それは テストまでの期間が二週間を切った、
第五学年のとある生徒達の出来事―――











「って事で 今回もテストの範囲予測、ヨロシクね〜」







テストの科目である教科書と真っ白なノートを
自分の式神の机に置いて





正に神頼みのポーズでがそう言った







「…あのなぁ、俺の力はこういう事に
使うもんじゃねーっていつも言ってんだろ」


「いいじゃん だってその力のお陰で
赤点補習も免れてんだから〜」


テストだけはな」







呆れながらその一言を付け足して、
の隣にいるヤクモに声をかける







「ヤクモさんも の奴をいい加減、説得してくださいよ」









本来ならば、暴走しがちな生徒を止める
生徒会長の務めを果たすヤクモなのだが…









「すまない…オレも実は、英語の単位がちょっとやばくてな」







苦笑を浮かべつつ、小さく謝る





の机を中心に やヤクモと
同じ様に並ぶ、数人の第五学年の生徒や


何が起こるのかと見物をする生徒が
クラスを問わずにちらほらいたりする







「カンニングじゃなくて、凄く的確な
ヤマカンなんだから 悪い事じゃないでしょ?





アハハ、と笑うを はジト目で睨み





「あっけらかんと言うなよ、つか他の連中は
ともかく お前は毎回俺に頼りすぎだろ」


「だってあたし 本来だったら第三学年生だもん
これくらいしないと留年しちゃうよ〜」







全く反省してない口ぶりで軽く言う











…討論は無駄 と悟ったらしく









「予測の式神も こうなっちゃある意味オシマイだな」







そう言いつつも、皆の視線が集まる中
目を閉じて集中する









暫く沈黙が辺りを支配し…







カッ と勢いよく目を見開いた
そのまま白いノートにペンを走らせる!





凄まじいスピードで英文や漢文 数学の数式などが
書き込まれ 白いノートを数ページ先まで埋め尽くす







次!書くからノート持ってこい!!」







叫ぶようなその声に反応し、次々と机の上のノートが取り替えられる





は集中しながら 各教科ごとの範囲
ノートへと書き込んでいった…












〜多分嫌な学校伝説〜













初めは テスト勉強を少しでも楽しようと、





予測の式神なんだから テストの範囲ぐらい予測してよ





と言ったのが始まりだった







初めは断っていたも のしつこい
おねだり攻撃に圧され、ついに行ったのだ





それが本人達の予想を越えて効果があったため
少しずつ口コミで 噂が広まったのだ







第五学年の天流クラスにいる予測式神の
テスト予想は百発百中









この噂のおかげで 予想を欲しがる生徒が現れ、
お陰でこうやって並ぶ者まで現れる始末





その事も が教師陣の受けがよくない原因の一つだった















並ぶ列の殆んどを片付け、見物もそぞろに
なってきた頃 を励ましていた





 あと少しでこの列終わるからガンバレ〜」


「俺に書き取り地獄をやらせといて、暢気なもんだな…」











「うわ〜スゲェ早くね?何やってんのこれ?」







やって来たタイミングがわからない位 さり気なく


ヤクモの隣で感心しながら 
の作業を見つめていた







「「Σ いつの間に!?」」


「うわー 気づかなかった、何でいるの?」





驚くヤクモと(←それでも手を止めない)


のんきに言うに は笑いながら





「いやーちょっと助っ人部の勧誘とかやってたら
このクラス妙にニギヤカなんで…で、ヤクモ」







次の言葉をが継げる前に、ヤクモは首を振り







「オレは部活入れないから 生徒会長で手一杯だし」





「言いたい事を分かってくれるなんて
オレ達夫婦はフィーリングバッチリだぜ!!







ニカッと笑いながら ヤクモの左腕に抱きつく







Σ誰が夫婦だ!抱きつくな腕を取るな!」


くんずるーい!
あたしもヤクモさんに抱きつくのー!





憤慨しながら もどさくさに紛れて
ヤクモの右腕をしっかり確保





「Σいやちゃん お願いだからを止めてくれ」







そんな感じでヤクモは 二人に引っ張りだこにされていたが、









「Σお前等うるせぇ静かにしろ!集中できねーだろうが!!」







の一括で 二人はとりあえず同時に
ヤクモの腕から手を放した





「ふぅ…いい加減オレの勧誘は諦めろよ」


「ちぇー 助っ人部メンバー少ないから
ヤクモが入ってくれると助かるのになー」


「メンバー探しなら他当たれよ
有望そうな人材は他にもいるだろ?」





唇尖らすに 溜息つきつつヤクモは言う





「確かに 第五学年くらいにもよさげな奴
いるけどさ、中々入ってもらえそうな人がねぇ」







偶々視線が合ったからか ニッコリ笑って







「あたしは部活に入るつもり無いですから
勧誘しても無駄ですよ〜」







も負けじと微笑みつつ 首をかしげて







「うーん オレ、ガキっぽい子好みじゃないしー
もっとこー 色気って言うかスタイル抜群って言うか」





どこの親父だお前は 某問題児と同類か?」


「むしろ そこの丼より変態だぞオイ」







の台詞に ヤクモとの二人が


いつの間にか側にいたマサオミを 横目で見つつツッコミ入れる









ステレオでツッコミ入れるの止めてくれよ
…そう言えば 吉川ヤクモ」


「何だ?」





「役員の子達がお前を探してたぞ?早く行ったらどうだ 生徒会長







その言葉に そろそろか…と呟いたヤクモが
英語の範囲が書かれたノートを手にして







「それじゃあオレはこれで、ちゃん
あんまりちゃんに無理させちゃダメだぞ?
何かあったら オレを呼ぶように」





「はいっ ヤクモさん、生徒会のお仕事頑張ってください!!


