筋が通らない「悪」「悪」のまま
でも、通してしまえば「正義」に変わる









〜勝負師の一時〜








「全く 連日雨続きで嫌になるな」









窓の外を見つめながら、ロイは
ゆううつそうに呟いた











彼の気分が沈んでいるのは 外の天候と、





机の上に山と詰まれた書類が原因である








「気分転換に外に出たいものだが
この雨では ろくに外出もできんな」









ため息吐きつつ 机に向かい
黙々と仕事を始めるロイ











そんな彼のいる部屋のドアが、


前触れもなくけたたましい音を立てて開いた







「ニャハハ〜こんにちは、無能大佐!」









身構えていたロイは ドアから現れた
来訪者の顔を見るなり





苦笑交じりの笑みを浮かべた







ちゃんか ビックリさせないでもらいたい」


ヒマだから遊びにきたよ〜」







ロイの様子を無視して、あっけらかんと
言い放つ









ワザワザ私を訪ねてきてくれたのは
とても嬉しい、しかしだねちゃん」







言いながら、ロイはわざとらしく
机の書類に目線をやって







「私には仕事があるのだよ…遊びたいなら
仕事が終わってからゆっくり」





しかし彼の言葉を遮り
はへらへら笑って言った





「どうせヒマしてたんだからいーじゃん!
チェスでもやろーよー」











彼女の言葉に 大佐が目を輝かせる







「ほぅ…君はチェスが出来るのかね?」


「ニャハハ まーね、大佐もやるでしょチェス位〜」







言いながら が背中に背負った
ザックから、チェス盤を取り出す









「退屈しのぎに 一勝負くらいは付き合ってよね?」





チェス盤掲げて、がニャハハと笑う







そこでロイは ニヤリと微笑んで





指を組みながら提案した





「普通に勝負するのもいささかつまらないから
何か賭けようではないか?」


「いいよ〜お金?それとも命?







の物騒な発言に、しかし
ロイは眉一つ動かさず







「仕事中の貴重な時間を割いて遊ぶのなら
私に決める権利があるだろう?


「ふーん まぁそれでもいいけど?」









のその言葉に







大佐は我が意を得たりと言わんばかりの
顔をして、こう言った









「…私が勝ったらちゃん、君は私と
デートをする事にしよう



「うっわぁ下心丸見え〜それが狙いなんだ〜」







しかし は微笑んだ顔を崩す事無く







「じゃーそれでもいいよ その代わり
私が勝ったら、二週間デート禁止ね☆」





その発言に、逆にロイが顔をしかめた





「……それはちょっと勘弁して欲しいな」


「賭けの対象は大佐が決めたんだから
こうなるのは当たり前じゃん☆」







は ロイの方へすいっと顔を近づけ







「それとも、大佐は勝つ自信ないの?





挑発交じりでそう言った











…その一言に、ロイは不敵な笑みを返す







「いいだろう それじゃあ始めようか」









言いながら ロイは書類を少しどけて
チェス盤が置けるスペースを作った







そうこなくっちゃ!言っとくけど
私 強いからね〜?」













雨音が室内を埋め、二人の戦いは白熱した















そして、何十手目かののポーンが
キングへ最後の詰めを仕掛けた











「チェックメイト!」





「な…何故だ…!」









もうにっちもさっちも行かない状態に
追い詰められ







ロイは己が負けたことを悟って愕然とした











「ニャハハ 私の勝ち!
大佐ってチェスでも無能なんだ〜」


「む…ちゃん 私は君を甘く見ていた」







悔しそうに ロイがを見やり







「しかし 私がここまで完膚なき
負けたのは初めてだ…」









搾り出すように呻いたその言葉に





が得意げに笑って答えた







「当たり前じゃん だって私
放浪してた頃、コレで稼いでたもん♪









「は 初耳だぞそんなこと」





意外な発言に ロイは目を丸くする





そんなロイにはお構いなしに









「トランプとかーそーいう賭け勝負で
負けたこと無いんだ〜知らなかった?







喋りつつ わき目も降らずに
はチェス盤を片付けた









「と言う事は…イカサマをしていたのか
さっきの勝負!?」







問い詰めるロイに は指を軽く振って







「さっきの勝負はイカサマなしだよ
怪しい動き 別に無かったでしょ?」









顔を近づけて言ったその言葉に
ロイが思わず沈黙したのを見て取ると











「それじゃー約束守ってね 無能大佐☆







ニャハハ、と実に嬉しそうに笑って





は部屋を出ようと歩き出した













「…ちゃん 私は諦めないからな
次こそは、君を負かしてみせる









その言葉に 彼女は振り向いて











もう少し腕前上げてから言ってよね
相手にならないから じゃーね!」







言いながら、静かにドアを閉めた













後には 敗北感を胸に抱きながら
書類を睨みつけるロイだけが残された















……その後の二週間、ロイは約束通り
デートの予定を断り続け







代わりに 仕事の合間チェスのトレーニング
している所も目撃され







東方司令部内で噂になったとか








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:鋼で雨の日ネタを書きたくて、安直に
雨の日=無能で大佐夢にしてしまいました


大佐:折角 私がメインなのに、酷い扱いだな


狐狗狸:のキャラが腹黒だからね〜
オリキャラの次くらいに(苦笑)


大佐:しかし、わざわざ私の所を尋ねたということは
ちゃんは私に脈アリと見ていいのかな?


狐狗狸:いや 作中通り暇つぶし&からかい


大佐:……ささやかな希望を切って捨てる奴だな君は




甘いんだかな駄文夢で ガックリさせてスイマセン


様 読んでいただいて
ありがとうございました!