昨今、TV自体の視聴率が基本的に下り坂の傾向にある




偏向報道や規制が相次いで


そのしっぺ返しがゆっくりと
しかし確実に数字へ影響を及ぼしているのだが


頭の中身が現実と乖離している権利者や


勝手な介入だらけのTVに見切りをつけた

あるいはつけている視聴者を軽んじる製作者は


"大したことない"と根拠のない楽観視で
子供だましと現実逃避を続けてい


「おい管理人、年明け早々
そーいうクソつまんねぇ批判いらねぇから」


「にわかな批判談義は炎上のもとアル」




…さいですね、失礼しました




ともあれ減っていく数字を取り戻そうと




「インパクトのあるイケメンが
各地方のグルメとか紹介すりゃいけんじゃね?」


という感じである局が冬ごろに設立した
新しいコーナーでテコ入れを図った




メインとなる人物は結野アナのツテにより


数度に渡る拒否を経て参加した




見ておれ!
見事貴様らの局を我等の力で立て直してくれるわ」


彼女の元旦那こと、巳厘野道満




今まで俗世に関わろうとしなかった為
TVへの露出は無かったのだが


彼自身の知名度と見た目


それに験力による召喚した諸々のインパクトは申し分なく


生中継による臨場感と、出演回数の制限を
かけられたことが逆に作用して視聴意欲が高まっている




更にはダメ押しとばかりに




「道満のヤツがワシを差し置き
クリステルに借りを作るなど気に入らん」




対抗心も相まって実兄の清明まで参戦し


新コーナー"イケメン陰陽師の式神グルメ巡り"
成功を約束されたも同然


…と、企画者は確信していた




しかしながら第一回目の撮影




その理想像は脆くも崩れ去る







「オレの香川のうどんの方が長いぞ!」


「ワシのうどんの方が長い!」




二人の意地の張り合いから発展して

思惑を超えた妖怪大戦が勃発し


その回の視聴率自体は上がったものの


物理と精神、両面での被害者が多く出てしまい

企画は見事に頓挫してしまった







〜食い物と動物は数字を取る鉄板ネタ〜







「どうにか次のコーナーで挽回しないと
クリステルちゃん、何かいいアイデアとか面白い人材いない?」


「そうですねぇ…」




直接ではないにしろ企画がコケた要因を作った責任も感じ


頭を悩ませている主人を助けるべく




「そんなワケで銀時様方のお力を貸してもらいたいでやんす」




挨拶も早々に万事屋で上記の概要を語った外道丸を


対面のソファに座った銀時をはじめとした万事屋一行は
普段通りの表情で眺めていた




「企画タイトルから予想はしてたけどさぁ
それ万事屋の範疇キャリーオーバーだわ正味な話」


「局の視聴率(すうじ)を更に向こうへ
持って行ってもらうでやんす」


「どんな生々しいヒーローだよ もういっそ
オール◯イトさん呼べば簡単にプルスウルトラってくれるよ?」


「ジャンル違うのに仕事してくれるわけねーだろ!
ここ銀魂!!」





各位に怒られそうな事を口走る銀時が


体良く依頼を断ろうとする前に、彼女は先手を打った




「新春からの新コーナー企画で視聴率(すうじ)取れたら
クリステル様に協力した相手をプッシュしとくでやんす」


「任せとけ、視聴率(すうじ)アホほどとって
番組の穴も結野アナのケツの穴も救ってみせるぜ!」



「手の平返し早すぎない!?」




こうして成り行きながらもTVの新コーナー企画発案に
乗り出す運びとなり


まずは神楽が名乗りを上げた




「メシでダメならワンコで釣ればいいネ
定春なら町内一位リベンジ出来るアル」


「わん!」


「いや定春めっちゃニュースになってたじゃん
知名度なら間違いなくかぶき町内で一位だよ?」


「じゃ次は宇宙一を目指すネ」


「何段飛ばしの目標設定!?」




遥かな志を諌めつつ、新八は眼鏡を指で押し上げて続ける




「でも食べ物を通じた町の紹介とか名物ペットのコーナーって
着眼点は悪くないと思うんですよ、実績もあるし」


「だな、ベタにハズレはねぇ

ただ目新しさ…オリジナリティーがない事には
他んトコの企画と大差ねぇんだよな」


と、死んだ魚の目と常々評される銀時の瞳がキラリときらめく




そこでだ!視聴者に見てるだけじゃなく
テメェもがっつり参加できる形式にしちまうのはどうだ?」


「視聴者参加型の企画ですか!」


「番組なら珍しくもないでやんすが、コーナーでとなると
