職人と武器だって人間なんだし


普通にケンカくらいはする


たとえ人間でなくたって、相手がいるなら
ケンカするのは普通のコトだ




けど…ケンカしたのが


変わり者のデスサイズサルだったなら


普通、と言い切れる自信はない




「まさか猿探しを頼まれるとは
君も付き合いがよいですね」


「自分でもつくづくそう思います」




並んで歩くジャスティンさんへそう答えつつ
辺りの路地や屋根に注意を払う




「あと猿里華探しに協力してくださって
ありがとうございます」


「困っている隣人を助けるのは
神の使徒たる私の役目ですから」



それに、とニコニコしながら彼は続ける




「アナタには年末、教会の掃除などを
手伝っていただきましたからね」


ほぼ半強制でしたけどねアレ」


逃げる間もなく枷使われて連行されたからなー

まぁ慣れたしいいけど







…コトの起こりは新年の休みだからと


アパートでコーヒー飲んでくつろいでた時




『よぉ!ハッピーニューイヤー!』


ぶっ!?て、テスカさん
いきなりウチの鏡に映るの止めてくださいよ!』


洗面所の鏡にデスサイズのクマ(頭部のみ)
映った所から始まった




『なーに新年なんでデス・シティーに帰ったついでで
顔出しただけさ、それよか猿里華そっち来てねえか?


