授業が終わった放課後


はファンクラブ会員として外回り活動を開始していた





と、言ってもヤクモ関連の情報収集や
学園内だけの本人ストーキングなのだが







「きゃ〜ん、あれはヤクモ様!?







誰かと話しながら通り過ぎるヤクモの姿を
数メートル向こうの廊下で見かけ





すぐさま数歩後ろへと移動する







生徒が少なくなる放課後でも闘神符を活用し、ヤクモに
その存在を気付かせないよう背後へと回る





間違った闘神符の使い方をしている、とか


探偵として食っていけそう、とかのツッコミは
この際置いておいて







ともかく彼の背後へ回った





そこでヤクモと話していた誰かを認識した







「え…またさんと一緒…!?」







スラリとした金色に近い茶髪で、どこか
外国人のような整った顔立ち





真剣な面持ちで会話を交わすのは







第六学年の 












〜じゃんけんぽん!〜













この学園には有名な生徒が数多い





やヤクモも言うまでも無くその一人で





ヤクモにいたっては 学園内二大ファンクラブ
と言われる程の規模のファンクラブが存在し


会員達(むろんほぼ女性)は日夜 その動向を
追ったりなどを常としている







そんな彼女達を最近賑わせるニュースは





当然 の目撃した
「ヤクモとの密会(?)現場」











「あの二人、最近良く一緒にいるわよね」


「目撃談によるとさんは真剣に何か
話してて ヤクモ様が戸惑ってたらしいわ」


「それってやっぱりさんがヤクモ様に…!?





緑ライン制服の女子の言葉にかぶせるように
赤ラインの子が叫びだす





まさか!あの人は極度の親バカのはず…!」


「だからと言ってあの人とて一人の女よ
可能性は捨てきれないわ!」





返す青ラインの一言に、側の一人が誰にともなく





さんなら闘神士の実力・学業の成績・容姿 人望 どれ一つとってもヤクモ様と釣り合うわ…」


「候補から外してたけど、もしさんが
ヤクモ様狙いだとしたら 厄介ね…」


「でも、仮にそうだとしたら 私達に太刀打ちできるの…?」







会員の女生徒全員が 長い唸りを上げる







「ウワサじゃ不動金縛りも使えるって話だし…」


「例の事件で、式神が使えなくても
鬼子母神のような活躍を見せてたわよねぇ」







深刻な面持ちで様々な言葉が飛び交い
それがまた会員達を尻込みさせる









埒が明かないと思ったらしく







「ねぇさん、あなたさんと親しいわよね?


「え、はい それなりには〜」







年上らしき会員が代表し、にこう言った







「さり気なく 彼女がヤクモ様と何を話しているか
リサーチしてきてもらえるかしら?」













「うにゅ〜…メンドウなことになったなぁ」





ユウウツそうにため息をつく









あの後、会員達の雰囲気に押され





自分自身も二人のことが気になり
断ることが出来ず、リサーチすることになった









「でも 本当にさんがヤクモ様に
モーションかけてるのかしら…あ、見つけた!」







首尾よく目標の姿を見つけ、闘神符で
姿を隠してコッソリと尾行を開始した









今日もウワサの二人は廊下を歩きながら
話をしていたりする





「どうしてもだめかしら ヤクモ君」


「いや…お気持ちはわかりますが…」





真剣なと、なにやら返答に困った様子のヤクモ







ここだけ見れば交際を言い寄られているように
見えなくも無い…が、そういかないのが
たる所以







「生徒会長の権限で犬禁止条例とか
保護法とか付け加えられない?」


「いやあの、そういうピンポイントなモノはちょっと…」


「付け加えるのがダメなら せめてソレに近い
案を出すとか、購買に護身用グッズの追加を」


「無理なものは無理ですって
頼むから現実を見てくださいさん





真面目な顔でサラリとモンスターペアレンツ顔負けの
発言をかます彼女の対応は ヤクモでなくても困る









二人のそんな会話を聞きながら







(よかったーやっぱりさんはさんだ)







ほっと胸を撫で下ろして安堵するも、すぐさま
は新たな不安に駆られる







(でも…何かの弾みでヤクモ様が さんに
恋しちゃう事だってあるかも…!)









再三言われているが、彼女は学園内でも
高い実力と美しさを誇る





人徳も高く、ヤクモと会話を交わす姿も
目の当たりにしても確かに違和感は無い





以前の式神を溺愛する親バカさえなければ


正に非の打ち所の無いお姉さんで、
誰だって彼女に惹かれるであろう





それは、ヤクモも例外ではない









(万が一が起こる前に…さんを
なるべくヤクモ様に接触しないようにしなきゃ!)








