学園祭が少しずつ迫り、クラスや部活等の
活動も日に日に力を増していく









オレのクラスも皆が放課後まで残って


色々と案を出したり必要なものを作って







来る学園祭の為に準備をしていた










今日の分が終わり 家へと帰ろうと
昇降口へと歩いていると







「あら、ユーマ君 こんな所で会うなんて寄寓ね」


先輩、お疲れ様です」







廊下で珍しい人と鉢合わせた









目の前のこの人は、第六学年の 先輩







一際目立つ容姿と格上の実力、人望も厚く
色々な意味で学園内で有名な人物だ









でいいわ 弟もこの学園に入学して
いるから紛らわしいし」


「いや、こういう上下関係はキチンとしないといけませんよ」







目上の者には敬意を払え、と
生まれたときから教えられたオレとしては


先輩を下の名前で呼び捨てるなんて出来ない







「でも下の名前で呼ばれるのに慣れてるから…
出来ればそう呼んでもらえるかしら?」









手を合わせて申し訳なさそうに頼む先輩を見て、
オレは苦笑交じりで頷いた







「…分かりました先輩 所で、どうしてこんな所に?









確か演劇部の部室は この辺りではなかった筈





必要なものを買出しに行くにしても方向が違うし…







「ああそうだった、忘れるところだったわ」







先輩が途端に困った顔になる







「私、を探してるんだけど…こっちに
来なかったかしら?」


「…来てませんけど」









と言うのは、彼女が以前 契約していた式神生徒だ







とある事件により 先輩は式神を
飛び級した知り合いに契約譲渡したものの、





気になってちょくちょく様子見に来るとか







…そう言えば、彼女の親バカぶり
学園内で有名だったな












〜放課後にチェシャ探し〜













「また、あいつが何かやらかしたんですか?」





言うと 彼女は首を横に振り、





「今度の劇であの子が着る衣装を見せた途端
いきなり逃げ出しちゃったのよ」







そう言いつつ、先輩が出した衣装を見て





内心 式神に同情した







(何なんだ この派手な衣装は…)







「今 劇団員の皆に頼んで
手分けしてを探している所なの」









演劇部・部長の肩書き彼女の人望
そして 極度の親バカがなせる業だ







しかし、それでも逃げた式神を探すのは手間だろう





相手があの式神なら 尚更だ









「帰る所なのにゴメンね、見かけたら
私が探してたって伝えておいて―」


「良ければ 式神探すの手伝いますよ?」







彼女の言葉を遮って、





気がつけばオレはそう言っていた







「いいの?」


「…ええ、構いませんよ」







どうせ急ぐ用事もないし、学園祭の準備で
帰りが遅れることも 事前に伝えてある







「それじゃあ お願いしようかしら」









そう言って微笑んだ先輩はキレイで
オレは少しドキリとした













「…そういえば先輩、ひとつ聞きたいんですけど」





空き教室を見回り、廊下を進みながら
オレは少し前にいる先輩に声をかけた





「何かしら?」


「今度の劇は どんな話をやるんですか?」







見せてもらった派手な衣装が 頭に焼き付いていて
どんな劇をやるのか、少し気になった







先輩は足を止めず、オレの問いに答える









「何時もは一般の人に私達の活躍を理解してもらう
意味も含めて 史実に基づいた歴史物が大半なんだけど…」





オレが頷いているのを見て、先輩は言葉を続ける





「色々、入れる演出や術を工夫してるけど
毎回似たものだと 見に来る人達が飽きちゃうでしょ?」







演劇についてそんなに詳しくはないけど







言われてみれば、毎回同じようなものだと
いずれは飽きてくるだろう









「なるほど 演劇部も色々と苦労してるんですね」


「ふふ…そう、だからちょっと趣向を変えて
童話をアレンジした話を作ってみたの」


「それは面白そうですね、元の童話は何ですか?」







訊ねると 先輩は嬉しそうに教えてくれた







不思議の国のアリスよ で、
アリスを導くチェシャ猫もとい契約式神の役なの」







それを聞いて、オレは硬直しかけた







「そんなに変かしら、その配役」


「あ、いいえ オレにはなんとも…」









…確かに六花は"予測"の式神





アリスの話はあまり詳しくないけど、大筋は
なんとなく聞いたことがあったから





そこだけ考えればその役は当てはまるのだが







確かは、六花にあるまじき
重度の方向音痴だったはず





そういう意味では非常にミスマッチだ









「それにしても、演劇部の衣装って
あんなに派手なんですね」





話題を逸らすようにそう言ったけど





「ええ、の着るものは特に
気合を入れて作ってるのよ」







笑みを浮かべてさらりと言った先輩の言葉に
今度こそオレは固まった









「作ってるって…衣装を あなたが?







