合間の休み時間は、やたらと煩い





やれゆうべのTVが傑作だったの

やれこないだの宿題が手強かったの


オレに言わせれば"低次元"の一単語で
まとまりそうな話が空間を飛び交い


男子は軽いじゃれあいでバカ騒ぎし


女子はけたたましく笑うか
携帯いじりや化粧に精を出す


…移動教室のクラス混在でこの騒がしさ

ったくガキは流派問わずバカばっかり





揶揄を乗せた軽い溜息を吐き出し

手元の作業へ再び集中する


この調子なら、授業が始まるまでに
最終段階まで組み立てられる―


「おい それは何だ?







視線を上げれば、隣にはいつの間にか
怪訝な面したユーマさんが


作業を中断された苛立ちを極力抑えつ

努めて平坦に手短に 事実だけを伝える





「自作の盗聴器ですが何か問題でも?」


「なっ…ななな、今なんと言った!!


「スイマセン、少し声のトーンを
落としていただけませんか?」


特有の大声に驚き 辺りの奴らが一斉に
こちらへと視線を向けている





気付いて慌てて口をつぐみ、お互いに
黙ったままでそうしていると


すぐに奴らの興味は各々の事へと変わる











〜俺のクラスはバカばっか〜











やや気まずげに周囲を確認してから
少し顔を近づけたユーマさんが、小さく問う





「…なんだって学生の分際で盗聴器なんぞっ」


「今の時代は知識と技術と金さえあれば
自作で出来るんですよ、知りませんでした?」


「そういう事を聞いているんじゃない!」





…分かっててはぐらかそうとしてるってのに


どうしてこうもいらん事を聞いて
余計なことに首を突っ込む輩が多いのやら





「休み時間の合間 しかも他ならぬ
教師からの依頼で作らせてもらってます
…誰にも迷惑はかけてませんが?」


教師が!?誰の頼みだ!」


「顧客の情報は機密になってますんで」


「言わないのであればオレが直接教師達を
問い詰めてでも「告げ口しても構いませんが
恐らく客の誰かに揉み消されますよ?」



意図的な低い声音と物騒極まりない発言に
黙り込んだ相手へ


わざと間を作り、ゆっくりとささやく





「…安心してくださいよ ユーマさんの
周辺じゃ使ってませんから」


当たり前だ!というよりお前
そんなものを使って一体何を」


「それより妹さん来てますよ…オレと
話してたらそっちに割く時間が消えますけど?」





未だに不満そうな目でこちらを見据えていたが


授業開始の時間まで間もないのもあってか
待たせた相手への元へ足を運ぶ







オレは残り少なくなった時間を作業に当てるのを
早々で諦め それを眺めながらぼんやり思う





…ユーマさんは真面目と言うか熱血と言うか

姉貴と同じ"正直者はバカを見る"タイプ


でもその人柄と実力を見込まれてか

この人の周りにも、誰かしら集まる


今も似た性格の幼馴染やら
同じ部活の野球部の女も寄ってきて話をしてる







「…と何かあったのか?」


「いや、特に何も無い 心配するな」


「オレはアイツあんまり好きじゃねぇなー
先輩と違ってスッゲー根暗っぽいし」


「ちょっと…そんな事言ったら失礼だよ」





"いかにもこの生活を楽しんでます"って
言いたげな面が並んでいると


つい憎まれ口の一つも叩きたくなる





だから敢えて興味のないフリで
極力、その手のタイプを遠ざける


…仲のよさげな"輪"に今でも嫉妬する

オレの内面へ、踏み込まれないように









移動中、ルービックキューブを弄り回して

さほど労せず二面から六面を揃えれば





「へぇー、上手いもんだねアンタ」





前からやって来たのはあの女と友達っつー
生徒会執行部の白龍使い





って言ったっけ?好きなのソレ


「……まぁそこそこは」


そう、と答えた次の瞬間 他の奴に呼ばれて
相手はオレから離れていく





あの女と友人関係だからといって
良くない評判も多いオレへ


ワケ隔てなく明るく接するあの態度は





…どこか、アイツに似ている気がした







クラスに戻れば戻ったで、そろそろ
教師が来るにもかかわらず何人かが寝てる





その内の一人は鳳雛族と逆式なんぞした
学園きっての問題児





居丈高に"強き者と戦うは私の宿命"


気違い染みた発言をかまして手当たり次第
校内外問わず騒動を起こす札付きのバカ





病弱だか何だか知らねぇが、以前一度だけ





「貴様があのの弟・か…
精々、私を退屈させてくれるなよ?」






と一方的に絡まれた際は
本気でこの世から抹消してやろうかと思った







…今は生徒会長の吉川ヤクモに標的を
絞ってるし、こっちに火の粉はかからんが


勿論こんな男は 起こしてやる義理など無い


席が近かろうが教師の体罰を受けようが

知らん顔してればどうって事はないしな









退屈すぎる授業が終わり


あの女との待ち合わせまでは間があったので
適当に時間を潰そうかと廊下を進む最中





君!お姉さんが呼んでるわよ!!」





天流クラスの双子の喧しい方が、威勢良く
オレへとがなり立てる





ねぇ聞こえてんの?返事ぐらいしたら」


「聞こえてるよ一々がなるな」


一言それだけ吐き捨てて踵を返せば





「ってちょっと、何よその素っ気無い態度!


