【 ― ボーナストラック 3 ― 】






「ひっ…くしゅん!




盛大なクシャミがアンダインの口から出る




「風邪を引いたのかっ?」


「バカを言うな
ちょっとクシャミが飛び出しただけだろうがっ!」


「そうなのかっ オレさまてっきり寒くてカゼ引いたから
クシャミしたのかと思ったよ」




その予想は遠くない未来に当たるだろうな


ロイヤル・ガード隊長ともあろうお方が
鼻水垂らしてチワワみてぇに小刻みに震えてるし




「なぁパピルス、やはりグリルビーに行かないか?
腹も空いてきているだろう」


「それならパスタで十分だろう?
油のレンゴクなモノばかり出すトコロはごくたまにでいいのっ!」


ロハス思考とはレベルの高いスケルトンで




ま、俺としては中々に居心地がよさそうで元の姿なら
通いつめたいトコなんだがな




「だったらニンゲン!貴様はどうだっ?
腹が減ってはいないかっ」


「ごめん、もう食べてきちゃった」




さすがにさっきピザ食った後じゃあ、店に入る気にならねぇわ




「ンガアアアアアアアアア!」


「寒いの苦手なら、セーターとか着てみたら?」




【*アナタの言葉に アンダインが
ジロリと鋭い視線を投げかけてくる】




「貴様、ワタシが風邪程度に屈するヤツだと思っているのか?」




おお怖い、そんなツラすんなよ


即堕ちまで秒読み段階ってだけだよな?


【*アナタは 首を横に振った】




そうだっ!これしきの寒さなどワタシの敵ではない!
だから貴様の余計な気づかいなんぞいらんっ!!」


「えっ、寒さって実体あるのっ!?」


「いや 寒さは寒さだろう
まあ実体があるなら倒してやるんだがな!」




ガチで言ってる上に
有言実行しちまうだろうトコロがクソ恐ろしいな




「何にでも戦いをいどむんだね
こわくないの?」


「ふん!害のある相手に怖がっていたら
みんなを護れんだろうが!ワタシはどんなヤツだろうが
敵ならば立ち向かうっ!そして勝つ!!


ニャハハ!そうだっそれでこそロイヤル・ガード隊長だ
さすがアンダイン!」





そういうスタンス嫌いじゃあねぇが


だったらまず、テメェの体調管理くらいはしといてほしいもんだぜ




ヒーローの風邪回が許されんのは 公式でも一度が基本だろ?




「挑むと言えば…地上には、イノシシとかいう
凶暴なモンスターがいるんだろ?」


「いるね」




お前さん程じゃーねぇけどな




「やはりな!アルフィーから教えてもらったんだ

鋭い牙!巨大な身体!弾丸のようなスピードによるタックル!!
ぜひとも一度戦って倒してみたいもんだ!!



「戦うのかっ!」


「ああ戦う!タックルなら任せろ!
ンガアアアアアアアアア!!




【*アンダインは 近くの木へむやみやたらとタックルし始めた】




うっわ、めちゃクソ揺れてやがる…


アンダインがいりゃ
ツリーや薪の確保にゃ困らなさそうだぜ、ハハハ




しっかしまぁ頑なにタンクトップスタイルを貫くつもりか…




【*アナタは アンダインの肌を見つめた】




鎧の構造はともかく


あん時のホットランドでの"追っかけっこ"
熱伝導による火傷は見られなかった




まぁじっくり眺めたワケじゃあねぇから
軽い火傷を負ったが回復した可能性もあるが




魚類系統のモンスターらしく温度変化に敏感


だがあの軽装でこの雪だらけの土地うろついてて
しもやけ起こしたっつー話も聞いた試しがないな…




一応聞いてみるか







【*アナタは アンダインがパトロールへ出かけたのを見計らって
こっそりモンスターキッドに話しかけた】




「ねえ、アンダインが雪とか氷に触れてたことあった?」


あるよ!町の北で氷投げてる犬いるだろ?
アイツがカゼ引いた時に一日だけ交代して氷投げてるの見たんだ!」




マジか 現場に居合わせたかったぜ




【*モンスターキッドは 目を輝かせて
楽しそうに語り続ける】




「ヤリとか飛ばしたりしてスゴかったぜ!
あとすっごいふるえて叫んでた!」




モンスターの皮膚組織どうなってんだ


つーかそんな面白エピソード、現実(あっち)なら
確実にSNSにムービー流れて…




SNSあんな、このゲーム内




ついでにカメラもあちこちに仕掛けてあるから
場所によってはムービー取り放題




「どうした?ハラでもいたいのか?」


「ううん、ちょっと考えごとしてただけ」


「そっか ニンゲンはサムいとすぐ具合ワルくなるって
ハナシだし、気をつけろよ?」


「わかった、ありがとう」




手放しで心配してくれるのはいいが

手のないお前さんこそ、危険なトコへ
出歩かないよう気をつけてほしいモンだ




【*アナタは スノーフルの北へ歩き出す】




さて、覗きにいっても構わねぇが


どうせなら撮影者許可の元 キレイな映像で見れた方が得だ




ついでに…ちょいと楽しいサプライズでも
仕掛けてやるか、ヒヒッ!







