誰かが、むかーし言っていたよ?

"女の子はお砂糖とスパイス、それと
たくさんのステキなもので出来てる"
って


とりわけあたしはお砂糖とステキなものが
とっても多かったんじゃないかしら?





「いや、どっちかっつーとスパイスじゃね?
黒コショウ辺り致死量で入れたとか」


それはアンタでしょ?全く可愛げのない式神ね







…まあ浮いた話の出来ない可哀想な方向音痴の
狐はひとまず放っておいて





だからか あたし達女の子は流行や夢や
恋の話題にめっぽうビンカン♪


特にあたしは楽しい事がとっても好きで

よく友達やクラスの子とか、下級生の子を誘って
色んなゲームや遊びを開催する





「はーいこれで目的地到達したからあたしの勝ち!」


「サイコロで3さえ出てれば逆転してたのに〜」


「でもさんって色んな遊び知ってるんですね」


「ねー ちょっと驚きだよね?」


「えへへ、まーね〜」


こうやって みんなでワイワイ騒げて
笑って遊べる空間は結構お気に入りだから


先生に見つからないようにゲーム盤持ってきたり

みんなで出来そうな遊びやルールを調べたりとか
たまに行っていたりする





……この辺は昔の友達からの影響もあるかな?











〜ムードメーカー〜











とにかく、やや脱線しちゃったけれども





「それじゃー今からルールの説明するね?」





笑ってそう言うと 集まってくれた数人から

一人の手がすっと上がった





「あのっちゃん、ちょっといい?」


「なぁに〜ナナちゃん」





どこか猫を思わせる円らな眼差しを向けて


「どうしてアタシがここに呼ばれてるの?
それと、今から何が始まるの?」






戸惑うように訊ねる彼女へ、あたしは
笑ったままでこう返した





「決まってるじゃない ソーファだよんv」









その新しい遊びを知ったのは…五月頃かな?





学校も休みだったし、普段通りに
『ヤクモ様スクラップ』を整理しながら

何の気無しにTVを眺めていると


定番のバラエティのミニゲームでその競技での
トーナメント戦が行われてた







キャーなにコレ!あんな密着してる〜」


「てゆうか新競技って…何がしたいんだよアレ」







始めこそは異性・同性の区別無くソファの上で
密着しあうその競技に驚いていたけど


繰り出された技の名前やそのバカバカしさ


何よりも真剣に取り組んでる対戦者の
楽しそうな顔に、ちょっと心が疼いた





「……これ、女の子同士で一度やってみたら
面白いか「知らんが俺は巻き込むなよ」


「ちょっ聞きもしないで遮るの止めてよ!」


、お前がそーいう顔する時は
決まってロクでもねぇこと企んでんだろが」


あら失礼ね あたしは学園生活に笑顔と
話題を提供したいだけなのに〜」


「相棒には一番災厄を被るけどな」


その減らず口が無ければ、ボーイフレンドの
一人や二人出来そうなのにこの娘は…







まあ何とかかんとか非協力的な式神を説き伏せて





詳しく調べたルールを元に、自分の中で
納得のいくルールを樹立させて





「…で、早速みんなで遊ぼうと思って
知ってる女の子を呼んでみたの〜」


掻い摘んで説明してみれば、ナナちゃんを始め
みんなは納得してくれてたみたい





…でも何で苦笑いとか溜息とか
頭で手を覆ったりしてるのかなぁ?





「まあ、お前らがそうなるのも分かるけど
のこーいうトコは今に始まった事じゃない

……付き合わせちまって悪ぃな」


「気にしないで下さい、さんはまぁ
悪い人じゃないって知ってますし」


「そうそう まあ少し…いえかなり
人と感性がズレてるってだけだから」





いらん事言いのヒネクレ狐は後でお灸を据えるとして





「それじゃー改めましてソーファのルールを
説明させていただきま〜す」



気を取り直し、あたしは集まってもらった
みんなへ向き直ってそう言った







―ちなみに現在地は、伏魔殿の第七・第八学年校舎


ある空き教室をこっそり陣取って使用中ですv





別に学校じゃない所でも良かったんだけど
思いついたら居ても立ってもいられなくて…


まあ 比較的先生から見つかりにくい場所だし

多分大丈夫なんじゃないかなー、とは思う
(一応知り合いのツテでもらった結界張ったし)







そんな教室の机や椅子は後ろに下げてあって


空いたスペースの真ん中に置いてあるのが
公式指定サイズの簡易ソファ!





さん、これいつの間に作ったんですか?」


「もっちろん ついさっきだよ〜ん」


「ええっ!?それってすごくない!!?」





自慢の式神と演劇部部長の協力と闘神符による
奇跡のコラボレーションで出来てますから♪





「それで、ソファをどう使うの?」


「んー この辺はちょっとやってみた方が早いかな」





笑いかけ、あたしは式神をソファに寝転ぶよう指示


首尾よく横たわった辺りで


「レッツ ソーファ!」


「え、ちょ何でお前もソファに…うぉっ!押すな
押すな落ちるって!止めろコラ…わあ!