「お前はすぐ人にケンカを売るな」





バカみたいに声を張り上げた妹
やる気の欠片もねぇ兄貴が諌めるやり取りが
背後で展開していた







ごめんね、こんな事を頼むのは
悪いかもしれないけど…」





部室に鍵を忘れたままで施錠をして出て行った
バカな部員のポカミスの尻拭い


それを頼む姉貴の面は、心底申し訳なさそうだ





快く引き受ける便利屋ってワケではないが


義理の弟如きに本気で頭を下げる
人望厚き姉の頼みを断ることは出来ない





「…ちょっと退いてろ」





端的に言って群がる奴らを退かせて扉に張り付き


忍ばせているツールを鍵穴に順で差し込んで

手早く要領よくカチャつかせてやる





部室程度の施設に電子管理や特殊形状鍵なんぞ
使われないから、五分もかからずドアが開く





「おら開いたぞ」







やや遠巻きにする部員どもの只中、姉貴だけは
ニッコリと嬉しげに笑っていた





「ありがとう…





オレは答えず、そのまま奴らを背にする









気が変わり…久々に部活に顔を出せば
顧問が妙に嬉しげな笑みを浮かべて寄ってくる





おお!じゃないか、久方振りだな」


「どうも…最近訛ってたんでちょっと
鍛えていこうと思いまして」


「そうかそうか、ならみっちりやって行け!」





稽古をしていた他の奴らはそれなりに
驚きを顔に表してはいたが


オレは特に何も思わず、そこそこ
真面目に集団の中へと加わる







宣言通りの容赦ない稽古が終われば辺りは暗く





いい具合に待ち合わせの時間が近いから

そのまま現地へと向かう…途中で


妖怪の群れがオレへと狙いをつける





疲れてるってのに…タイミングを
考えやがれバカ野郎





符を出しつつ降神したへ告げる


五分で刻んどけ、後始末はやる」


「了解…全く面倒な妖怪ども…」





深い落胆の溜息とフード下からの
陰がこもった視線は、今更なので無視した







さして時間も取られず駐輪場へたどり着けば
やはりあの女は来ていやがらない





「いつも指定しといて、あのバカ女
指定時刻から三分過ぎたら帰ってやる」


『せめて五分は待ちなよ…いつもの事じゃん』







苛立ちながら相手を待ち、約束の時刻を
二分と半過ぎた辺りで人影が現れる





…が それはアイツでなくて

同じ地流クラスの、バカ面の先輩格





「ちょうど良かったぜ、なぁ
自転車のカギ無くしたから開けてくんねぇ?





ニヤニヤ笑いながら指差すのは
そこそこ値の張りそうな 新品に近い自転車





すかさず脳内のデータベースが、こいつが
チャリ通ではない事実を弾き出す


ついでにこのバカがロクでもねぇ不良って事も







別に他人の自転車パクろうと

それで揉め事が起ころうと知ったことではない


但し、絡んだ途端にオレまで
下らねぇ面倒に巻き込まれるのはゴメンだ






…ゆえに表情を変えずに言ってやる





「じゃ手数料で300万先払いで」





不良程度には到底払えない額を叩きつければ


バカ丸出しの面が更に醜く歪んで
怒りに任せたままオレへと殴りかかる





あっさり避けて軽い足払いで転ばせ


起き上がるよりも早く加減ナシで腕を踏めば
喧しい悲鳴が漏れた


「悪いけどオレ有段者っすから それと
仕返しとか考えない方が身の為っすよ?」





薄く笑いながら、歯を剥き出して唸る
バカ面の耳元へと口を近づけて呟く





「…テメェの個人情報全部晒して人生破滅とか
家宅侵入程度は朝飯前だからな?」






それを枕詞に適当な情報をニ三個持ち出せば


根性のねぇバカ先輩は無様に面を
青ざめさせてその場からトンズラこいた







「ったく、無駄に体力使わせやがって…」


『ぶっちゃけさっきの…ヤクザの手口みたい』


「黙れ陰気式神」


僕のこと言えた義理じゃないのに…と
愚痴るを放っておいて





「それよりあのバカ、まだ来ねぇのか」





吐き捨てれば まるで見計らったように
あの女が駆け寄ってきた





ごっめーんくん、待った?」


遅ぇ どれだけ人を待たす気だ
罰として情報料三割増しな」


えぇっひど〜い!ほんの十分ほど
来るのが遅れただけじゃん 見逃してよぉ」


「巫戯けんなバカ女





悪態を突きつつもヘラヘラ笑うこの女に
引きずられる形で 苛立ちははや諦めに変わる





…全く、バカしかいねぇのかここは


まあ マシなバカと付き合いがあるだけ
不幸中の幸いではあるがな








――――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:初!学パラ出演〜!!てことで
色々とキャラを思い返しつつ書いてみました


ユーマ:しかし相変わらず版権キャラとの絡みが
二人ぐらいしかいない上 会話も少ないな


狐狗狸:それはまぁ…匿名ながら第三学年の
夢主様方を出演させた都合と言うか…
勝手にお借りした方々失礼しました!


あと最後の先輩は適当に作ったモブキャラです


ユーマ:その上、はあんなに裏が
ありすぎるキャラだったか?


ゼンショウ:初の絡みとはいえ、どーも
後付け過ぎる気はしてるんだよなぁ


狐狗狸:…それは彼を今まで表立って書かなかった
ツケでもありますスンマセン




この子には突発ながらも学園とかの暗部
担ったりすればいいなー、と勝手に妄想




さん そして読者様、ここまで読んでいただいて
ありがとうございました!