これはそう 確か、エド達と会う前
私が「正義」の名しか持って無かった時―









〜私を示す音〜








""という偽名を使うようになった経緯は
今でもハッキリと思い出せる







その時、私は人柱を監視してたけど





足取りを追ってる途中で 路銀が
底をつきかけていた







「ニャハハ、まずいなぁ このままじゃ
宿もろくに取れないよ」







路上で途方にくれていた時、





怪しげなフードの男が近づいてきた









「お嬢さん お金を稼ぎたいのかい?


「まぁね、何かいい賭場とか知らない?」


「だったらいい所を紹介しよう」







言って 渡されたのは一枚のメモ







デビルズネスト?そこで一稼ぎできるの?」


「まぁ上手くいくかどうかは
お嬢さんの腕次第さ」








それだけ言うと、フード男はその場を去った













幸い、人柱はダブリスで少し留まるらしく







私は迷わずその酒場へと向かった









「おい待ちな、ここはガキが来るところじゃないぜ?」







酒場の入り口でゴロツキが生意気にも通せんぼ







一稼ぎできるって聞いたから来たの
通してもらえるかな?」


そっち目当てか、しかしもう一度言うが―」


怪しいフードの人にこれもらったんだけど?」







ピラっとメモを見せると、ゴロツキが身を引いた







「いいだろう、通れ…お前の名前は?」


「名前なんてどうでもいいでしょ?」







ニッコリと笑いながら、私は中へ入った















「ニャハハ〜ぼろ儲けぼろ儲け!
笑いが止まんないね、こりゃ♪」







初日でいかにも柄の悪そうなオッちゃんが





私をカモだと勘違いしてポーカーに誘ってきた







前に別の場所で相手をコテンパンに負かして
二度と勝負が出来なかったことを思い出し







絶妙な勝ち方を続けたら、







その日からカモが私に勝とうと
群れを成して寄ってきた





お陰で宿代どころか資金潤沢☆









「さてと、もうここらで引き上げようかな」







そろそろ店の人間かカモの誰かに
イカサマがバレるかもしれないしね♪











外に出ようとして、気がついた







店の中にはいつの間にか客がいないこと







かわりに出入り口を固めるように
ごろつきが数を増していること







そして、大き目のソファに
ニヤケ顔のグラサン男がいることに









「イカサマポーカーで荒稼ぎしといて
ズラかる気か?ネェちゃん」








ニヤケ顔男がグラサンを外しつつ
私にそう言う







「ニャハハ〜何の事ですか〜
私は普通の客なんですけどー」


しらばっくれても無駄だぜ?
その根性は見上げたもんだがな」







ちぇ どうやら全てお見通しってわけか





はぁ、とわざとらしくため息をつくと







ナイフを取り出して 構えながら
私は相手を見つめて笑った







「仕方ない、あんた等を殺して出て行くよ」


「そいつは無理な相談だな」







ニヤケ男がそう言った途端、









あいつの掲げた右腕が肩の部分まで
丸ごと黒く 硬そうな何かに変質する







「お前の持つナイフ如き、オレの
最強の盾だと逆にへし折っちま」







能書きを無視して 右腕を切り落とした







「どれだけ硬度があろうと、この
ナイフの前じゃ無意味だよ」







けど、周りの連中も切り落とされた本人も
表情を全く変えようとしない







「…あれ?」







見る見るうちに、切った筈の右腕が再生する







「あれれ、切ったのに腕が生えてきた〜」


「…驚いたな オレの最強の盾
切れるもんがあるとは」







ニヤケ男が感心したような顔で言う







「こっちもビックリ人間が目の前にいて
驚いてるよ、でも 次は再生するヒマも―」









切りかかろうとした言葉半ばで







斜め後ろから 腹部を灼熱が貫いた







見ると、右斜め後ろから刀を刺した男と







自分のお腹を赤く染めて貫いた刀が見えた









口から血が出たからか 男が
ニヤリと笑ってたけど







負けじと視線を向けて、笑い返しながら
