木枯らしが吹く中、石榴は
やけに嬉しげな顔で帰途を目指していた




「新年早々勝ち星だなんて俺ツイてんなぁ〜」




肩に下げた大きめのリュックを揺らせば


中で重そうな金属音が小さく鳴った




サバゲーサークルから、年始めの
大会参加の誘いを受け


そこで彼は満足のいく戦績をあげたらしい







意気揚々と進めていた足が


馴染みとなった石段の側で、不意に止まった




「…アイツは来ねぇと思うが
まー新年だし神参りでもしとくか」




呟いて境内までかけ上がり


古びた社の賽銭箱まで近寄ると、財布から
小銭を出して放り入れ 柏手を打つ







〜Cross Tark A〜







「……にしても
相変わらず人気がねぇな、この神社」




願掛けを終えた石榴は辺りを見回して呟く




元旦はそれなりに人が来たのかもしれないが

今は参拝客どころか、社務所にすら人の姿がない


こんなんで大丈夫なのかこの神社…と


若干罰当たりな事を考えながら
石段へと向かった石榴は




「うわっ!」




すれ違いに現れたスーツの男とぶつかった




衝撃で後ろ向きに石畳へ倒れこみ


弾みでガシャリと中身が派手な音を立てた







「ゴメン、あー大丈夫?」


男は人懐こそうな笑みで、石榴へ手を差し伸べる




「痛て…まあ平気だけど
そっちは大丈夫か?」




言いつつ自力で起き上がり
土埃を払いながら、彼は相手へ返す




「ハハハありがと〜でも、してたけどスゴい音
割れたりしてない?荷物」


「は?荷物?」




頓狂なことを聞かれて首を傾げつつも

石榴は一応中身を確認する







衣装がある程度緩和材となってか


銃に目立った傷もなく、損傷は
ゴーグルにヒビ一本入ったくらいで




「って…適当に入れてたの忘れてたわ」




乱雑に詰められた荷物の底に追いやられた
虹色の宝珠も 当然無傷で存在した




思わず冷や汗かいてる石榴の横から




「ああ頑丈なんだ〜案外ソレ」


黒い長髪を揺らして、スーツの男が
リュックを覗きこんできた




「なっ…何だよアンタ、コレに興味があんのか?」


やや引き気味に訪ねれば




「まぁね〜だって魔術銃だしコレ」




さらりと相手は 宝珠の正式名称を言い当てた




「な!アンタなんで!?」




目を見開き、一歩後退った石榴を見つめたまま


男は頭を掻きつつ苦笑すると

言葉を選んで口を開く




「そうだなー…

君 知ってる?ラノダムークって」


「ああ、忘れられるわきゃねぇよ」




複雑な顔で頷く少年に


スーツの男は表情を変えずに軽い口調で言う


神様の一人って言われてるの、そこで俺」


「…は?




あまりにも突飛な発言に 石榴はしばし固まる




「本当だよ…信じてもらえないかもしれないけど」







続けられた言葉に、眉間のシワを
深めながら彼は悩む


…そして、こう返した




「証拠はあんのか?」


「うーん…証拠って言うか、喚べるかな 証人は」


「誰だよ証人って」


「旅の連れであっちじゃ貨幣神って呼ば
「わかったアンタの事を信じる
だからそいつは呼ぶな」



気づけば石榴は思い切り即答していた




「ありがと信じてくれて」


「…で、ファンタジーの神様が
こんなトコに何の用だよ」




問われて彼はにこりと笑う




「元々来たんだけど、探し物があって
綻びがあったから時空の…この奥に」


「それで気になって上がって来たと」


お!分かったねーよく」




嬉しげに藍色の目を輝かせた男の様子は


異世界にいる"腐れ縁の魔導師"を思い出させ




「…新年早々、幸先いいんだか悪いんだか」




げんなりと石榴は肩を落とした







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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:拍手を読めば丸分かりですけれど
男はシェイルサード当人です


石榴:つーか、この後どうなったんだ結局
それよりどうやって来れたんだよここに


暗神:綻びを見て ちょっと話して彼と
そのまま別れたけど?あったから探し物


狐狗狸:長いし特に進展も無いので
そこはカット、来た方法はノーコメント


暗神:これでも神様だからね 俺


石榴:…ったく これだからファンタジーは




読んでいただいて ありがとうございます
2011年もよろしくお願いします!