先輩は頷き さも何てこと無いかのように言う







「だって劇によって皆 役が違ってくるし
破けたりすることもあるでしょ?
だから衣装は作るのも直すのも全部私がやるの」







その言葉に 改めて驚きを隠せなかった









程度にもよるけど、普通の服を
作るのも直すのも大変なのに







彼女はあんな手の込んだものを毎度







しかも自分から進んでやっていたなんて…









「どうしてそんな大変なことを 部長のあなたが?」


「立場は関係ないわ、それに私 服を作るのも
大好きだし 皆の役に立ちたいから











唐突に オレは理解した









彼女のこの性格が 周囲の人望を生み出しているのだと











その時、廊下の向こうの曲がり角から
足音が徐々に近づいてきて









こちらに姿を現すと思った矢先





直前で足音が角の奥へと遠ざかる







オレと先輩は顔を見合わせて
急いで廊下の角を曲がる









思った通り、角を曲がった先の長い廊下に見えるのは





探していた 六花のの後姿







、待って!」







先輩が前を行くに呼びかけるが
止まる気配も振り返る様子も全くない







意外と奴の足は早く、





対してこっちは廊下をあまり走ることは出来ない









「少し止まって話を聞け!」





このままでは埒があかないので
先を走るに一括すると







ようやく奴が立ち止まり、オレに視線を向ける





「なっ…なんでユーマがと一緒にいんだよ!」


「先輩がお前を探してたから 手伝っているだけだ」







先輩が 一歩前に出て呼びかける







!どうして逃げ出すの?」


何度も言っただろ!俺はあんな
恥ずかしい衣装で舞台に立ちたくないっ!!」





その言い草に少し腹が立った





「先輩が心をこめて作った衣装を恥ずかしいとは何だ!」


「っそれはわかるけど、着る方の身にもなれ!







そう返され、オレは思わず口をつぐんだ





奴の言う通り あれを着て舞台に立つのは
恥ずかしい…オレだってそう思う







「大丈夫よ ならどんな衣装でも
似合うわ!私が保証するから!!


「そういう問題じゃねぇ!!」


「何でいつも衣装を見せると逃げるの?
ひょっとして私のこと嫌いになった?


違う!頼むから自分の親バカさに
気づいてくれ!!」









しばしと先輩との押し問答が続いて、









「とにかく、あんなの着るくらいなら
逃げつづけた方がマシだ!!」







言い終えると同時にがくるりと後ろを向く







ここで奴を逃がしたら、探し出すのが厄介だ









「式神降神!」







オレは神操器を向けて、自分の式神を―





「白虎のランゲツ 見参!」





逃げようとする奴の行く先に降神した







「ここは通さぬ、黙って話を聞け」


「なっ…!」







逃げ道を塞がれて、戸惑う
先輩が説得を続ける







「この衣装が嫌なら、私 の為に必ず
気に入る衣装を作るから!
だから、もう逃げたりしないで!!











しばし先輩とが見つめあい









やがて、奴が観念したようにため息を漏らした









「…バカ、そこまで言われたら
着ないわけに行かないだろ」







言いながら 先輩の側に歩み寄る







「わかった もう逃げない…大人しくそれも着る」


…!」











どうやら 円満に事は解決したようだ











「本当にありがとうユーマくん、
あなたのおかげでが戻ってきたわ」









ニッコリと嬉しそうに微笑み先輩を
まともに直視できなくて、







「いえ、オレは何もしてませんよ
それじゃあ…行くぞ ランゲツ」


「うむ」







短くそれだけを告げて、オレは帰ることにした















―後日、学園祭当日の演劇部の舞台は
かなりの大人気だった









オレも時間があったので見に行った







劇は面白かったが 内容よりも





役者の衣装がやたらと派手
そっちの印象がより強く残っていた









……演劇部の部員も苦労しているんだな








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:学パラネタでとユーマが絡めそうなの
書きたい!と思って書きました


ユーマ:今 まだ秋だから学園祭の話にしたのか


狐狗狸:そうそう、いやー間に合ってよかった


ユーマ:しかし、隠しページにしか出てない
先輩の弟のことを書いていいのか?


狐狗狸:そっそれは…まぁ 話題にするだけなら
OKなんじゃ?


ユーマ:あと、話の展開は相変わらず唐突で無理やりなくせに
演劇のことに関しては力をいれているな


狐狗狸:しゃらっぷ、こっちは小中高と演劇部に
入ってたからついリキ入っちゃったの!


ランゲツ:ワシの出番はアレだけか


狐狗狸:……ゴメンナサイ




学園祭がらみの話なのにそれっぽく書けなかったなぁ…
(遠い目/コラコラ)




ここまで読んでいただき ありがとうございました〜