補習の場合 通常は三人以上の複数で行うものである







しかし、特別に呼び出された生徒が要る場合は
一対一になることもある











「…不満だ」







補習のため使用している空き教室で、
机の上の課題から目を離さずこぼす







「何がご不満なんで?」







笑みを崩さず オニシバがたずねた







「なんで二人っきりなんだよ しかもお前と


「仕方ねぇでしょう、旦那は校長に呼び出され
やしたから必然的にこうなるなぁ当たり前」







ダン!と叩いた机の音で、言葉が遮られる







「そうじゃなくてっ、普通補習っつったら
他にも生徒いるだろ!?なんで俺だけなんだ!









現在 この教室にいるのは二人だけである







彼女の言う通り、通常の補習授業は数人の生徒を募る筈…









肩を竦めてオニシバがもっともらしく言う







「今回は特に単位の足りない人を集めたんでねぇ
…他の生徒にゃ一足早く逃げられやしたが」







しかし、







「お前それ教師の式神として失格だろ





間髪いれずに放たれた一言でぐ、と唸り
言った当人はその様子を無視して課題に専念する











「珍しく補習授業に参加したと思ったら…
態度だけは変わりやせんね


「悪かったな」







もはや定番の皮肉も一言でキッパリ言い捨てられた









いつもならばは、補習を呼びに来る
オニシバから逃げ出すのだが







流石にそろそろ単位がヤバイと察したのか





今回は大人しく補習についてきたらしいが







…それでもこの状況は気に食わないようだ












〜ここは学校だ〜













そんな二人の様子を移すモニターを囲み
職員室には人だかりが出来ていた







「へぇーあの狐っ子も真面目に補習やるのね」


「オニシバなんかニヤニヤしてねー?
他の補習者いなかったとか絶対ウソだろ」


「用が無いなら生徒はさっさと職員室から出て行かんか!」


「いいじゃんクレヤマ先生ー監視する人が増えたってことでさ」







モニターのよく見える位置に教師が数人陣取り
周りを生徒達がたむろしている











特別に補習対象がいる場合や、







厳重注意の呼び出し もしくは進路相談などで
生徒と教師が二人きりの場合







生徒の逃走や危険行動、外部からの乱入等
そういった事態の想定や対処
…という名目で
他の教師や用務員などが監視する事になっている









本来なら一人で事足りるのだが





今回はテストの時期も重なって来ているため
教師陣も中々忙しい







その為 巡回時などにも使用される
特別製の小型監視カメラを使い





映る映像を職員室にて教師が最低一人は
見張る…という形になった













そこで物見高い教師や生徒の口から、
このライブ中継があっさり広まり





なにやら面白い物が始まった、という事で







野次馬ついでに監視の目が増えたのだった













「ぶっちゃけ、あの二人脈アリかな?」


「いやーのあの顔見るに、それはないでしょ」


「でもツンデレだったらあれ愛情の裏返しだよねー」


「ちょっ、こら 押すなお前たち!









画面に視線が集中する中 ガラリ、と職員室のドアが開き―







 が姿を現した









…一体どうした?」


「いえ、さっき教室で あの男とが二人っきりで補習とか
いう話を聞いてちょっと真相を確かめに来たんです







声をかけた先生に息継ぎ無しでそう返すと、





彼女はモニターに向かって近づく









背負った鬼気迫るオーラに 生徒も教師も
気圧され、即座に道を開ける









モニターの前に立ち止まり、は映像を見つめる











「……やっぱり 話は本当だったのね」







整った顔を物凄い形相に変え、彼女は両手に
大量の符を取り出した







「あの男…と二人っきりになるなんて
職権乱用よ!抗議してこなくちゃっ!!」












さん その大量の符は何に使う気なんですか!?」


「おい誰かさんを抑えとけっ!!」







すごい勢いで教室へと向かいそうな
みんなは慌てて止めたのだった











――――――――――――――――――











「…何か いつも以上に視線を感じる」


「言われてみりゃそうですねぇ」







式神の上に勘の鋭い二人は辺りを見回すが





教室の外にあるカメラを操作し、二人の死角に隠したため
気のせいということで落ち着いた







「で、あとどんぐらい残ってんだよ補習の内容はっ」


「あと半分こなしゃ終わりやすよ、そうカリカリしなさんな」







なだめるオニシバの言葉も しかし
機嫌の悪い今は効果がないらしく





「つーかタイザンの野郎何処行きやがった!





