大戦が過ぎて平和になったと言っても


伏魔殿での和を保ったり、闘神士としての
行動はそれなりにあって





前よりしょっちゅう会うワケじゃなかったけど


リク君達との縁は 相変わらず続いていた





でも、当然だけど時間はどんどん流れて


あたし達は大人へと成長していく







ちょっとずつ胸にわだかまるモヤモヤを
一番真っ先に吐き出したのは





「こうやって皆と会えるのも…あと
どれくらいなんだろうね」





湯飲みに視線を落としてたリク君だった





「なぁにリク君、しんみりしちゃって」


「そうだよ 何かあったの?」







あたしとソーマ君が不安げに訊ねれば





「ゴメン…ちょっと考えちゃってさ」





リク君はニコリと 少し寂しげに笑った





「このまま僕ら大人になったら、いずれ
会う事もなくなっちゃうのかなって」






お茶菓子を置きながら淡々とナヅナちゃんは応える





「人はいつか大人になるのですから
仕方が無いのですよ、リク様」


「わかってはいるんだけどね…どーしても
寂しいかなって」





その一言に、あたしは改めて胸の内で頷く





『現にソーマは社長としてこれから
どんどん忙しくなっていくしな』


「まあね、今だってスケジュールが秒刻みだし」


『ナヅナはんも寂しいですやろ?』


「なっ…私は別に…!」





二人が顔を赤くして 同時に押し黙る


…ひょっとして、会えなくなると
寂しい なんて考えてるのかな?





『何気にしてんだよリク、オレやお前らの
絆が 無くなるわけじゃねーだろーが』


「うん…そうなんだけどね」





いつもは元気付けてくれるコゲンタ君の声でさえ
どこか力なく聞こえる







しんみりとした重い空気を 打ち壊したくて





「それならさ!どうせなら皆で
何か想い出に残る事やろうよ!!」






あたしは積極的に提案する事にしてみた











〜「そして匣は埋められる」〜











想い出…ですか?」


「そう!何か大人になっても記念に残るような事を
やろうよ、あたし達で!!」


『なにやら楽しそうどすなぁ〜』


さん、私もですか!?」


「もっちろん!!」





いい感じに空気が活気付いてきたけれど







「記念にって、何をやるの?さん」





投げかけられたソーマ君の問いに、あたしは
思わず唸ってしまった





『って考えてなかったのかよ!』


「だってみんなで考えるものだもんこーいうのは〜
って事で一緒に考えようよ」


『いや、まず言いだしっぺが案出すべきだろ』







式神二人にツッコまれて せっかくの提案が
ダメになりかけた所で







タイムカプセルなんかいいんじゃねぇの?』





ポツリと口を開いたのは、だった





「あ!それいい!ナイス発想!!」





手を打つあたしを除いた全員が発言者に注目している


…さっきまでずっと寝てて一言も口聞かなかったから
当然といえば当然かも





『…お前、どっから話聞いてたんだよ』


の"大人になっても〜"ってあたりから』


『てゆうか タイムカプセルがどういうものか
知ってて言ってるのか?』


『バカにすんなアホウドリ、前の宿主が
やってんのを見てたから大体は覚えてらぁ』


「え、さんもやってたの!?」





それはあたしも初耳だったなぁ…誰とやったんだろ?
やっぱりユーマ君とかな?


まーそれは今度じっくり問いただすとして





いつもは一言多いけど、今回は本当に
いいタイミングで発言してくれて感謝感謝!







