やあやあ!
諸国随所の皆様方、お元気ジャリか?


皆様に愛されて二十五周年!


一流サーカス団"スバーリャラモテ"
花形道化師のルオ様ジャリ!!




今回、我が生涯の好敵手(ライバル)である同業者


カフィル=セツルメントが滞在してる

という情報を得て ドノ町からニヘーハ村に
はるばるやって来たジャリよ




「今日こそは"参りました"って
言わせてやるジャリ!」


「たば、頼めばそれぐらい言うんざじゃね?」


「分からん奴ジャリ、オリが欲しいのは
心から敗北を認め称賛する姿ジャリ!」







誇りを胸に、互いの全力を出し合い


勝って認めさせる事こそが目標…




その台詞は決して


そう決して!
あの仮面みたいな仏頂面からではなく


悔しがりつつも 満面の笑みで
なければならんジャリっ!!




「だから正真正銘の全力勝負が
必要なんジャリ!」



「アイツ、アレで全力ばべしぇ?」


「そんなワケないジャリ
奴はオリの生涯を…ん?」




気がついて視線を下げれば


オリの側に草色の髪で、耳の尖った
青いつり目の…


「カフィルの助手じゃないジャリか!」


「そにょろ呼び方止めろ
オレは助手じゃねぇ、だ!」







〜咄嗟ノ極芸〜







「そんな小さな"最後の神(アンディエ)"なんて
聞いた事ないジャリ」


「アディ…なんちゃらじゃーなく神だっての」




何言ってるジャリかこのお子様は…

神話くらい誰でも一度は目を通すはずジャリ


っと、そんな事はどうだっていいジャリ




「お前がいるならカフィルもいるジャリな?」


「神とっぜんだな」


当然だろーが突然だろーが問答無用ジャリ!
今すぐ勝負を挑みに」


「そりゃだ無理
今オレら馬さらしの最中だもん」







…どういう事か訊ねれば




昨夜から村の馬が数頭
いきなり落ち着かなくなって


世話役の村人がなだめるにも

いなないたり、小刻みに震えるのを止めず


今朝早くに柵を超えて脱走したと




助手は噛みながら語ったジャリ




「神人手足りねぇら泊まってたヤツ
みんな駆り出さしゃれてんだよ、ったく…」


ん?最後誰かの名前を呟いてたみたい
だったジャリが、よく聞こえなかったジャリ




「じゃあ何ジャリか?逃げた馬を
捕まえきるまでカフィルと勝負はお預けと?」


「そでゅーコトだな」




冗談じゃないジャリ!




「超多忙な日程押して会いに来たのに
オリ以外にかまけるなんて許さんジャリ!」



ちょっ!どぎゃこ行くんだよ神デブっ!?」


少女を無視しオリは走って




近くにいた村人を見つけて、言った




「脱走馬の捕獲に
ぜひ参加させてほしいジャリ!」








…誠意を持った説得とオリの名前のおかげで


村長さんらの信用も得て、捕獲作戦に
無事加わったオリは




「あの毛色に歩きグセ、ベルに違いねぇです」


「よし…ベル!
すっかり怯えて恐かったジャリ?
エサを持ってきたジャリよ〜」




村人や旅人と協力しつつ、ニンジン片手に
馬をあやして落ち着かせて行く




すげぇ!あっという間にもう半分だ!」


「ヨソモノなのに、手のつけられなかった
馬どもが簡単に大人しくなりやがった…」


「流石はルオさん!!」




尊敬の眼差しが心地いいジャリ


これでカフィルと合流すれば言う事なしジャリ




だが馬がバラけて逃げてるからか


中々アイツと会えないジャリ




おっと!こら噛みつくんじゃないジャリ!」


「助かったわ〜一流の道化師って
馬の扱いにも慣れてるのね、ステキ!」


「ルオ様にかかれば
このくらい目覚まし前ジャリ!」



街道まで出てきてた馬をどうにか村へ帰らせ




残る馬の捕獲へ急ごうと…したのジャリが


「ねぇ、アタシにも
一流のテクを教授していただけ」


「いや生憎弟子は取らないし
助手も間に合ってるジャリ」




やたら美人で色っぽい金髪のねーちゃん
からまれ、少しばかり手間取ったジャリ







「残りは一頭ジャリな?」


「はい…ただアイツは
若いせいかかなり凶暴で…」




雑木林を縫った先の、少し開けた空間へ出た途端




目当ての馬が突進してきた




「うぉあっ!?」




思わず避けたが


ありゃかなり興奮してるジャリ…


「って、またこっちに
突っ込んでくるジャリか!?」




鼻息荒く、デカめの馬体に関わらず
見事な方向転換で勢いを殺さず向かってくる




「止まるジャリ!オリは敵じゃ…どわっち!


二度めの突進も避ける




ってマズイ!あっちは村の方ジャリ…!







慌てて追ったが馬の足は早く、どよめく
村人達を視界にとらえていて




「…カフィル!?」




いつの間にか 駆ける馬の前に
カフィルが立っていた




「逃げるジャリ!
はね飛ばされたらひとたまりも」





言葉半ばでアイツの身体が


馬とぶつかって宙を舞う




―いや、ぶつかる直前に垂直に跳んだ…!




そのまま馬の頭を越え


背についた手を軸に体を反転させ

何事も無く騎乗しただと!?




「ハイッ!」




すかさず握った手綱を操ったカフィルの誘導に


暴れ馬は村を逸れて


…徐々に大人しくなってったジャリ




「ありがとうございます!」


「よくぞあの馬を止めてくださった!!」


「大した事はしていません
その場限りの曲芸です」


「いいや、あれは見事な腕だったジャリ…」




とっさのものといえ、悔しいが
オリには出来ない芸当




やはりオリの目に狂いなし!お前こそ
オリの好敵手に相応しいジャリ!」


「おぉ!ルオさん!」


ふふん♪いい具合に観客も集まってきたジャリ




「今からそのしかめ面をギャフンと
言わせてやるジャリ!さぁ勝負「ルオ!」




せっかくいい所だったのに誰ジャリか




振り返れば…見慣れた団員が
こっちを睨み仁王立ち


「またこんなトコで油売って!
もう開演間近だって団長カンカンだよ!」


「なぬっ!?」


こんな状況で時間切れとは!




無念だが背に腹は変えられず


オリはきびすを返し、町へと
引き返したのだった…悔しいジャリ







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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:"馬に構う"カフィルを意識しまくる
ルオでお送りしました


グラウ:どっちぇかっつーとあのデブのが
主人公っぽきゅねーか?これ


ルオ:オリの溢れだす存在感は
まさに世界に通用するって事ジャリな!!



カフィル:著しく心労絶えんな、団員は


スタンリー:公演もついでに見に行ったけど
ホントこのデ…男、能力は高いわよね


狐狗狸:色んな大陸で有名になるぐらいですから




読んでいただいて ありがとうございます
2014年もよろしくお願いします!