「さっさと行けよ生徒会長


「じゃーな オレの愛しいヤクモ〜!





軽い口調と共に投げキッスした
拳骨を一つかまし、ヤクモは教室を去った







は頭をさすさす撫でながら





「全く 昔からジョーク通じねー奴〜」


当たり前だろ、あんな見送りじゃ殴られて当然だ」







ようやく書き取り地獄を終えて、淡々と
冷たい口調で言う





「そーいやここにもいたなー
ジョークの通じない小さい狐が」


「Σ背の事を言うな背の事を!!」





不機嫌さを露にするを さも面白そう
おちょくりまくるの横で、


ヤクモの姿が見えなくなるまで 見送った
が、マサオミの方に向き直る







ヤクモ様行っちゃった…そういえばマサオミさん
メンバー何人くらい 集まりました?」


「うん、結構一杯いたよ〜?
やっぱり 指定された範囲広すぎなんだよね」





言いながら、メモを出してに見せるマサオミ





「ありがとうございます〜」







「え ちょと待てメンバーって何の話だ?





との口ゲンカを止めて 問い掛ける


は未だにメモの紙から目を離さず、続ける







「んとね 噂聞いて、テスト予想欲しいって人がまだいたから、
マサオミさんに頼んでメンバーをリストアップして貰ったの」





Σちょっと待て あんな並んでたのにまだいるのか!?」


「だって一々並んでもらうより、頼まれた分作って
渡していった方が手間が省けてすむし〜」







寝耳に水とばかりののトンデモ発言に


がツッコミを入れるより早く
が横手から口を挟んだ







「あのさーちゃん、通りかかったついでに
オレも テスト予想欲しい人リストに入れといてよ」


「え〜 くんは学科違うから意味ないと思うけど…」


心配ご無用!共通で学ぶとこだけバッチリ
貰ってくつもりなんで〜」





親指をビッと立てるに マサオミが感心しつつ





「流石 抜け目がないな」


Σ流石じゃねぇ!つーか何やってんだお前等!!」







そんな彼等にツッコミ入れるも、の声は
三人に無視されている模様









「じゃあくんは一教科につき
購買のプリン一個おごって下さい♪」


「プリン一個って…デカイのとミルクのと普通の
三つのうちのどれだよ?」


「勿論大きいのですよ〜」


ちゃん 当たるテスト予想と引き換えとは
言え、それちょっとボり過ぎてない?





和やかに取引交渉っぽい事をに持ちかける
を、マサオミがたしなめる









無視するな!しかも対価取るのかよっ!
それ学生がやることじゃねぇだろ!!





至極当たり前な の台詞をやはり無視して





「って事で 今回はあとこの人数分ヨロシクね♪」







微笑みながら に見せた
写しを求めるメンバーリストの数は――











なんて言うか 第五学年のおよそ三分の一だった
(も含む)







「Σこんな大勢に渡せるかー―っ!!」





バンバン!が勢いよく机を叩く





「えーでもなら出来るって
いざとなったら加速符使ってスピードアップで」


「俺を過労死させる気か!?
さっきの分で只でさえ疲れてんだぞ!!」








いいながら はメモのリストを突き出して







「それ以前に こんなに大勢いるんじゃ
テスト勉強までに、なんて間にあわねーだろ!





「あー それは盲点だったなぁ」


Σえちゃん 何も考えずに
取引を引き受けちゃったの!?」








頭をかくの姿に、流石にマサオミも
事の重大さを理解した模様







考え無しにこんなことするなぁっ!
一体如何するつもりなんだよ!」


「えー うーんと、そのー…」









に詰め寄ったその時、





何か考えついたように が人差し指を
一本立てて こう言った







「だったらさ、ここにいる皆で手分けして
範囲を人数分コピーしちゃえば良いじゃん」











教室内の全てが沈黙し、そこにの声が滑り込む









「メンバーから、それぞれ欲しい範囲を聞いて
コピー枚数をリストアップしてさ…
人手は、ヤクモを入れて五人位でどうかな?」







「「ビャクヤ(くん) ナイスアイディア!!」」





二人が声を唱和してを褒め称えた













「…もういいよ 勝手にしてくれ」





額に汗を浮かべつつ、が諦めと共に
漏らした呟きは 誰の耳にも届かなかった

















そうして 各コンビニに五人が散らばり





店員等のメーワクをぶっちぎりで無視した
大コピー大会が始まったのだった













正にその時の大コピー大会こそ、





第五学年の三分の一の期待を背負い、
天地神混合で利害一致した


伝説の行動として語り継がれる事になる











――ついでに、この大コピー大会が原因で
テストが無事終了後







五人は まとめて職員室でお説教を喰らう羽目になった








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:松本つきや様のさんと共演&コピー大会ネタを
今やっとここに完成させました!


マサオミ:それよりさーオレの出番少ないんだけど…
どういうことかなー?


狐狗狸:そりゃーまー さんに取られたんだと
思います、失礼ながら書いてて性格似てるって思ったし


ヤクモ:その発言はちょっとどうかと思うぞ
それと ちゃんはとテスト予想を引き換えてたんだ?


狐狗狸:そりゃ〜まぁ ご想像にお任せします
(大方お菓子とかヤクモ様情報とかだけど/笑)




松本様 お借りした上にさんのキャラが何かアレで
本当に本当にスイマセンでした!


今回もかなりトンでもない話ですが 楽しんでいただけたなら
幸いです…(汗)