「って事でタイムカプセルに異論は無いかな?」





ニッコリ笑って聞き返してみれば





「はい」


「面白そう、僕も異議なし!」


「あの…たいむかぷせるとは何なのですか?」


『それは後で教えますわ ナヅナはん』





みんなも悪く無さそうな顔をしている





「それじゃあ埋める日とかも少しずつ
話し合って決めてこうか!」









こうして"タイムカプセルを埋める計画"
この日から、動き出した







…ちなみにマサオミさんにも話だけはしたけれども





「オレはその時開けに行けるかどうか
約束できないかもだから…ゴメン、ちゃん」


「いいんですよ 気にしないで下さい」





残念な顔をして断ったから


あたしも、無理には誘えなかった









出来るだけ会える人は直接会って


そうでない人は、電話とかで連絡を取って
いろいろな事を話し合った







『調べたらステンレスが耐食性に優れてて
タイムカプセルに向いてるみたいだよ』


「そういやアイツもそう言ってたな」


「へぇ〜そうなんだ、あたしお菓子の缶で
大丈夫だと思ってたよ」


『お菓子の缶じゃすぐにボロボロになっちゃうよ…』


「それもそっかー じゃあ容器はあたしが用意するね
でもフタする所はどーするの?」


『それは樹脂でコーティングすれば大丈夫らしいよ
そっちは僕がツテで取り寄せておくね』







タイムカプセルの容器はお店にある
ステンレスの水筒を買って


フタの所を樹脂で固める事に決めた







「紙は普通の紙じゃダメと聞いたので
少し値のはる特殊なモノを用意させていただきました」


ありがと〜ナヅナちゃん!
でもよく見つけられたね こんなスゴそうな紙」


「え!?それは…その…」


『ソーマはんに売ってる場所とかそりゃもう
親切に教えてもろたんどすえ〜』


「くくくく口を慎みなさいホリン!







手紙として使う紙も酸化がしにくいらしい
とっても珍しいもの







「やってみると、結構お金かかるんだね
タイムカプセルって…」


「そうですね かかったお金は
埋める日に皆で折半して払うことにしましょうか」


「それいい!リク君って本当しっかりしてるね〜!」


『アパートの管理人だからな…てか
年上のお前はもっとしっかりするべきだろーが』


「それは言ってやるなコゲンタ…あと手紙とかを
入れるんなら 乾燥剤脱酸素剤ってのを
いくつか入れとけよ?」





聞き捨てなら無いセリフに出かけた文句が
初めて聞く二つの単語に 引っ込んだ





「あの…どうしてですか?」


「土ん中にそのまま入れてたら湿気とかで
変色して 手紙の文字が読めなくなんだろ?」


「確かに…みんなで掘り出した時に
手紙が読めなかったら悲しいもんね」





言いつつあたしは感心していた





なるほどなぁ…タイムカプセルって
ただ入れ物に手紙書いて埋めるだけじゃダメなんだ


結構 細かい工夫が必要なんだな〜…って





『ちょい待て、乾燥剤と脱酸素剤ってのは
どーやって手に入れんだよ?』





あたしが聞く前にコゲンタ君が、さっきの
二つについて問いかける





「そーいうのはどら焼きとか
せんべいなんかの菓子に大抵くっ付いてんだよ」


「え、何で知ってるの?」


が言ってたんだよ あのシートみたいなのが
湿気とか取る為に入ってるからって」





あー!ひょっとしてあのヘンな錠剤みたいなのが
乾燥剤とかなんだ!!


15年生きてて初めて知ったよ、へー





「ありがとうございますさん
とりあえず僕の所でもいくつか集めてみますね?」


「そうしてもらえりゃ助かるが、無理しなくていいぜ
お菓子だけはがやたら買いk…痛ぇ!


「余計な事は言わないのっ!!」





おしゃべりな式神を持つと 苦労するよ本当









話し合いをする中で思いがけなかったのは
これだけじゃなかった





『手紙だけだと、ちょっと寂しくねーか?』


「言われてみれば…そうかな?」







それなら何か入れようかって話になって





「しかし、手紙の他に何を入れるのですか?」


『…は写真を入れてたけど』


「写真かー…みんながそれぞれ思いいれの
深い写真を入れてみるとか?」


「でも、どうせなら全員一緒に撮った写真
入れた方がいいんじゃないですか?」







カメラの事とかで色々話したけれども
そこでは結局、解決策が見つからなくて







話し合いが終わってからも





買い物に行ったを連れ戻す為に
重い足どりで外を歩きながら


しばらく一人で頭を抱えて悩んでた







「やぁちゃん、タイムカプセルを
皆でやるんだって?リク達から聞いたよ」


「ハイそうなんですよ!」


「それ…今からオレも参加できる?





そこに偶然 ヤクモ様が現れたので





勿論ですよ!あのっ、それで今
悩んでることがあるんですけど……」





OKしつつあたしは悩みをゆだねてみる







「写真か…オレも皆で撮った奴を入れるのが
いいと思うな」


「でっでも、カメラを用意したりとかが…」





ヤクモ様は柔らかく笑って、応えてくれた





「それなら オレに任せてくれないかな?」







この自信に満ちた言葉…きっといい案
思いついてくださったんだ!





