「元旦早々、ツイてないね


「…放っておいて下さい
仕方ないでしょうコレばかりは」




私は止まったマスの指示に従い、
コマをスタートまで戻す




「あードキドキする、三だけは
出さないようにしなきゃ」




サイコロを手にしたアリスが祈る




三マス目の指示は「ふりだしにもどる」







〜賽は虚構の進退を示す〜







年が明け、初詣でへと参られた
アリスと叔父様達が家に戻られて




間を置かず家に訪ねられた武村様の
アリスへの執拗な誘いを頑として拒み







武村様がようやく帰られた時点で


力尽き、叔父様は寝入ってしまわれた







おばあ様も休まれ 猫と過ごすには
あまりにも退屈されていたようで


思い立って、アリスは案内の元
こちらへお越しになられたのであった




双六という ボードゲームを携えて







「みんなで一緒にやろうかと思って」


まぁそうなの!でもどうせなら
年も明けたし 首になって私と一緒に」




いの一番に駆け寄ってゆく陛下を
私とビルが推し留める




「へへ陛下っ、それだけはどうか!


「邪魔よ、ビル お退きなさい」


「…今日ばかりは鎌を収めないと
アリスが帰ってしまわれますよ?」




どうにか危機を乗り越え、住人を集めて
順番を決め 双六が始まる







アリスと猫と私の他には ビル・帽子屋・
女王陛下・廃棄君が参加しており


チェシャ猫は体が生えている状態







何順か巡り 皆のコマも差がつき始めるが


私は、何故か振り出しに戻ってばかりいる




「えいっ…!」




サイを転がし、アリスは瞑っていた目を
恐る恐る開き 安堵のため息をつく




「よかった〜三じゃなかった」


「運がいいなアリス、もし三が出たら
みたく まーた振り出しに」


「…帽子屋、そんなに可笑しいですか?」




視線を向けた途端 彼は肩を小刻みに
震わせて押し黙った







次にサイを振ったのは、廃棄君




「オレは…っと "ものまねをしろ"?




首を傾げてから、少し咳払いをして
彼は顔を険しくして立ち上がる




「やいこしあんども!今日こそは
貴様等に引導を渡してくれる!!」



「つぶあんぱんの真似ですか、似ておりますね」


「そ そうか?」


「うん、の言う通り 結構似てるわ」




アリスのお言葉が決定打になったのか
廃棄君はずいぶん嬉しそうだった




「次は、私の番になりますね」




相変わらずの薄笑いを浮かべ、ビルが
摘んだサイコロを軽く転がす




出た目は大きく あっさり帽子屋のコマを越す




あー!ビルに先こされたっ
せっかくトップだったのに〜!」


「それはお気の毒に、さぁ どうぞ陛下」







サイを渡され 良い目が出たにも関わらず
陛下はずっと顔をしかめたままだ




「解せないわ…どうして私の次が猫なのよ!


まだ言うのかい?仕方ないだろう
女王がジャンケンで負け続けたんだから」


「お黙り猫っ!!」




せっかく生えたチェシャ猫の体が
またもや首と泣き別れさせられてしまう


とっさに私が人垣となり、アリスの目を
ビルが手で覆い 決定的瞬間を隠す




「ちぇ、チェシャ猫 大丈夫!?


「大丈夫だよ、まったく首狂いには
困ったものだよ ねぇ


「私に話題を振らないで下さい!」




緊迫した状況下でも猫はにんまり笑っている







陛下は、いまだイライラと呟いて




「大体ビルと猫の間に私の番があるのも
アリスの隣がと猫なのも
ずっっと気に入らなかったのよ…!」




唐突に何かを思いつき 鎌を持ち上げ笑う




「そうよ、みんな首になれば楽しく遊べるわ!」


「みんなってオレらも入ってんの!?」


うわっ!たたた助けてぇ!!」




近くにいた帽子屋と廃棄君の腕をビルが引き


代わりに私が陛下の御前に立ち
ハンマーで鎌の一振りを防いで叫ぶ




「皆さん 逃げますよ!」


「わかったわ!チェシャ猫 おいで!」




転がってきたチェシャ猫を抱えて
走ったアリスに続くように




私達も 鎌を振り上げる陛下から逃げだした







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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:今年も叔父さん&
苦労する年となりそうですねー


廃棄:てか猫の身体はなんで生えてたんだよ


ビル:それは運搬と遊ぶ為に
アリスが望んだからでしょう


狐狗狸:Σあ、私のセリフをー!
それよりネムリンはどうしたの帽子屋!?


帽子屋:ハリーとお茶飲んでるに
決まってんじゃんか!記述しろよな!


狐狗狸:あ…ゴメン、素で忘れてた




読んでいただいて ありがとうございます
今年もよろしくお願いします