規制の多くなった今
かえって目新しく映るかもしれないでやんす」




ここでも神楽の挙手が早かった




「じゃあ定春VS視聴者のペット!」


「速攻企画倒れするわ!」


「なら定春VS視聴者!」


「それも相当難易度高くね!?
まず定春と競わせるトコから離れろ!!」





ガラリと和室の襖が開いて




ジャンケンで勝った視聴者に抽選で定春君の肉球触り放題!
これで視聴率(すうじ)も問題なく稼げるぞぉぉ!」


「アンタがやりたいだけじゃねぇかそれぇえ!
てかどっから入ってきた!」



ふはははは!明けましておめでとう諸君!
どのような形であれ日の本を変える手段があるなら
オレは協力を惜しまん」


「テメェのは我欲だ帰れヅラ」


ヅラじゃない桂だ!
こら押すな話はまだ途中だぞ銀時ぃ!!」


乱入してきた桂を窓から追い出す新年の初攻防が始まり







…そこへ戸を叩く音が響く




「頼もう、誰かおらぬか?」


さんだ、はーい開けまーす




玄関へ行く新八に続く形で定春も
年明けの来訪者を出迎える




「新年明けましておめでとう
今年もよろしくお願い申す」


「明けましておめでとうございます
こちらこそよろしく」


「わん!」




戸口にて日本人特有の挨拶を交わし




「わざわざ挨拶回りにお越し下さって
ありがとうございます」


「兄上が差し入れで菓子折りを持たせてくださったゆえ
お登勢殿達とお主らへ渡しに赴いたのだ」


「食いモンアルか!」




やけに騒がしい部屋の入り口から神楽が顔を出すも


はブレずに無表情で頭を下げて挨拶する




「おお神楽、明けましておめでとう」


あけおめアル!いいトコ来たね
中入ってくヨロシ」


「む?ならばお言葉に甘えてお邪魔しよう」




そうして闖入者への初攻防は一時中断され


新たに一名加えて
新コーナー企画発案が再スタートされた




「TVの企画か…そちらも大変だな」


「お前TVほとんど見ねぇじゃねぇか」


「ニュースくらいは見るぞ?
あと兄上が"どらま"を好むゆえ軽く画面を」


「そっちは見た内に入りませんから」


良い事だ!今の世は歪んだ情報で溢れておる…
やリーダー、新八君のような日の本を担う若者が
下劣な大人の良からぬ情報で歪んだ思想を植えつけられるのを
黙って見ているわけには」


「オメーも下劣な大人だって事忘れてねぇかヅラ?
どーせいい◯もの人妻特集で自分の子種植えつけてぇとか考え」


「女子いるんだから自重してぇえ!」




ど直球な下ネタへ過敏に反応を見せる新八だが


肝心の女性陣は実に冷ややかなものだ




下心満載で企画考えてる銀ちゃんに言う資格ないアル」


「銀時、男は植物なのか?」


とは昔から言われるでやんす」




外道丸の一言に

緑目がちろりと側に寝そべっていた定春を見やる




「定春の同胞か」


そう言う事だよく気づいた
男は皆 気高き狼であるべきなのだ、なぁ定春君」


自信満々に近づいた桂の頭へ

嫌そうな顔をした定春が強烈な犬パンチを食らわせ


そのまま相手の頭を床へと叩き付けた




「一緒じゃねーヨ ダ侍


「すまぬ、今のは私の失言だった」


「流れるようにオレを見て罵倒すんな小娘二人!
そういう趣味ねーから!Sだから!


「それにその芸風はクリステル様の十八番だからNGでやんす」




一部には受けそうな趣向ではあるが


放送するにはアウトめなコーナー設立が
人知れず阻止されたようだ




そこで玄関を開けて




困ってるようじゃな?
ならば余が助けてやらんでもないぞ?」




あからさまに定春用であろう
骨を持ったハタ皇子がじぃを引き連れやって来る




「ナチュラルに不法侵入するのやめていただけますか?
皇子でしょアナタ」


「幸い余は自分の番組を持っておる」


「ガン無視アルなバカ皇子」




ツッコみに若干頬が引きつってはいたが


本誌の活躍込みで強くなったメンタルでスルーしつつ
皇子は意見を押し通す




「ズバリ!"出張!ハタ皇子の動物王国"

これで局の視聴率(すうじ)も増えて
余も番宣になるWIN−WINの方程式じゃ」


「汚い大人の計算入れてきたァァ!」




だがしかし




「ぶっちゃけ皇子(バカ)の番組も打ち切り寸前で
こっちも崖っぷちなんだよね」


「こっから華麗に起死回生してみせるわぁぁ!
つか諸々ぶっちゃけ過ぎだろ!