そいつのがら空きなどてっぱらに蹴りを一発







お腹を抑えたそいつと 周りの奴等が





驚いた目で私を見ていた







「残念でした 私もビックリ人間なの」







言いながら、私は刺さった刀を身体から引き抜く







刀が抜けたそばから 傷口が再生する様
周りの奴等は目を丸くして見つめてた











口を開いたのは、腕が生えたニヤケ男だった







「ほぅ、同族か…オレの名前はグリード
聞いた事があるだろ?」







男―グリードは言いながら、左手の甲を見せる







そこにはウロボロスの刺青があった







「…ああ あんたがグリードなんだ〜
確かに欲深なセクハラ親父っぽい顔してるね」


「出会い頭に言いたい放題だなオィ」


「てめっグリードさんに何て口聞きやがる!!」







険悪な顔で睨みつけるごろつきどもを
私は口をふきながら一瞥して、







「別に戦ってもいいけど、あんた達ぐらいなら
殺しちゃうよ?それでもやる?」









不敵な笑みを浮かべてそう言うと、





奴等はあっさり黙った







やっぱり普通の人間じゃ根性ないんだね
まあいいや、これで話が出来る







「初めまして 私の名前は"ジャスティス"
あなたの後に出来た兄弟って事になるのかな?」







言いながら、左肩の刺青を晒した







「ほう それがどうして人のシマで
イカサマポーカーやってんだよ」


「主に人柱の監視って事で活動してるけど
資金が乏しくなってねー」







ニャハハと苦笑しながら視線を巡らし







「したらそこの怪しいフード男
ここの地図を書いたメモくれたんだ♪」







指差すと ビクッと振るえるフード男









グリードは困ったように頬を指で
ポリポリ掻きながら呟く







「ビトーか…まぁ、仕方ないな
カモを探せって言ったのオレだし」







ふ、と笑って グリードが言う







「まあイカサマの件は水に流してやる
気に入ったからなお前のこと」


ラッキー、じゃ 帰ってもいいんだね」







早速帰ろうとするけれど、グリードが
いつの間にか腕を掴んでた







「帰る前に一つ教えろよ
…お前 本体の名前は?







私は 腕を振り払いながら







「さぁねそんな昔の事は忘れたよ、それに
私達に"この身体の名前"なんて無意味でしょ?」







肩をすくめて言う私に、
グリードは可笑しげに笑いながら







「まーな、しかし仮の名ぐれぇ
持ってても損はねーだろ」


「…うーん ラストは偽名あるけど
私に偽名なんているかなぁ」









少なくとも、人柱や他の人間達と
接触する機会は今の所無いしなぁ…











そんな私の心の内を読んだかのように







人差し指を立て、グリードが言った







ってのはどうだ?」


「…悪くないけど、何か企んでるでしょ?」







私の言葉に 不敵に笑うグリード







「当たり前だ オレは強欲だからな
金も女も気に入った奴も、全て手に入れる男だ」


「ふぅん それって勧誘?」


「バーカ違ぇよ、オレの女になれって
口説いてんだよ 


「ニャハハ〜悪いけどアンタは
タイプじゃないよ」







グリードの言い方は気に食わないけど









 この名前は本当に悪くない







「でも名前はありがたく使わせて
いただくよん じゃーねー」







言って、出口を塞ぐごろつきどもに
退くように命じながら







私は店の外へと無事に出た








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:あくまでもこれはグリード夢と言い張る私です


グリード:何の手出しもしてねぇのに
夢とか偉そうに言ってんじゃねぇぞ


狐狗狸:いやだって嫌われてるのに手出しも何も


グリード:そんなの関係ねぇよ、オレは強欲だからな
いずれのことも手に入れるぜ


狐狗狸:…しつこい男は嫌われるよ?


グリード:嫌よ嫌よも好きのうちっつーだろが


狐狗狸:そこまで言うなら止めないよ、まぁ頑張れ


グリード:棒読みじゃねぇか 頭カチ割んぞ




ほぼオリジっぽくてスイマセン…次こそは
甘くなるよう努力してみます


様 読んでいただいて
ありがとうございました!