合理主義大国・アメリカ


時間内に最適に仕事を片付けるため


時に厳しいノルマや急な呼び出しも
辞さない雰囲気がある




…それが例え "国民の休日"であっても







「よく今日店開く気になったねマスター」


「なぁに、貧乏ヒマなしってな!」




客へ笑いながら答えたヒゲ面店主を横目に


給仕に勤める少年は、オールバックから
僅かにこぼれた亜麻色の髪を撫でて直す







〜In quelli giorni
"今年も難多きニューイヤー!"〜








特に予定もなく、クリスマスほど
休日のムードも無いから


ついつい働きに来てしまったけれども




「休みはしっかり
英気をやしなうものなのになぁ…」




今更ながら習慣の違いに、はため息をつく







小さいながらも味はよく 新年から
開いている数少ない喫茶店だからか




「エスプレッソ一つ!」


「モカとアメリカン」




席についてコーヒーなどを楽しむ客で

普段よりも賑わいを見せていた





モタモタしてねぇでこれ持ってけ!!」


「はいっ!」




忙しく品を運び、キビキビ
テーブルの合間を縫う途中




「スミマセン、紅茶をお願いできますか?」


「はい、種類は…」


呼び止められ 足を止めた彼は固まった




メニューを眺めていたオックス

レンズ越しの目線を向けて首をかしげる




おや?アナタどこかで見たような…」


「き気のせいではありませんでしょうか」




どうにか誤魔化しつつ注文を全うしたものの


微妙な視線はしばし絡み付いて


は内心冷や汗をかき通した




…が、受難はそれだけでは留まらない







「そこのチミ、カプツィーノと
サンドイッチを持ってきてくれたまえよ」




何故か喫茶店に訪れていた聖剣に杖で差され




「か、カプチーノとサンドイッチですね?」


ヴァカめ!
私の伝説は十二世紀より始まった!」


「伝説ですか?あのお客様ご注文は「ヴァカめ!
カプツィーノとサンドイッチに決まっておろう!」





高圧的かつ支離滅裂な発言をする
珍妙な相手に戸惑いながらも




「た、ただ今お持ちいたします
お待ちください!」


一目散に厨房へと引っ込み、彼は店員として
注文の品を素早く運んでくる




「お持ちいたしました」


ヴァカめ!
私はこの時間には紅茶をたしなむのだ」


へ!?
も、申し訳ありませんただ今お取り替えいた」


の言葉半ばでトレイのカップが持ち上げられ


耳障りな音を立ててカプチーノを
ひとすすりすると、優雅にカップを置いて


厳かに聖剣は言った




「それでは私の伝説を語っていこう」


「ウゼエエェェ!!」




長々と続けられる意味不明の武勇伝を
適当に切り上げて仕事に戻るも




「ここのコーヒーはオススメでね
ぜひ君と来たかったんだよ〜」


「ホントですかぁ〜?」


本当さ!早速注文…!」


「ええと、何をご注文でしょうか?」




ナンパした女性をつれたスピリットと
鉢合わせして気まずさを互いに味わったり




キャっ!ちょっと信じらんなーい!」


「もっ、申し訳ございませんでした!」


慰謝料モンでしょコレ!
しっかり払ってもらうんだからね!?」





接触しかけたことにより手を滑らせ


キムの足元に飲み物を溢してしまって
代金払わされたり(無論の給料から天引き)




…とにかく、ひたすら忙しない時間を過ごした







仕事が終わる頃合いに店は

ぽつりぽつりと人が残っている程度になって




「年明けの休みでもバイトかよ?大変だな」


「お疲れ様、君」


和やかながらもやや同情的な
マカとソウルの言葉に




「…ありがとう二人とも」




彼は とてもくたびれた声音で返した







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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:元旦からお仕事もどうかとは
思いましたが、他にネタが無かったモンで


ソウル:つか、一人暮らしの野郎の
休みの様子とか読みたいヤツいねぇだろ?


マカ:にしても災難だったね オックス君も


オックス:ええ…拍手でも絡まれて散々です


聖剣:エクスカーリバ〜エクスカ〜リバ〜


狐狗狸:ウゼェェ!




読んでいただいて ありがとうございます
2011年もよろしくお願いします!