【*ホットランドのラボについたアナタは アルフィーに
上記のやり取りを要点だけ抜き出して簡単に伝えた】




「え、ええとその…」


「ハカセならカメラでその時のアンダインの活躍
録ってるかなって思ったんだけど」


「も!もちろん録ってるよ!

あ、いや別に変な目的とかじゃなくて
たまたま設置してたカメラに映ってたから」


「わかる、スゴい光景だから
ついついデータ残しちゃうよね」


でしょ!?彼女ったら本当にもうカッコいいんだから!
あんな大きな氷を寒さに負けずにポンポン投げちゃうし
槍で遠くまで吹っ飛ばしちゃったシーンなんて砕けた氷の欠片が…」




【*アルフィーは メガネの奥の瞳を
キラキラさせながら力説し始めた】




OH 概ね予想大当たりだったのはいいが


出来れば解説は映像と共に提供してくれねぇか?
内容が余計気になっちまうぜ




「あ…ごめんね、ワタシばっかり話して
それで ここに来たのってその…その映像が見たいからだよね?」


「それもあるけど、それだけじゃないよ」




ぶっちゃけソレだけならスノーフルにいたまま達成出来る

文章にすりゃ わずか一行




えっ?じゃ、じゃあ他の用事って?」




そこまで怯える必要はねぇだろ


主目的はアンタとの会話で合ってるさ




【*アナタは フリスクらしい笑顔で
アルフィーへこう言った】




「ウォーターフェルってさ、水辺だけどホットランドが
となりにあるからスノーフルよりあったかいトコあるよね」


「そ、そうね マグマの熱エネルギーが
程よく相殺されてるし、鱗を持つモンスターにとっては
程よい湿気が好まれてるみたい」


「さっきも言ったけど、アンダイン
寒そうなのにあったかい服あまり着ないの」


そうなの?ワタシと会う時は
結構オシャレしたりしてカッコいいのよ?」




よしよし、食いついてきたな




「そっか なら誰かから
あったかい服を渡されたら着るかもね?」


「誰かって、えっ?まさか」


「例えば、とっても仲がいい…
ハカセみたいな友達とか」


【*アルフィーは 真っ赤になった!
なんだかトマトみたいだ】




ロックヒルの死神でも放り込まれたみたいじゃあねぇか
風邪かいハカセ?




「わっわわわわわワタシが?!ふっ服っ彼女に服をっ!!?」


「そうそう、あったかーいセーターとか
きっとよろこんでムリムリムリムリ!
ワタシが作ったモノなんてアンダインが着てくれるワケ

「でも剣とか温蔵庫はよろこんでたよ?
「た、たまたま必要だったから使ってるだけだし
置いてるだけなのよきっと!」




いやぁ残念だ


あん時のアンダインの自慢っぷり、録音でもしとけば
動かぬ証拠になったろうに


…ま、出所辿られて串焼きにされちまうリスクがあるから

データあったとしても提出はできねぇがな




「でも受け取ってもらえたらうれしかったんじゃない?」




【*アルフィーは うつむいて
たっぷりと時間を置いてから答えた】




「…………うん




正直になった分 ちょいと行動する決意が湧いたのか


上がったハカセの顔はさっきよりも焦点がしっかりしてやがった




「分かったわ、ワタシ
アンダインに喜んでもらえるセーター作ってみる」


がんばって ハカセなら出来るよ」




手縫いは無理でも メカでどうとでも出来るだろうから
その辺はさして心配じゃあない




「だからあの…もしよかったら、なんだけど
もしセーターができたなら」


「もしかして、代わりに渡してほしいの?」




【*アルフィーは 顔を赤くして
首をコクコク振った】




へぇ、中々に乙女チックなことで


自分で渡しに行った方が手間が少ないんだがな




…ま、ナードなハカセがプレゼントを作ろうって
気になっただけ上々か




「いいよ」


「ありがとう…!」




【*アルフィーの 笑顔がまぶしい】







目当ての映像を見て、作るセーターの柄について
大作映画1〜2本分の時間を過ごし


どうにか納得した後に機械作りにとりかかってたみたいなんで




する事もねぇし、後日ってことでおいとました




…のがしばらく前







アレから全く音沙汰がねぇ




「まーたなんか面倒な意地張ってんのか?
素直になった方が得だろうに」


「アルフィーもああいう性格だからね…あんまり
急かしたりするのはよくないと思うよ」


「ソイツは正しい だが面白くはねぇな


「…怒られても知らないよ?




