異質を嫌う動物達に好かれるのも
「正義」の成せるタマモノかな?









〜wile tamer〜








薄暗い地下の廊下で、悲鳴染みた
女の声が耳に入った





イヤです〜!こんな可愛い子を
捨てて来いって言うんですか!?」





って…マーテルの声だコレ







「どーせ耐え切れずに逃げ出すなら
今放り出しても一緒だろうが」





あ、こっちはグリード…おや?


なーんかいつもより不機嫌さ
滲み出てるような気がヒシヒシと


台詞にしても来るモノを拒まない
アイツらしからぬ発言…何かあると見た!







周囲を確認し、目の前のドアを開け放つ





「ニャハハ ハロ〜マーテル、元気?


「あっ元気元気!!」





中に入れば早速マーテルが顔だけを
こっちに向けて返事をしてくれた


狙った通り、他の人達はいらっしゃらない







…いつも余計なのは今も尚
ミョーに渋い顔して佇んでらっしゃるけど





「…ここのオーナーはオレだぞ」


「おやいたのグリード、気付かなかったよ」


「白々しい お前なら入る前から
聞こえてんだろ?どーせ」


「耳がいいのが自慢ですから〜」





冗談めかしに笑って見せてから





「で、早速お褒め頂いた自慢の耳に君らの
言い争いが聞こえたんだけど 原因は何?





と聞けば、マーテルが身体ごとこちらへ向き直り







「この子よ」





腕の中に抱いた仔猫をちょっとだけ持ち上げた





「おやまぁ〜ずいぶんカワイイ猫ちゃんだね」


でしょ!軒下で震えてたのを見てたら
どーしても放っておけなくなっちゃって…」


「でも野良なんでしょ?その子
引っ掻かれなかった?」


「怯えてはいたけど人懐っこかったから
それにちょくちょく餌付けはしてたし」


何処がだ、オレ様には思い切り
威嚇してきやがったぞコイツ」





眉をしかめた約一名が一歩踏み出せば


仔猫がすかさず毛を逆立て奴をけん制した







「…こんな調子だからグリードさんが
この子を追い出せって言うのよ」


そんなの無視無視!アイツの場合
こうなるのは自業自得なんだから」


「おいオレの手下に勝手に指図すんじゃ…」





もう一歩近づいた所で仔猫の警戒が
強まったので、二の足を踏むグリード





「ほーら落ち着きなよ仔猫ちゃん
せっかくのカワイらしさが台無しだよ〜?」


「あっちょっと、危ないよ」





忠告を聞き流しつつ気の立ったままの
仔猫の頭へ掌を乗せると


途端に、猫の様子が変わった





円らな瞳でこちらを見つめ ニャオンと
甘えるような声音で泣くその子を


そっと撫でればグルグルと


喉を鳴らして喜んでいる





すご〜い!あんなに唸ってたのに
が触ったら大人しくなったわ!!」


「素直な動物は邪な気配に一等ビンカンなんだよ
よーしよしいい子いい子」





二人で仔猫を可愛がりつつ


ちらりとグリードを見やれば、あからさまに
面白くなさそうな顔でソファに引っ込んだ









仔猫はしばらくマーテルの腕や
放した床の上でこちらにコビを売り続け





やがて、疲れたのかうつらうつらしだす





あーん可愛い〜ここで飼えたらいいのに」


「ご主人様は血も涙もない冷血漢だからねぇ
里親を探した方がいいと思うよ?」


「誰が冷血漢だ、仕方ねぇだろ
ソイツらの方がオレを嫌うんだからよ」





不貞腐れつつ主人が酒をあおった所で







げっ!また来やがったなテメェ!!
…って何だこの猫は?」


「そういうアンタこそ、何よその野良犬」





小汚い野良犬を後ろに引き連れた刀男君が
出入り口からこちらを覗いていた





「知るかよ 今朝外に出た時から
やたらとしつこくついて来てんだよ」


「ドルチェット、それって同類だと
思われてるんじゃないの?」


「なるほど〜ニャハハ!」


思われてたまるか!テメェも笑うな!!」





でもしょーがないって、君 犬との合成獣だし







「…オレ様のアジトに勝手にワン公を
連れてくんのは感心しねぇぞ?」





苛立ちを帯びつつグリードが立ち上がると
野良犬目指して近寄ってく







「すんませんグリードさん、すぐに追い出」


言いかける刀男君の台詞を遮って





臨戦態勢に入った野良犬がアイツに飛びついた





「「グリードさん!?」」







吠えられて噛まれ、思わず勢いをつけて
犬を放り投げるグリード





「このっ…ワン公が!