はいっ!あたし、みんなにヤクモさんも
タイムカプセル組に参加したって伝えときます!!」


「ありがとうちゃん、それじゃ」







ああよかった…やっぱりヤクモ様は
いつだって頼りになる〜♪





軽くなった心持ちで あたしは足を進めた











そして、すんなりと決められた予定日に


同じくみんなで決めた埋める場所で





鉛筆で書かれたそれぞれの手紙を手に
あたし達五人は集まった







「皆の手紙は、これで全部だな
…それじゃあ最後に写真を撮ろう」





ヤクモ様の号令で、みんなは位置を決めて
埋める場所に集まる







は本当に取らなくていいの?」


「いいって、俺は前の宿主の写真に写ったし」





照れたように笑いながらあの娘は


ヤクモ様が持ってきたポラロイドカメラを
こっちに向けて構えている





降神されたフサノシン君とホリンちゃんが
お互いの闘神士を密着させようとがんばってる





それをウルサそうに見つめるコゲンタ君と


隣で笑うリク君に、ヤクモ様


あたしも つられて笑っていた







「んじゃ撮るぞー、一足す一は
「待った待った待ったぁぁぁ〜!!」





シャッターが押される直前 駆けて来たのは…





『マサオミ(さん)!何でここに!?』





参加しないって言っていたはずなのに…!





「ヤクモから、"写真撮る"って聞いたから…
飛んできたんだよ」





息を整えながらマサオミさんは


いつものように爽やかに、笑って見せた





「手紙を受け取る事は出来なくてもさ
…皆の思い出に、加わる事は出来るだろ?







想い出を残したくてワザワザ時を渡ってくれたのと


こんなに急いで走って来てくれた事が





あたしには、十分なほど嬉しかった







「そうですね〜じゃあマサオミさんも一緒に
写真とりましょっか!いいよねみんな?





顔を見れば 嫌そうな人や式神は一人もいない





「ええ、僕は賛成です」


「僕も特に反対するつもりは無いよ」


「私はその…様やリク様やヤクモ様が
良いと仰るのでしたら…」


「まあいいじゃないか、これもきっと
いい想い出になる…そうだろマサオミ?」


「今回ばかりはその通りだぜヤクモ」







マサオミさんと降神されたキバチヨ君も入れた
メンバーで撮った集合写真を


水筒に入れて、しっかりとフタをして





少し深めに埋めて…目印をつけた







「十年後に、みんなでここに集まって
一緒にタイムカプセルを開けようね!」



「ええ…そうですねさん」


「僕も皆と集まるその日が、楽しみだよ」


「…それまで、無事だといいですね」


「きっと大丈夫だよ」


「十年後もこうして皆が会えるように
オレも、元の世界で祈ってるよ」







片手をそれぞれ重ね合わせ あたし達は


…あたしは、未来の約束に願をかける





"みんなで十年後 またここに来れますように"








――――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:これにて陰陽大戦記の夢小説は終了
相成ります…ご愛読ありがとうございました


リク:終わり…なんですか?


狐狗狸:ええ、寂しいですが決めていましたから


コゲンタ:しっかしよくここまで書けたよなぁ
ダメダメ文も年が続きゃあ大したもんだ


ソーマ:始めはオンリーサイトだったもんね、ここ


フサノシン:しかも管理人二人でやってたよなー


ホリン:まぁ別館立ち上げやら色々ありましたが


ナヅナ:お疲れ様でした(お茶出し)


狐狗狸:あ…ありがとう


ヤクモ:ポラロイドカメラの部分は正直
どうなんだとか色々ツッコむ所はあるが


マサオミ:まーここは大目に見ておくとしますか


狐狗狸:本当、君達もお疲れ様…ジャンルとして
終了しても陰陽への愛は変わんないよ(ホロリ)




学パラ等で突発的に細々と書く事はあると思います


が、ジャンルとしてはここで掲載を終了します
(作品はそのまま残しますが)




さん そして読者様、今まで読んでいただいて
本当にありがとうございました!