目を覚まし、顔を洗って
兄上と父上へ挨拶を済ませ


郵便受けからハガキを取り出し 居間へと運ぶ




「今年は厚みがあるな」




…昔から、年賀状受け取りは私の仕事だ


転勤の多い我が家では然程枚数は無いハズだが

…大方 兄上宛の賀状が多かったのだろう




「お待たせいたし…あれ?父上はいずこへ?」


「おトイレだよ、一度入るとしばらくは
出ないから 父さんのは選り分けとこ」




…病は大変だ、と改めて思いつつ


兄上へハガキの束をお渡しする







「…凝視やめて


「何故です?私はこれが元旦の楽しみですが」


「隣でじっと見られてると仕分けしづらいから
…あ、新八君とお妙さんのだ ホラ」


共に見たハガキには、兄上と私に

"今年も仲良くしてほしい"と書かれていた




「…うれしいな」




仲良くなっても、直ぐに移る事が多かったから


私に年始の挨拶をくれる級友は
久方ぶりで…とてもありがたかった




「よかったね…
あ、宛のハガキがあったよ…え!?







〜挨拶も年賀も七日のウチに〜







驚かれていた兄上から、受け取った
ハガキの差出人は…おぉ 屁怒絽殿


裏には 達筆ながらも読みやすく
丁寧な新年の挨拶文句がつづられている




「屁怒絽殿らしい」


「そ、そうだね よかったね…

あら、まだ宛の年賀状があるみたい」


「なんと!」




初めての事に戸惑いながらも
残る賀状に…ドキドキしながら目を通す







九兵衞殿のは きれいな島と海の絵ハガキだ




海外で冬休みバカンスなんて…流石はセレブ
うらやましいようなムカつくような」


「魚がうまいであろうな」


「いや、感心するのそこじゃないよね?」




総悟殿のはタツノオトシゴの活け作りの絵と

"携帯を早く買うように"との催促文が




「携帯か…機械は苦手だ」


買わない方がいい!
絶対メールでパシられる!」




月詠先生は どうやら年末ご不幸があったらしく


タツノオトシゴの親子の絵で
喪中見舞いが出されていた




「もしや、総悟殿の絵のタツノオトシゴと…?」


「関係ないからね!?
一切無関係の他魚(たにん)だから!!」





続く勲殿のハガキではタツノオトシゴが
独立して愛を囁き、その次のハガキでは
その片割れが縛られていた




"今年こそは先生を捕まえてみせる"
あやめ殿、タツノオトシゴに罪は」


無いけど関連もないのぉぉ!
てゆーかタツノオトシゴ流行ってるの!?」





よく分からぬが叫んだ兄上をなだめようとして







電話が鳴ったので、素早く受話器を取った




「もうし でございますがどなた様で?」


よぉ、めでてぇな


「その声…もしや晋助殿か?
わざわざすまぬな、明けましておめでとう」




一拍の沈黙を置いて 楽しげな低い声が返る




『相変わらずとぼけてんな…
無事に1年過ごせるよう気を付けな、クク


返事を待たずして、電話はプツリと切れた




「…身を案じてくれるとは よい男だな」


どちらかと言うと脅迫電話っぽかったよね!?
てかクラス違うのに番号どっから」


兄上のお声を遮るように、再び電話が鳴り出す




「もうしで」


『おぉか!
改めて明けましておめでとう!』



「桂殿か…改めて?




少なくとも 桂殿との挨拶はこれが今年初だが




『なんだまだ兄から聞いておらんか?昨夜
年明けすぐ電話したのだが はもう寝たと
聞いたのでな、こうして朝方に電話を』


なるほど、それは新年早々
手間をかけてすまなんだ」


『いや気にするな…それよりエリザベスとの
新春一発芸を披露したいから今からウチに』




話途中で横手から、兄上に受話器を奪われ


「よいお年を桂君」




そして通話は終わった




「兄上…電話がまだ途中だったのですが」


「いいの、どうせ新学期始まったら
見れるんだし イヤでも




それもそうか、と納得した所で三度目の電話が




「…でございますが」


おんやぁーちゃんか!
あけおめじゃの〜めでたいの〜アッハッハ!』



「さ、坂本先生…?」




酔っているのか、声が大きくろれつが怪しい




「大丈夫なのですか?」


『心配してくれちょるのか〜優しいのぉ!
ついでにすまんが迎えに来てくれんがか?』



「え、何故です先生」


『いや年越しで気持ちよく飲んじょったら
迷子になっての!今近くのコンビニ』



唐突に電話が途切れた




もうし!もうしもうし!
…大丈夫だろうか坂本先生」


「さぁ…いい大人なんだし 大丈夫でしょ?」




気になったので、銀八先生にかけたが出ず


仕方なく代わりに服部先生に頼んだ




『新年早々 面倒を頼むな妹…
つーか年賀状見たぞ』


「おぉ、届いていたのですか…よかった」


よくねーよ!"今年もお大事に"って!?』


「いや、先生もご病気がある故
その文面の方がいいかと」




正直に伝えたら、余計な気遣いだと怒られた







「何故にアレほどまで怒るのだろうか?」


「… 今年は空気読めるようになりなね?」




苦笑混じりの兄上へとりあえず頷き返し


山…何とか殿のハガキへ目を通しかけ




ー!一緒に初詣行くアルよ!!」


神楽の声が外から聞こえて


慌てて家を出れば…知った顔がたくさんいた




「銀八先生と新八に妙殿…十四郎殿も一緒か」


「酔いざましに汁粉缶買いに出たら
こいつらに無理やり引っ張られてよぉ」


「せっかくだし皆で初詣とかどうかなって」


も兄ちゃんも四十秒で支度するヨロシ」




…四十秒は無理だったが、断る道理も無いので


私と兄上は 喜んで級友達と初詣へ繰り出した




「てか、なんでオレまで」


「性懲りなくついてくるだろう
ゴリラ(の残骸)を引き取ってもらいたくて」


「あの、思惑もれてます」




…先行きはやや不安だが







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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:過去の記憶よりも年賀状&電話の
アイサツに重点が行ってしまった…orz


土方:おい、高杉このサイトじゃ別クラス
設定だろ?なのに何でん家の電番


神楽:どうせ独自の情報網アル、てーか
妙な七三の変態が仲間にいたからアイツね


山崎:ロリコンじゃん!余計危ねーじゃん!
てかオレの扱い今年一番のヒドさだよ!!


銀八:お前はソレでいーんだよ地味だし
それよか教師呼び出したならお年玉くr


妙:生徒に集るなんて大人失格ですよ?




読んでいただいて ありがとうございます
2012年もよろしくお願いします!