どこか間違った使命感を抱き、
符の効果を解除して姿を現すと







「ねぇ、いっそ私が第五学年の天流クラスに
留年して転入しなおせないかしら?」


「それも無茶ですから あと
そういう事は先生に直接頼んでください!」








いまだにヤクモに無茶を言い続けている
の背後に駆け寄った











さん じゃんけん勝負をしてください!」


「えっ、ちゃん どこから!?」


「じゃんけん勝負って?」





驚くヤクモとたずねるに、しかし彼女は答えない





「勝ったら二人のジャマはしません、でも
負けたらあたしと話をしてください!!」


「いやあの意味が分からないんだけど
それよりちゃん、どこから…」





尚もたずねるヤクモだったが





「ヤクモ君 ちょっと静かにしててね」







が人差し指を当てて、ささやいたため
仕方なく口をつぐむ







「ねぇちゃん、勝負事はあまり
好きじゃないの まずは何があったか教え」


「更に負けた場合は一日貸し出し!」





その一言にの表情があからさまに変わった





「―いいのね?ちゃん!」


「もちろんです!三回勝負ですからね!」


「わかったわ、本気で行くからね?」







廊下が異様な空気に包まれる中、







「なぁ さんにちゃん
…先に行ってていい?仕事残ってるんで」





離脱を試みたヤクモの一言はあっさり一蹴された





「悪いんだけどそこにいて、ちゃんが
負けた時は話の続きをしなきゃいけないし」


「ごめんなさいヤクモさん 公平を期す為に
じゃんけんの審判を頼んでもいいですか?」


「え…お、オレが!?





戸惑うヤクモを他所に、二人の女の
これ以上ない真剣なじゃんけんが始まった









お互いが相手の手を思考しながら自分の手を繰り出し







一回目はあいこを連発しながらもが勝ち、
続いてはが一度で勝ちを拾う









「次が最後ね…!」


「絶対、負けられない…っ!」






最後の勝負をするため腕を振りかぶる二人は
実践時のような闘気を宿している









「…二人には悪いが、今の内に」







もはやカヤの外のヤクモがその場を退散しようとして





「「いたっ!」」





向こうから来た誰かにぶつかった







「すまない 大丈夫か?


「いや、俺の方こそすまねぇ」







謝った相手の声に反応し、
じゃんけんを中止しそちらを見る







「「、何してるの!?」」


「え、あー…いや 何でもねぇんだ」





は自分が来た方をチラリと見てから
気まずげに言葉を濁す





「…ひょっとして、今日は例の補習の日?


「あ、今シッポがビクってした」





ヤクモに続いたの台詞が、彼女が
現在置かれた状況を裏付けていた







が、ゆっくりとに歩み寄る





 補習はキチンと出なきゃダメよ」


「う…」







てっきり彼女をかばうかと思われただけに





至極まっとうなその言葉に、全員が眼を丸くする







「わかっちゃいるんだ、けどな…」


「アナタの言いたいことはわかるわ」







やさしく 諭すように彼女は続ける







「豆芝が進化した程度の分際で、教師の式神として
補習対象者を追い掛け回すなんて間違ってるわよね?」






表情は笑顔だが、まとうのは苛烈な鬼気







いつも通りといえばいつも通りのその姿に
慣れててもやっぱり三人は軽く引くわけで





「いや違う違う式神はそーいうもんじゃねぇからっ」


さんその闘神符 明らかに
だのだの書いてあるんですけど」





しかし二人の言葉は全く耳に入らず





「大丈夫、ちゃんと害悪犬を排除してから
補習教室まで案内してあげるからね?」







親バカモードのをしっかり
抱きかかえたまま 向こうの廊下を睨みつける









説得は無駄、と悟ったらしく


ヤクモがため息をついてを見る





ちゃん、廊下が戦場になる前に
この場から逃げようか?」


「そうですね お供しまーす」





短いやり取りの後、頷いた二人は
を置き去りにして逃げ出した








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:タイトルのじゃんけん勝負ほとんど
意味ない終わり方でスイマセン


ヤクモ:いきなり平謝りって…というより
時間軸がかなり説明不足なんだが


狐狗狸:一応、が二人を目撃したのが
翌日以降に広まって談合→また放課後って流れで


ヤクモ:恋愛絡みになってるのはいいとしても
かなりアバウトだな…色々と(嘆息)


狐狗狸:正直、無自覚と勘違いの三角関係
勝負に負けて試合に勝った的なオチを
目指したので 他の所が曖昧になったざんす


ヤクモ:さんも…まあ親バカがなければな


狐狗狸:ねー(苦笑)




まともな三角関係の書けない管理人で失礼しました




ここまで読んでいただいてありがとうございました!