夢会話でもネタが切れるぐらいじれったかったので




こっちからラボにお邪魔してみましたー☆







「ねぇ、セーターは出来た?」


「あ、ああああのねっ…そのこと、なんだけどね…
やっぱり、やめようかなって…」


「どうして?」


「出来があまりよくなくて…そ、それに
いきなりプレゼントなんて アンダイン困ると思うの
アナタにだって迷惑かけちゃうし」




…なんとか必死に断ろうとしてるトコ悪いけどなハカセ


さっきからアンタの視線


ロフトにあるクローゼット
矢印が見えるぐらい飛びまくってるぜ?




【*アナタは クローゼットの中身を
"こっそりデータで"覗いて、キーを叩く】




「ハカセが困ってるのって…ひょっとしてコレのせいかな?」




ワザとらしく持ち上げた手にハカセが目をやった
ちょうどいいタイミングで


クローゼットから転送されたブツが現れた




「イヤアアァァァァ〜…!!」


【*アルフィーが 真っ青な顔で叫んだ】




俺の手にあったのは…セーターになるはずだった
妙ちきりんな布切れ


言っとくが俺がやったのは転送だけ


"おかしな加工"一切ナシの産地直送だぜ?




「お願いそれ返してっ!」


「説明したら返してあげる…おっと」


「きゃあっ!」




小一時間、布きれを巡り軽い攻防戦を挟んでから




「そうなの…途中まで上手く編んでたの」




観念したハカセによると


軽く目を離した直後おかしなバグが機械周りにまとわりついて


バグ自体はすぐに消えたモノの そっから機械の動きが変わり




「セーターが マフラーみたいな長さの
丈夫な布になっちゃったんだ…」


「そうなの、直そうとしたけど機械が故障しちゃって
全く動かなくなったの」




なんというか、随分と都合のいいバグだな


"どっかの誰かさん"の作為を感じるぜ




「やっぱりワタシの発明なんて役に立たないんだわ

…せっかくアナタが提案してくれたのに
こんな事になっちゃってごめんね」


「諦めちゃうの?」


「だってこんなのセーターって言えないし」


「ならセーターって言わなきゃいい」




予定ではあったかいモン無理矢理にでも着せて


反応拝んでから、雪玉ぶつけて新技開発ついでの雪合戦でも
あの脳筋女に仕掛けてやる腹積もりだったが


焚きつけた手前、ハカセを放っておくのも寝覚めが悪いし

バレたら修羅場になるからな


リカバリーとアフターケアはしてやるか




「かなり丈夫に作られてるし、セーターじゃあなく
別のモノとして渡してもいいんじゃあない?僕はそう思うよ」







【*アナタは アルフィーを説き伏せ
ゴミ捨て場にいたアンダインへセーターだった布きれを渡した】




「おい、なんだこれ?」


「アル…人から頼まれたの、アンダインに渡してほしいって」


「誰だソイツは
てゆうかなんでマットなんてワタシに渡す?」




怪しむのは当然だな、だがソイツは予想の範疇ってヤツだぜ?




「それはただのマットじゃあないよ?マットでもないけど」




【*セーターだった出来損ないの布きれを ぞんざいに持っていた
アンダインが興味深そうな顔をした】




"カンプマサツ"っていう ある国で
昔からやってる訓練に使うタオルなんだ」


「ほう…どんな訓練だ?」




食いついた脳筋ジョックに日本の知識としてみた"カンプマサツ"


上半身裸になった背中をタオルで激しく磨き
寒さに耐える身体を作る
、っつークレイジーな訓練を

さも最もらしく語ってみせれば


あっと言う間に"セーターの出来損ない"は




「身体を鍛え寒さに勝つためのニンゲンの訓練か!
ワタシに出来ぬ道理がないな!





アンダインの中で"強くなるための道具"としての価値がついた




「フフフ、見ていろニンゲン!ワタシも"カンプマサツ"とやらで
より一層寒さに負けん身体になってやるぞ!!」


「がんばれー」




…元々の狙いとはズレちまったが


雪玉ぶつけんのぐらいは頼めば出来るだろうし

身体をあっためる意味では
セーターと似たような役割も果たすからヨシ


概ねウソだって、ついちゃあいない




期待しておけ!
それと、コレを作ってくれたヤツに礼を言っといてくれ!」


「うん…」




【*アナタは アンダインのはるか後方のゴミ山に
チラリと黄色いシッポが消えたのを見た…ような気がする】




それに 楽しい楽しい"話のタネ"が出来たと考えりゃ
それ程悪い状況でもない




「なんだ?ニヤニヤして」


「なんでもないよ、大事に使ってね?」


「ああ もちろんだ!」




【*アンダインは 元気よく笑った】







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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:ほぼ期間ギリギリになりましたが、こっちも
滑り込みで間に合いました!


キッド:オイラも出られたー!よかった!!


パピルス:よかったな!ニャハハハ!!


アンダイン:よくないっ!何でこんなに遅くなった貴様!!


狐狗狸:ちょっと待って槍出さないでアンダインさん
待って待って待ってその数は無理無理無(タマシイの破れる音


アルフィー:え、どっ…どうすればいいの?コレ




読んでいただいて ありがとうございます
2019年もよろしくお願いします!