…伏魔殿に入ってから 背後に視線を感じる





何度か後ろを振り返ってみても、気配がするけど
誰かの姿は見えない










さっきから 気になって気になってしょうがない





地流の闘神士だろうか?それとも 妖怪とか?









「…隠れてるのは解ってるんだよ さっさと出て来たら?


後ろに向かって声をかけるも、返答はなし







仕方ないので 闘神符"網"を気配のする木の陰に投げつけた





きゃあっ!!


網が出現して、相手を捕らえ…ってあれ?
今の悲鳴 女の子の声?







発動したあたりまで近づくと 網に絡まった茶髪の女の子
どうにか抜け出そうともがいていた


驚いた…まさかこんな女の子がオレの後をつけてたのか











〜「食い合わせ最悪?」〜










「ごごごごごご ごめんなさいっ!!


彼女はオレの姿を見た瞬間に さっきまで隠れてた木に
背をへばりつけて慌てて謝る





「さっきから オレをつけてたのって…君?


なるべく笑顔で問いかけたのだが 目の前の女の子は
顔を強張らせて答えない







白い箱を胸の前で抱え込んだまま 警戒している







「なんで オレをつけてたの?


さらに一歩近づくと 彼女は身をすくませる









網を取ったら…話してくれるか?」


もう一歩近づいて 手を伸ばした途端





「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい
ごめんなさい!!!」



彼女がしゃがみ込んで謝りだした







まいったな…どうやら 完全に怯えている









「まあまあ落ち着いて…そうだ」
と オレは手にしていた袋から牛丼を取り出した





これでも食って 話し合おうじゃないか、な?











女の子は黙り込んだまま牛丼を見つめていた













あまりにも沈黙が長いから 牛丼はちょっとまずかったかな
なんて考えてしまった







"グウ〜〜〜〜〜〜"





痛いくらいの静寂を裂いたのは 彼女のお腹の音だった


瞬間 女の子の顔が赤くなる







「食べるかい?おいしいよ?





女の子の前に牛丼をつきつけると


「…いいんですか?ありがとうございます」







彼女は警戒心を解いてくれた





……なんか 食べ物で釣ったみたいで気が引けるなぁ















『ごちそうさまでした』









オレ達二人は 牛丼を食べ終わると両手を合わせた







「牛丼美味しかったです ありがとうございます」


女の子は先程までとは打って変わって 明るくお礼を言う





「いえいえ 所で、何でオレの後をつけてたの?


「実は あたし天流の闘神士なんですけど…
伏魔殿で修行してたら式神とはぐれちゃって……」





ケーキ屋さんの帰りだったのに無理やりつれてこられて、と
彼女は苦笑しながら付け足して





「困ってたら あなたを見かけたので…道を聞こうかなって」


「え、それなら普通に声かけてくれればよかったのに」


そう言うと 彼女は少し眉をひそめて







「だって…天流なのか地流なのかわからなくて、怖かったんです」







どうやらこの女の子は 闘神士としてはまだ新米みたいだ


…でも ここに来てるって事は、実力はあるのかもしれない





「安心していいよ オレは君と同じ天流だよ」


「よかった〜あたしすっごい心細かったんです〜
さっきは本当 ごめんなさい」





ニコニコしながら安堵する彼女 この姿を見ていると
さっきまでのやり取りがウソのように思える







「所で あなたの名前って何ですか?」


「そういえば 自己紹介がまだだったっけな…
オレは大神 マサオミ、よろしく


「あ あたしは って言います よろしく、マサオミさん」


「よろしくちゃん













自己紹介をしてから ちゃんも
すっかりオレを信用したらしくニコニコと気軽に
話しかけてくる







「所でちゃんってまだ新米なの?」


「そうなんです〜だからあたしの式神が修行修行って
いっつも伏魔殿に引っ張ってくるんですよぉ」


「ふ〜ん そういえば契約してる式神って何族?」


「光明族ですよ?マサオミさんは?」


「オレは青龍族かな」





そういった途端 ちゃんは目を輝かせる





あの人と同じなんですか!?スゴーイ!!


……誰のことだろう?あの人って


ちゃん あの人って、誰?







「あたしも名前は知らないんですけど…前に妖怪に囲まれて
困ってた時に助けてくれたんです!青龍族を従えて
マントをはためかせながら印を着る姿がかっこよくって〜!


とまぁ 女の子らしい会話を展開させる









…正直、オレもカッコいいと思うんだけどなぁ







「そうなんだ ねぇちゃん…ケーキ 食べなくていいの?


話題を変えるために ちゃんがずっと持っていた
白い箱を指で指す







「あ!」










あわててケーキの箱を開けて 中身を確認するちゃん







「よかった大丈夫そう…でも痛まないうちに食べなきゃ…
あ、よかったらマサオミさんも一緒に食べます?





確認を終えてから ちゃんがオレを見て問いかける


「え いいの?」





さっき牛丼もらっちゃったから そのお礼にどうぞ」









箱の中身をちらりと見ると イチゴのショートケーキと
ミルフィーユ、そして 何故かプリンが入っていた





「ありがとう じゃあそのミルフィーユもらおうかな?」


そう言いながら ミルフィーユをつかもうとした途端
彼女に手をつかまれた







「ごめんなさい、ミルフィーユは式神のなんです…」


「え」


「残しとかないと怒られるから プリンにしてください





すまなさそうな顔で微笑むちゃん







……初対面には気が弱いけど、実は結構したたかなのかな


まあ仕方ない 可愛いし許してあげよう










じゃあ お言葉に甘えて








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:ケーキネタ闘神士サイドようやく終了〜


マサオミ:…何でオレちゃんを牛丼で釣ってるの?


狐狗狸:それは常日頃からドンブリ持ってるせいだと思われます(笑)


マサオミ:まぁそれはリクやちゃんに会う為の
手土産だったりするし(今回本当はアレ知人のだったけど/笑)


狐狗狸:アニメでは色んなドンブリ持ってるけどお勧めは何です?


マサオミ:そうだなぁ…って 話の論点ずれてる


狐狗狸:失礼しました(退場)