猿里華って…パートナーの猿でしたっけ?
来てませんけど』




なにかあったのか聞いてみたら


ちょっとしたコトで猿里華とケンカして


目を離したスキに逃げ出したらしい




『いつものコトさ、猿里華をとっ捕まえて互いのケンカに
ケリつけりゃ終わる話なんでそこまでの手伝いをしてくれ』


『えぇ〜そういうのって
部外者な僕が参加していいもんなんですか?』


『新年で久々のデス・シティーってコトでテンション上がってっから
ちっと手こずりそうなんでな、頼むわ







〜Io non posso ma partecipo
"猿クマ合戦、この指止まれ!"〜








で、断る間もなく


探すついでに他のヤツにも声かけてくるとか言って
鏡からテスカさんが消えて


よくわかんないまま、一応協力くらいはしとくかと辺りをうろついて




近くにジャスティンさんがいたので


猿里華の行動について聞いたついでで
探すのにも付き合ってもらって、今に至る




「それにしても猿とケンカするなど
大人気ないですね、テスカも」


「大人気以前に 猿とどんなケンカをするのかすら
想像つきませんけどね」




そもそもテスカさん自体は時々カフェにいたり
鏡から挨拶したりして割と顔見知りになってはいるけども


パートナーの猿については正直会ったコトないんだよなぁ僕




「一応確認しときますけど、猿里華って
僕らの言葉は通じるんですよね?」


「そのようですよ、当人と会話できるのは
テスカぐらいでしょうけど」


「じゃあ呼びかければ説得くらい
…出来るのかな?猿だけど」


「猿とはいえ職人ですからね」




まあ、ペットとか野生の猿を相手するよりは
多分マシなのかな?うん







そんなコトを考えながらゆるい下り坂に差し掛かった所で


見覚えのある二人がいたので呼び止める




「おーい二人とも!服着た猿を見かけなかったかい?」




近寄って初めて、マカと並んで歩くソウルが
バイクを押していたコトに気づく


「中々珍しいツーショットだな」


「猿は見てないけど、なんでまた?」


君に頼まれて
テスカのパートナーを探しているのです」




ジャスティンさんにした説明を二人にも話すと
マカが納得したように言った




ああ、それでブラック☆スターが屋根の上にいたのね」




セリフだけならいつもとさして変わらないけど

話の流れから考えるに、何か思い当たる節があったのかも




「なにか関係あるの?」


「なんか探してるみたいだったから聞いたら
服着た猿がどーとか」


「探してる猿に間違いないようですね」




会ったついでに二人にも協力を頼んでみたけど
少し困った顔をされた




「手伝うのはいいけど、捕まえろってんなら
ちょっとムリだぞ?」


「なんで?」


「さっきバイクがガス欠になったから」


「あ、それで押してたんだ」


確かに逃げられた場合、乗り物がないと
追いかけるのは難しいかも…猿だし




「ブラック☆スターとかキッド君だったら追いつけるかも
しれないけどね、でも見かけたら知らせるよ」


「ありがと、もし見つけたら本人…いや本猿?
テスカさんが探してるって伝えておいてくれる?」


「それくらいならお安い御用だ」


達もがんばってね!」




話しながら坂を下りきって二人と別れ


周囲を見回し、歩いてる人に訪ねつつ
猿の姿を二人で探し回る







「ところで、もし猿里華を見つけた場合
テスカにはどうやって連絡を?」


「えーと、当人も街で探してるだろうし
多分鏡に呼びかければ伝わるんじゃないかなーと」


「案外無計画なんですね」




呆れたような言葉と視線が心に刺さる




「し、仕方ないじゃないですか!
いきなり頼まれたんですから」


「流されやすいのも程々に、今回はロクに説明をしなかった
テスカにも非があるので後でお説教しておきますが」


「…それはケンカが終わってからで」




若干ジャスティンさんの笑顔が怖かったような…
いや気のせいだきっと







ともあれ地道な捜索が実を結んだのか




「服着た猿…ああ!猿里華のコトかい


「知ってるんですか?」


「数分前にそこの通りですれ違ったよ
誰かから逃げてるみたいだったねぇ」


「「まさにその通りです」」




おばちゃんの証言を皮切りに


猿の目撃情報が集まり始めた




「お前らも猿探しか、実は源さんも探してるみたいでな」


源さんも?どうしてです?」


「現場で青い尖った髪のガキから逃げ回って暴れたせいで
キレてたな、パートナーのクマにも怒鳴ってたぜ?」




ついでにブラック☆スターとの追っかけっこで
被害が出てるコトまで聞いた




「朝の鍛錬中に会って、身のこなしが
堂に行ってたから手合わせしたんだけど」


猿と?止めようよ」


じゃあは同じ立場だったら止められる?
ブラック☆スターを」


「ゴメン無理」




道中でブラック☆スターを探す椿から


組み手の途中で猿里華が頭踏んで逃げたと知って


彼が怒り心頭で猿を追っかけてるコトを理解した




「これって、下手するとブラック☆スターともコトを
構えなきゃいけないのかな…やだなぁメンドくさい」


「これも神の試練と思いなさい」


「…Mamma mia(なんてこったい)




逆に考えれば、猿を足止めしたらブラック☆スターに
猿の捕獲か説得に協力してもらえる可能性が出てきたとも言える

てかそう思おう







足取りを追うウチに両者が
死武専近くの訓練所の方へ向かってるコトに気がつく




「もしも訓練所に彼らが逃げ込んだなら
先回りするのも一つの手ですね」


「一理ありますけど、まだそうと決まったわけじゃ
「ではここで二手に別れましょう 君、ご健闘を!
いや話聞いて!ってムダに足早っっ!?




隣にいたはずのジャスティンさんは
あっという間に見えなくなった


チクショーしばらく会話成立してたから
イヤホンしてたの忘れてた!



いやあの人のコトだしワザと聞こえないフリしたかも




…仕方ない、今はその判断がプラスに転がる方へ祈ろ


「おや、じゃないか?」




角を曲がった先にいた白衣の怪人物は
見なかったコトにして先を


いけませんね〜先生を無視するなんて
そんな急いでどうしたのかな?」




…ちっ、先回りされたか




あきらめてヘラヘラしたメガネ面を軽くにらみながら返す




「ええ急いでます、失礼します」


「理由を言う時間くらいはあるだろう」


「ありません失礼します」




ジャマされたら殴ろう、と覚悟を決めて
脇を通り抜けようとして




「目的は一緒だと思うけどね
君も頼まれたんだろ?猿探し」



その一言に思わず博士を見上げてしまい


博士は、ニヤリと楽しげに笑った




「やっぱりか、大方さっき見かけた
ジャスティンもそうなんだろ?」


「…はい」


「嫌そうな顔をするなよ、幸いついさっき猿を追う
ブラック☆スターを見つけたから急げば追いつくだろう」


ホントですか!?
あ、いやその…貴重な情報どうも、それじゃ」


「そのまま追っても捕まらないぞ?」




イライラしながらも足を止めると、シュタイン博士が
目の前の通りから逸れた横道を指す




「今までの逃走経路から予測して、ここから
少し先の地点で待ち伏せすれば確実だからついて来なさい」





少しだけ迷ったけど、博士の指示に
間違いがないのは明白だったのでついていく




「…従いますが、許したわけじゃないんで」


「いい加減しつこいと嫌われるよ?」


「黙って案内だけしやがってください」







渋々ながらも案内された人気の少ない路地で
二人で待機してほどなく


騒がしい声と共に 服を着た猿と
ブラック☆スターが迫ってくるのに気がついた




「ちょこまか逃げんなこのクソ猿!」


「ガウガー!」


走るのと戦うのを同時にこなす彼も彼だが
よけながら進む猿も猿だ




「さて、どうやって捕まえるか」


「僕が足止めするんで十分です」


とにかくこれ以上借りを作ってたまるか




スライディング気味に飛びかかった
ブラック☆スターをジャンプで回避して


その勢いを利用して前進する猿里華の

進行方向に立ちふさがって第一声を


上げかけた背に鈍い衝撃が


ぐえ、と呻いて僕は強く前へ押される




!?」 「ガウッ!?」


二人分の叫びが聞こえた直後


つんのめった僕と猿の頭が正面衝突し
お互いその場に倒れてもがく








…猿里華はその後 現れたテスカさんと
ブラック☆スター交えてケンカして


三人仲良く、ジャスティンさんと椿のお説教をくらって仲直りした




「あんたワザと蹴飛ばしただろ?」


「君の希望に沿って協力しただけさ♪」




そして痛む頭を押さえた僕は


マリー先生に今回の博士の悪行
チクってやる、と固く決意したのだった







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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:IFルートでの正月をお送りしました!
ちなみにテスカは鏡使いつつも実際に街にも出てました


テスカ:ったくはしゃぎ過ぎだっつーの!おかげで
お嬢ちゃんとジャスティンに怒られたじゃねぇか


猿里華:ガウガウガウ!ガウガーギャッ!


椿&神父:街の人達や(君)に迷惑を
かけたんだから怒られるのは当たり前でしょう


ブラック:つーか怒るんだったらスプラッターバカと
いまだに仲が悪い信者も怒っとけよなー


博士:まぁ彼の場合、素直になり切れないだけですよ




読んでいただいて ありがとうございます
2016年もよろしくお願いします!