"昔々ある所に、貧しくも
慎ましく暮らす兄と妹がおりました"




「今回は童話再現って聞いてるけど…
ビルがナレーションなんだ」


「ええ」


「あの、私まで主役でよいのでしょうか?」




不安げな様子を払拭するかのように




「…あなたが適任なのですよ、




ビルは穏やかに言った







〜幸福への代償は〜







"ある夜二人の元に魔法使いが現れました"




「二人で青い鳥を探してきておくれ」


「う…うんわかったわチェシャ猫」


「アリス 顔が青いけど大丈夫かい?」


「夜中にその姿で現れれば驚きますから」




至極冷静な指摘が浮かぶ生首へ入れられた







"鳥かごを手に兄妹は
思い出の国へとやって来ました"




「よく来たの二人供…ゆっくりしておいき」




懐かしげに言うグリフォンへ彼女は訊ねた




「あの、青い鳥はどこにいるのですか?」


「この辺りの木に止まっておるよ」




二階よりも高く伸びた木々の枝には確かに
青い鳥の姿があった




「ワシが近づくと逃げてしまうが
お前達なら大丈夫じゃろう」


「… お願いね」




断ることなど出来ず




「かしこまりました」




青ざめた顔で覚悟を決め、彼は頷いた







"落下の恐怖に怯えながらも兄が
手に入れた青い鳥は、国を出た途端


黒い鳥に変わってしまいました"




「いや今この鳥着替えませんでし…痛!


「あんまり触ると衣装脱げちゃいますよぅ」


「ハリー!?」







"二人は次に、あらゆる災厄の並ぶ
夜の御殿へ行きました"




「アリス!
わたくしはあなたの首があれば幸せなの!!」



「私は首がある方が幸せだからっっ」


「へへ陛下っどうか鎌を納めて下さいっ」


「お黙り!」







"鎌の恐怖に怯えつ青い鳥を捕まえるも


御殿を出た途端に死んでしまいました"




え!?これ本当に」


「死んでませんよ!」




語りで不安げにカゴの鳥を見やったアリスを
慌てて説得する彼







"その後贅沢の御殿や




「青い鳥をご存知」


「ない、ワシらはお互いしか見えんぞ!」


「あ…アツアツね」




未来の国へ行き青い鳥を探しますが、




「鳥なぞより我らを」


「いや私達を食べて」


「僕を食べて!」


「うわあぁ!」


ー!?」




どの場所にもいた青い鳥は、出ると
みんなダメになりました"







「どうして持ち帰れないのかしら…」




劇とはいえ感情移入し、寂しそうなアリス




「私が必ずや青い鳥をご用意いたしますので
どうか悲しまないでく」


かけた彼の言葉が途中で途切れる




あれ、どこ行ったの??」







"辺りを見回していた妹は
気付くとベットにおりました"




「家…そういえば青い鳥とは!」




"カゴの中には一羽の青い鳥がいたけれど


変わりに兄はいなくなってしまいました"





「…いますよここに」




彼女に聞こえぬ声音で、悲しげに呟く"青い鳥"







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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:分かり辛いですが最後
パンで小さくされて青い鳥にされました


チェシャ猫:自分で言ったことなら
責任持たなきゃねー


狐狗狸:…分かってて配役押し付けたね


ビル:ちなみに青い鳥の位置や国に
いる者の役割などは陛下のご要望です


女王:惜しいわ…もう少しで
アリスの首が刈れたのに


狐狗狸:うわぁ怖っ、新年から怖っ!




読んでいただいて ありがとうございます
2010年もよろしくお願いします!