やはりじぃのセリフは見過ごせず


つかみ合いからの殴り合い宇宙(そら)2018
万事屋室内にて始まった




「大人は大変だな」


「そうなんだよ、分かってくれる?
毎日毎日バカの身の回りの世話してるのに
存在忘れ去られてる大人の寂しさ」


「生憎兄上以外に興味はない」




無表情でスッパリ言い切られて固まったじぃの鼻っ面に
右ストレートを決め


勝者となった皇子が鼻血を垂らし


目元にアザを浮かべながらも自分の発案の続きを話し出す




「毎回ゲストとなるペットを視聴者より募集をかけ
紹介する事も検討しておる!
無論、記念すべき一匹目はそなたじゃ




言いつつ骨を定春へと差し出したハタ皇子は


頭から食いつかれ、勢いよく振り回された
挙句にぺいっと放り投げられる




「「「あ」」」




弾みで骨が放物線を描いて宙を舞い


本能でそれを追ってしまった定春と


投げっぱなし皇子の被害から回避したが衝突してしまい




結果…ちょっとした事故現場が万事屋室内に再現された




様の事故を毎度放送するのも
視聴者の目を引けそうでやんすね」


「ンなモン最初のうちだけだって

年々レパートリー減ってっし飽きられて
そっぽ向かれんのがオチだろ」


「そん時は別の人を事故らせれば」


オレは願い下げだぞ、つーか以外だと
三途から帰れねぇだろが普通」


「淡々と下衆い会話してるぅぅ!」


「まーの三途行きも
すっかり定番コーナー扱いアルからな」




しれっと安全地帯に避難していた二人をよそに
新八と神楽が彼女を回収


そのまま一通りの手当てを行った




…ちなみに定春は和室の襖をぶち破り


キャッチした骨をかじってご満悦の模様




「騒いでお腹減ったアル、定春おやつ食べてるアルし
私もが持て来た差し入れ食べるヨ」


「おーオレも食おう」


「あっしもいただくでやんす」


「お前ら切り替え早いな」




わらわらとテーブルへ戻った三人が


先程の惨事を経たにも関わらず
奇跡的に無事だった差し入れの包みを開ける




中身は有名店の新作・ワンコクッキー




「さっすがピーマン兄貴、ソツがねぇ」


「気遣いと可愛さの同時アピールとは
中々のやり手でやんすね」


「そうとも、あの男武力こそないが
社会という舞台でなら立派な戦力となる恐るべき人材なのだ」




いつのまにか復活していた桂がクッキーに手を伸ばし

即座に神楽にしばかれた




「何勝手にクッキー食ってんだよヅラ」


「ヅラではない桂だリーダー
TVのコーナーならばオレにもう一つ腹案が」


「攘夷啓発系なら全力で叩き潰すから、テメェごと」




全面却下が飛び出し、企画案が空白に戻ったのを
見計らっていたのだろう




「はい!私からは"彼を落とす深夜の「聞きたくありません!」




天井やら押し入れから




「オレなら"疲れ切った社会人の呟き"
募集されたネガティブな一言をコーナー内で紹介
「マイナスの向こう側に視聴者巻き込んでんじゃねぇぇ!」


「なら良い子のメス豚調教コー
「放送出来るかぁぁ!てか企画被り!」




不法侵入者からの提案が相次いで




テメェらどっから沸いて出た!?
稼ぐ視聴率(すうじ)と結野アナの好感度はオレのモンだ!」


「権利が欲しけりゃ酢昆布寄こせヨ!」


「二人も依頼って事わすれてない!?
あと神楽ちゃん安っす!!」





さすがにキレた家主が暴れ出したコトを契機に
約束された企画案争いが始まる







…かと思われた、その時




折良く三途から黄泉帰ったが呟く




こうして人に相談する
それだけでも私は十分だと思うが」




争っていた彼らが、新たな意見に動きを止めて
思考を巡らせる




「なんつータイミングで発言してんだ」


「てゆうか、いたのねちゃん」


「今の今まで三途にいたな」


相談コーナー…ニュース番組では
異色なんじゃないですかねぃ?」


「弁護士とかタレントのそっち系番組に
勝てるインパクトと需要ってあるの?」


「キャラ次第アル」


「ええと…これどういう状況じゃ?」




鶴の一声を依頼者である外道丸も吟味し




「いっそ相談者と内容を
向こう側へ吹っ切って考えるでやんす」


「え、そのKY発言採用すんの?」




そうして白羽の矢が立ったのは…







はぁいTVの前と全国のオカマ達ぃ?
悩めるアナタのその悩み
西郷ママがズバッと解決しちゃうわよん?』




新春から発案された新コーナー


"西郷ママのカマっ子相談室"


オカマとオカマ関係者限定で集った全国の質問を厳選し


抜き出された質問を、西郷が時間内に答えていくコーナーだ




「本当に通っちゃいましたね…」


「誰だよマジでこんな企画通した奴
朝っぱらから悪夢の更に向こう側だわ」




店の経営もあるため、週一での出演に限定されてはいるが


今までにない切り口と人生経験豊富な西郷の
気さくかつ真摯な回答は意外とウケがよかったようで




「てる彦はTV効果で店が繁盛してるて喜んでたヨ」




向こう側までは行かずとも


瀬戸際を脱するくらいは
視聴率(すうじ)が取れているらしい




「んじゃ定春の散歩行ってくるアル」


「「いってらっしゃ〜い」」




のしのしと歩く白い巨体を引き連れた神楽を


TV画面の西郷を見比べつつ二人は見送っていた







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あとがき(というか楽屋裏)


銀時:アレ?これって最終的にピーマン兄妹が
得する形になってねぇか?


狐狗狸:そこに気づいてしまったか…


外道丸:一応銀時様のお手柄でもあるんで
コーナーの写真にマスコットキャラが友情出演してるでやんす


神楽:ホントだ!定春が地上波に乗ってるアル


新八:干支だからってゴリ押ししまくってません!?


狐狗狸:それが銀魂の様式美では?




読んでいただいて ありがとうございます
2018年もよろしくお願いします!