放課後の下校時間







「「あ」」









学園の廊下で 二人の上げた声がハモる









一人は、マズイ相手に見つかった焦り
隠そうともせず顔に出し







もう一人は、見つけた相手を逃がすまい
狙いを定めた表情で











「待ちなせぇさん!」


「その台詞を言われて 待つバカが
古今東西いたかよ!?」








間髪いれずに始まる追跡劇









どこの学校にお馴染みの"廊下は走るな"の校則は







この学園には 特にこの二人には
全くと言っていいほど無意味なシロモノだ












〜ダッシュ!〜













「今日は完全に撒いたと思ったのに
何処までしつこいんだテメェはあぁぁぁ!!







のその叫びに オニシバは
目頭をそっと抑えて







「悲しいねぇ、進級できない生徒の為を思って
毎回 補習授業に連れて行くのにねぇ」


嘘吐けぇ!絶対悲しんでねぇだろテメェ!!」







間髪いれずに ツッコミ返す







「…まぁそれは嘘にしても、大人しく補習を
受けた方が身のためだと思いやすがね?」











その言葉に、残った単位を脳内で数えてしまって





少し 彼女の歩みが遅くなるが、









「〜っやっぱり 今日はダメだ!
補習するなら、また日を改めてで!!」







首を激しく左右に振って、再び速度が復活する






「いい加減…諦めたらどうですかぃ!









足止めにと オニシバが回天三八式・改で
チョーク弾丸を正確無比に放つが







「当たるかよっ!」







そのことごとくが 避けられ、燃やされ、
打ち返される(ハリセンで)











「ギャー流れ弾がこっちにまでっ!」


「またあの二人が廊下走ってるよ!!」









…攻撃の余波を受けて 被害が器物や生徒等に
拡大するためか





保険委員および美化委員には







"台風一過"とか言われてたりする













今回の勝負は、どうやらオニシバに
軍配が上がったようだ







ようやく捕まえた、さぁ楽しい楽しい
補習授業の始まりですぜ?」









逃げないように を肩に担いで
教室に向かうオニシバの姿は





校内でなければ、まるっきり人さらいである





生徒か教師に見つかれば即、問題になりそうな
状態だが 幸いにも行く手に人影はないようだ









いーやーだー!俺は全然楽しくねぇっ
今すぐ下ろせ!てか帰らせろ人さらい式神!!」








罵詈雑言を捲くし立てながら じたばたもがく





しかし、体格差も力も違いすぎて
無駄な抵抗にしかなっていない







「ちゃんと補習授業を受けてりゃ、
直ぐに帰れやすよ 旦那もそこまで鬼じゃ…」


「そんな悠長な事を言ってられねーんだっ
た、頼む 今回だけは見逃してくれ!


「そいつぁ聞けないねぇ」







その一言で の顔から血の気が失せた







「っ、殺される…!!」









怯えを含んだ、穏やかでない発言に





オニシバの表情が僅かに変わる









「…どういうことですかぃ?」











掻い摘んだ話を聞くと







生徒会長にしてと同じクラスの
ヤクモがどういうわけか、





明日 の家に勉強を教えに行く
約束をしてきたらしく





他のファンクラブメンバーに秘密である事も手伝って







明日の為にかなり気合を入れて
今日から準備をすると息巻いていたとの事











「今日 早く帰って家事を済ませなきゃ
お仕置だって、符を持ちながら言ってたんだ…」


「その話 本当ですかぃ?







疑わしげな眼差しを、しかし問い詰めるわけでもなく







「約束の方は、ヤクモさん本人に確かめてくれりゃ
直ぐ分かるし…」







真直ぐに相手の目を見据えて は続けた







「あいつがヤクモさんに関することで
普通じゃない行動を取るのは知ってるだろ?」










仮にも教師の式神という立場にいるオニシバにも







授業中や、普段見かけるの言動は





神流クラスに 似たような行動パターン
式神生徒がいるせいか







かなり強烈に印象に残っていた











「確かに 譲ちゃんは、兄さんの前でだけ
猫被ってやすねぇ…」


「分かってるんなら、助けてくれよ…」









涙目で彼女は訴えるが、返ってきた答えは
冷たいものだった









「どう言う理由があろうと 補習は補習
諦めてもらいたいねぃ」













諦めたように項垂れるをじっと見ていて











オニシバが、溜息混じりに彼女を下ろした









「…今回だけですぜ?」





「え、い いいのか?」


次回はないと思ってくだせぇよ」









戸惑うをその場に残して







オニシバは廊下を歩いていった













「一体 どういう風の吹き回しだ?」









いつもは 何を言おうとも捕まえた自分を
容赦なく補習に引きずる筈の追跡者が








あっさりと自分を解放して引き下がった事が


には信じられなかった









「でも…助かった、これでに殺されずに済む」







時間を見ると 今から急いで帰れば
まだ何とかなる位の時刻だったらしい







「次の補習の時は 大人しく受けに行くか」





そう呟くと、彼女は昇降口へと走り出した















その頃―――







「…で 結局アイツを捕まえられなかった、と」


「スイヤセンねぇ」







補習教室で対象者に授業を教えながら





険悪な表情でタイザンがオニシバを睨む







「貴様、これで一体何度奴を取り逃がしている!
いい加減にせんと契約を破棄するぞ


「次は必ず連れて来まさぁ それより旦那
他の補習者の方はいいんですかぃ?」







タイザンは 教室で授業を受ける生徒達を
ぐるりと一巡見回してから







「…あとニ、三人ほど来ておらん とっとと
そいつ等を連れて来い」


「了解でさぁ」









オニシバが教室を出て行った後、





憂さ晴らしにタイザンが書き取りを
増やし 補習者の悲鳴が教室に響いた








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:マジで文章更新遅くなってスイマセン!
そして、今回の学パラもアレなネタです


タイザン:やるのではないかと思ったが、とうとう
問題を起こしてくれたな…オニシバ


オニシバ:女生徒の場合は手を掴んでなんですが
さんだとそれでも逃げるんで、仕方なくでさぁ


狐狗狸:仕方なくで人さらいスタイルって…
アンタスゲーよ


オニシバ:野郎の場合だったら 襟首掴んで
引きずりやすがね


狐狗狸:うっわぁ容赦ない


タイザン:補習者に容赦などしていたら、
舐められるだけだと教えている


狐狗狸:アンタも補習者に対して容赦ないね




なんていうか甘いんだか甘くないんだかどっちつかず
まじっスイマセン


ここまで読んでいただいて ありがとうございました