の前に 居るはずの無ぇあの娘―





六花のさんが居た












〜「必要不可欠の理由」〜











さん 何でここに居るんですかぃ!?


驚きを隠せぬまま問い掛けるが 返ってきた答えは
至極単純明快だった







予測で居場所、探り当てたに決まってんだろ?」





いや、そんなにあっさり言われても困るんですが;







「いつの間に そんな芸当ができるようになったんで?」


芸当って…お前が、予測の力のせいで迷いこむ
って俺に教えたんだろ?だから逆にそれを利用したんだよ」





そう言えば、そんな事もあったなぁ…と納得する







「しかし よくこっちに来る気になりやしたね」


こっちに現れたいきさつを聞いて尚
あっしは不思議に思っていた








実は式神界を通り抜ける事は やろうと思えば出来る事を
知っちゃいたのだが…


大抵上手くいった試しもなく 出来ても
こっちにわざわざやってくる酔狂な式神なんざ、
今まで居なかったからだ





「言っただろ 探したって、聞いてなかったのか?


「ああ…すいやせん」





眉根を寄せるさんに思わず謝る







「でも通るのに少し骨が折れてな お陰で少し疲れた
隣、いいか オニシバ?」


「え、ああ 構いやせんが?」





そう言うと さんは静かに隣に腰掛けた













そのまま互いに何も言わず 時だけが静かに流れて











やがて さんが静かに呟いた







「オニシバ…お前 やっぱり負けちまったんだな」







「……わかっちまいやしたか さん」





「何となく、な……ゴメン


「いいんですぜ アンタが気にする事はねぇ」





苦笑しながら返事を返す







「で あっしを探してたようですが…
何か用があったんですかぃ?


用って言うか
まぁ いつもみたいに話をしに来たんだけどな……」







さんの言葉を最後に 再び訪れる沈黙











無理もねぇ、お互い対立しちまって ろくに会話も出来ぬまま


しばらく会えなくなっていたから 何を話そうか
戸惑っているに違いない






それに どうやらこの娘はあっしに気をつかっているみたいで









やっと会えたのだから…笑っていて欲しい













さん 式神は船のようなもんなんですぜ?





隣にあるこの娘の顔を見ながら あっしが呟くと


予想通り、不思議そうに金色の目が見つめ返す







「…は?何だよイキナリ?」





「船は海があるから必要とされ 海が無けりゃ使われる事も無ぇ
そして 海を失った船は、必要とされる理由が無くなる
……それだけの事でさぁ」


「何だよそれ 即興で作った詩か?…でも、うまいこと言うな






苦笑しながらさんが 遠くに目を向けて呟く







「確かに俺も あいつ等がいなきゃ、ここにこうして
いられなかっただろうな…」


「でしょう…海があってこその船なんでさ さんも
あっしも、そこは変わらねぇさ」









タイザンの旦那は 今頃平和になった千年前の世界に
ちゃんと戻れているのだろうか…





共に歩いた日々も、ここにいる事も悔いはねぇ


でも、まれに 歩いた日々を名残惜しくも懐かしく 思う時もある












「なぁオニシバ…海が必要だったらさ、
俺が お前の海になれないか?





ぼんやりと思い出に浸っていたあっしを 引き戻した一言







顔を向けると この娘は真剣な眼差し
こちらをじっと見つめてた









「…いくらなんでも それは無理ってもんでさぁ」


あっしの言葉に
途端に沈んだ顔をするさん





「そうか…悪かったな 図々し過ぎだよな」


自嘲雑じりの表情に 悲しみの陰りが宿る







そんなつもりで言った訳じゃねぇのに


どうして気が付かないんですかねぇ…





……いや あっしの言葉が足りなかったな、今のは









さん、アンタはじゃなくて なんですよ」





「………え?」


またも不思議そうな 金色の目







船は風を受けて進む
風があるから船は進むんですぜ?


何も海だけが船に必要って訳じゃねぇのさ」





「それって…俺が必要だって、考えていいのか?」







何故そこで 不安そうに問い掛けるんですかぃ







やっぱりと言うか何と言うか、本気で鈍いお人だねぇ











それ以外の意味なんざ 無ぇに決まってるでしょう?
あっしにはアンタが、さんが必要なんでさ」







"共に闘う相棒"でなくても "共に歩む相方"として―





そんな思いを交えて 言葉を投げかけた















長く続いた沈黙の後 やっと、さんが返事を返す









「あのさ…俺、誰かに必要と言われた事なんか
無かったっからさ……スゲェ 嬉しい………」







照れながら微笑んだ顔が 思いを汲み取った事を裏付けていた









「オニシバ、俺 誓っていいか?…
何があってもお前の事を想い続けるって」





そう言ってさんは あっしの前に拳を突き出した









「あっしも誓いやすぜ さん…
ずっとアンタを愛しつづけるってな」





拳に拳を重ね 誓いの言葉を交わした







「…相変わらず お前って変な奴」


「お互い様って奴でさぁ…けど、
いつもの調子 戻ってきてるじゃないですかぃ
これでやっとマトモに話ができそうですねぇ」


「…そうだなって さっきまで
マトモじゃなかったのかよっ」





そして 互いに笑みをこぼした













一緒にいて 笑いあっていたい―









お互いが必要である理由なんざ それだけで十分だと感じた








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:こちらも大戦が終わった後のお話…なんて言うか
恋愛と言うよりかは友情に誓いノリだなぁ(汗)


オニシバ:何はともあれ さんが
ようやく素直になってくれたようで
あっしとしては満足ですがねぇ(笑)


狐狗狸:…でも その後の会話はやっぱ
想い続けるっつったけどベタベタされたいわけじゃねぇぞ
そこ勘違いすんなよ!
」とか
いつものテンションに戻っていってると思いますよ?


オニシバ:Σああ言う誓い方しといてそれですかぃっ!!
どこまで素直じゃないんですかぃ さんは!?


狐狗狸:それは十分承知の上でしょう?だってツンデレだし(何爆)


オニシバ:くっ…したら 仲が進展する可能性は?


狐狗狸:………(殆ど現状維持っぽいとか言ったら きっと
超絶必殺技滅ぼされてしまうに違いあるまい)




両者とも沈黙のまま 強制終了