怒りの形相で机をダムダム叩く









「まだ校長との用件が終わってないんですよ
…机が壊れちまいやすぜ」


「知るかっ!」







烈火の如く叫ぶとは反対に





オニシバはなお 冷ややかな目をして







「学校の備品 壊したらアンタ、弁償できるのかぃ?」







ため息混じりに吐き出すと、が益々 挑発的に突っかかる









「弁償って、代わりの机でも作ってこいと?


「そこまでしてもらおうたぁ思っちゃいやせんよ
そこまでは、ねぇ









言いながら オニシバがじっと見つめつつへと近づく







始め、割と離れてた二人の距離は、
今や顔の距離が遠いだけで ほぼ隣の状態で









見下ろす視線と見上げる視線が絡み合っている











―――――――――――――――――――――











なにやら漂うただならぬ雰囲気





野次馬達は色々騒ぎつつ 何かを期待し
じっと次の一挙一動を見守っている







「なんかただならぬ雰囲気よねぇ」


「うっわぁ、ひょっとしてこれ教師と生徒の
禁断の恋のフラグだったりする?」


「けっ、けしからん神聖な校内で!」







口々に色々な意見が飛び交いながら





皆は二人の次の行動を注目しようとして―











急に、両者が同時に自分達の方を向いたので
監視していた者達が黙り込む







「ねぇ、私たちの声聞こえちゃったかしら?」


「いいえ スピーカーはオフの筈ですが…」







しかし、は勢いよく立ち上がり
無造作に引き戸の方へ歩み寄ると





勢いよく開けて跳躍し、カメラをむんずと掴んだ









「…ここは学校だろ、見世物じゃねーぞテメーら」







カメラを睨みつける金の目は、画面の向こうの
監視者の存在を見通していたようだ







「タイザンの旦那にこの場を任されたんですが…
あっしが信用できないってことですかね?」









同じようにカメラのレンズを覗くオニシバも少し不機嫌そうだ







「何期待してんのかは知りやせんがねぇ…
さんの言う通り ここは学校ですぜ?











揶揄するような響きに、教師の一人が気を悪くし







カメラのマイクスピーカーをONにして怒鳴る







「失礼なっ、私達は 学校内の校則に基づいて
監視を行なっていただけだ!!」



「うおっ いきなり怒鳴んな!









間近で聞こえた声に驚いて は思わずカメラを手放した







しかし、間を置かずにオニシバがカメラを掴んで









「とにかく、旦那ももうすぐ戻るだろうし
こういう野暮な真似は遠慮させていただきやしょうか」







その言葉を最後にカメラは壊された















ノイズ交じりの画面を見つめて、野次馬していた
生徒(と一部の教師)は残念そうにため息をついた







「あーあ、いいとこだったのにー」


「これじゃ この先の行動見れないじゃない
何であのタイミングでスピーカー入れるのよ」


「あのカメラ壊れた責任 取ってくれるよな?
私は嫌だぞ、絶対に







ブチブチと周囲から攻められ、怒鳴った教師がキレた







「不満げな顔をするなっ ここは学校だろうが!!」















後に監視していた者達が、教室に残されていた
二人の様子をタイザンに聞いたが







"特に何も変わりなし"の一言のみで終わったそうな









…あと、が符縛から解放された後
オニシバをしばいた事は言うまでもない








――――――――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:学パラでまたもや補習授業&あり得ない捏造
本当スイマセン


オニシバ:進歩しやせんねぃ


狐狗狸:ほっとけ


オニシバ:所であの"かめら"とやらは何なんですかぃ?


狐狗狸:話にもあるけど巡回とか一対一の状態の時の対処の
為に使用される代物で、自動操縦も手動も可で飛行型
ついでに警報装置マイクスピーカーもついた優れものです


オニシバ:"はいてく"ですねぇ…しかし あっしはあんなもの
見た覚えがとんとねぇんですが


狐狗狸:そりゃ人手が足りない時の物だし、それにアレ
オオスミ部長のお手製&私物だから(爆)


オニシバ:…勢いに任せて大変なことをしちまいやしたかね?


狐狗狸:んー君なら(腹黒だし)なんとか乗り切れるでしょ
あと、半分は貸した教師側の責任にもなるし


タイザン:オレは今回、名前だけか?


狐狗狸:うん だって校長に呼び出されてたじゃん




捏造具合がヒドイし 夢ってよりギャグ?だしスイマセン


ここまで読んでいただいて ありがとうございました