掛け声をかけて 隙間から身体をねじ込んで

思いっきり相手を追い落としてソファを占拠し


「こんな感じで、いかにしてソファの上から
相手を落とすか二人で競うのが大原則なの♪」





と、お手本を示してからいくつかのルールを
要点だてて説明してみせる





けれど他の子達はまだちょっと微妙な顔をしてる





「楽しそうですけど 学校でやるのはちょっと…」


「正直女子同士でやって盛り上がるかなぁ」


うぅ…痛いトコ突かれるなぁ





一応 身体を動かす系のゲームだから
そういうのに抵抗無さそうな子に声をかけたんだけど


男の子を混ぜるのは…流石にちょっと恥ずかしいから

結局、声かけれなかったんだよね







「なあ…やっぱり無理に今日やらずに
改めて話し合って、遊ぶ事にしとけよ」





腰を擦りながら呟く式神の一言は正しいけれど


多分、今日のタイミングを逃したら次は無い気がする





……だって そろそろ試験の時期が来るし

そこから先は冬休みだってやってくる





この競技もちょっと下火になってきてるから
きっと来年には忘れ去られてる


遊ぶなら、今のうちしか出来そうに無い







「悪いんだけどみんな、騙されたと思って一回だけ
付き合ってもらえないかな…ね、お願い?





手を合わせてダメ元で頼み込んでみれば





「ここまで来てイヤなんて言わないよ、ちゃん」


小さく笑って、真っ先にナナちゃんが微笑み返した





「私も身体動かすの嫌いじゃないし…」


「それにこんな機会でもなければ伏魔殿の校舎なんて
滅多に入れないし、考えれば貴重な経験ですよね」


「あとさんが"面白い"って奨めてくれる
ゲームにハズレはありませんからね」





触発されるように他のみんなの顔も緩んで





「みんな…ありがとう!」


あたしの中の不安は、一気にかっ飛ばされた









ウチの狐を審判にして ジャンケンで対決する
組み合わせや先攻後攻を決めて


掛け声と共にソファの上で遊び始める





始めたばっかりはやっぱりどこかぎこちない空気が
漂っていたんだけれども





…時間が経つにつれ、少しずつあたし達の中に

熱気って言うか 真剣身が入り始めた







「最初はどうなんだろうって思ってたけど…
やってみると、案外楽しいねコレ


「これ、内輪とか知り合いの間柄なら
案外気軽に遊べそうですね」


「でしょ〜!」







俄然賑やかになる空気に浸りながら、次に
ソファで戦う二人を眺めていると





すっ…と隣にナナちゃんが寄ってきた





「次辺りアタシ達の番だね、それにしても
ちゃん強いよねソーファ 練習したの?」


「ううんそんなには…ナナちゃんだって
さっきの逆転劇、すごかったよ」


負けずギライだからアタシ」





イタズラっぽく笑う彼女は、少し猫に似て見えた





「知ってる…ヤクモさんにも昔からそうやって
勝負を挑んでたんだよね?」


そうそう懐かしいなぁ〜 それで二人で
口ゲンカしてたらちゃんが仲裁に来たのよね」





そう、始めは幼馴染でもある彼女と
ヤクモ様との関係がどうにも気になって


ファンクラブの上位会員である手前

仲をとりなしながらも情報を聞き出すために
近寄っていったんだけど…





色素の薄い長髪をふわりとなびかせながら


明るい笑顔を浮かべて、人懐っこい感じで
積極的に話をするナナちゃんは

"あの子"に近い性格だからか波長が合い





今では…割と仲がよかったりする







「そう言えば、今でもヤクモのこと好きなの?





急に予期せぬ名前が出て 思わず顔が熱くなる





なっ!ななななな何で急にイキナリっ!?」


面白いゲームのお礼に、幼馴染のアタシから
耳よりの情報でも教えようかな〜って」


あるの!?…あ、いや今回は別に
そーいう目的で誘ったんじゃないんだけど!」


慌てて手を振りながら言えば ナナちゃんは
ニコリと笑いながら頷いて





「わかってるって でも、タダじゃ教えない


チラッとソファへ目をやった





「…つまり、ソーファで勝ったらってこと?」


「そう 考えてみればちゃんと
競った事って無かったなーって思って」





そう言った彼女の目はキラリと輝いていた





あたしも、真剣にその瞳を見返す


「それなら全力で戦うよ…負けないからね?」


「そう来なくっちゃ!」







―あたしとナナちゃんの戦いは


お互いもう少しで床に身体が尽きかけるのを
盛り返す、逆転に次ぐ逆転という大接戦に発展し





放課後のチャイムによる撤収で結局

決着がつかないまま終わった"伝説の戦い"として
多くの人達に広まったのでした









……最も、当のあたしは情報を得られない上


教室勝手に使ったのが先生にバレて

お説教の後 反省文書かされたけど








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:題名がまたもや雰囲気(つかこじつけ?)に
なってる点については…開き直ります


ナナ:今回、夢小説として色々消化不良すぎでしょ!


狐狗狸:ゴメン…本当はヤクモさん出すつもりが
絡みが面d(ごほん)諸事情により名前だけに


ナナ:そこじゃなくて、せめてちゃんとの
戦いの場面くらいしっかり書きなさいよ
この話はアタシが主役なんだから!


狐狗狸:ああそっちか…まあ何にせよスンマセン


ナナ:まー遊びについてはアレだけど…題名は
ちゃんにピッタリだと思うわ


狐狗狸:意識無意識関わらず周囲を和ませますしね
(その分 トラブルメーカーでもあるけど)




インドア派なのでたまにはアクティブ系もいいかと
思った次第です…半分は(残りは布教で/諦めろ)




さん そして読者様、ここまで読んでいただいて
ありがとうございました!