大人気ないひと睨みにたじろぐも


野良犬の吠え声は止まない







あーあーあー…不用意に近づくから


落ち着いてた仔猫も隅で怯えてるし





「ドルチェット!アンタが連れてきた
野良犬でしょ!?何とかしなさいよ!!


「だから勝手について来たんだっつの!!」





二人は二人でなんかケンカしてるし…







ため息を一つついて 私は叫んだ





「待て!」







周囲の空気が固まるけど、気にしない







「おいたする子はいらないよ…出てって?





呼びかけつつ開けっ放しのドアを指差せば


野良犬はたちまち耳と尾を項垂れさせ
トボトボとそこから出て行った







「…お前、一体何やったんだよ?」


「普通に言い聞かせただけだけど?」





ニッと笑って見せれば、刀男君は
理解はせずとも納得はしてくれたようだ





「よく分からんがテメェもたまには
役に立つんだな」


「もうちょっとマシなお礼できないの?
にしても、動物の扱い慣れてるのね」


「まーそこそこには」





適当に答えつつ、隅の仔猫を寝かしつける







「…ずいぶんと楽しそうだな


「そりゃーもう アンタのそんな顔が
見れるとは期待した以上だもん」





普段の不敵な様子が、たった二匹の動物に
ここまで崩されるとはねぇ〜愉快愉快♪









深く息をついて グリードは口を開いた





「おいマーテル、猫は毛布つめた箱にでも
入れて上の空き部屋に移しとけ」


「は…はい!」


「ドルチェット、酒とツマミ
これで適当に買って来い」


「分かりましたグリードさん!」







命令を下されて、二人と仔猫が部屋から消える







「…こいつはお前にゃ出来ねぇ芸当だろ?」


「本物の動物の前じゃ 形無しのクセに」





得意げに笑うコイツへ淡々と返す











私が人を捨てた代わりに手に入れたのは
異常な再生力だけじゃなかった





それなりに強まった自慢の耳のよさと素早さ


ジョーカーの持ち主となるに相応しい程の
桁外れな心肺機能







そして…何故か無条件で動物を従えられる力







殆どの動物は人造人間の本性を即座に見抜き
本能で畏怖して牙を剥き出す





けれど私はこの力のお陰か、一度だって
純粋な動物相手に吠えられる事がない


便利ではあるけど…人造人間の中じゃ
一番ショボイ力だ









「どうせならラストとかエンヴィーみたいな
能力が良かったなぁ〜」


 お前がオレのモンになるんだったら
力を貸すぐらいはしてやるぜ?」


「セクハラオヤジに泣きつくのはお断りだね」


「ああそう…けどオレは強欲だからな
手に入らない奴ほど余計欲しくなるんだよ





壁に押し付けて楽しげに笑うグリードが


何をやらかそうとしてるかは
…考えなくても分かる





どてっ腹を刺す段取りが頭を過ぎりかけて







別の物音が部屋へ近づくのが聞こえた







「…おいで!」


「ほぅ、とうとうオレを受け入れる気に
なったっての…ぐあ?!





たわ言ほざきつ手を身体へと伸ばしかけ


直後、悲鳴を上げて仰け反るグリード





その後頭部で私が呼んだ動物―どうやら
怪我した鳥らしい―が襲いかかってた







「グリードさん!大丈夫ですか!!」


「テメッ…ロア、何だこの鳥は!」


「散策中に見つけまして 治療して放す為
連れ帰ったのですが…先程までは
大人しかったのですが、急に…







怒鳴りつけられ、入り口で戸惑う牛男さん





いやー本当 ナイスタイミング!







天罰テキメンって奴じゃない?ニャハハ〜」


「痛っ…こいつを何とかしやがれ!


「それが人にモノを頼む態度かなぁ〜?」


「…よく分からんが、鳥を大人しくさせてくれ
このままじゃ治療が出来ない」





牛男さんに頼まれちゃ断れないなぁ
…鳥に罪は無いわけだし





「了解 じゃこのセクハラオヤジを
大人しくさせるのは頼んだよ?」





不満が奴から飛び出る前に、私は
暴れまわる鳥を自らへと呼び寄せた








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:最終章に入ったことだし、伏線張って
放置してたままの隠れ設定を出しました〜


マーテル:え?そんなのあった?


ドルチェット:嘘クセェ


狐狗狸:…どーせ人造人間なのにウッカリ
動物にフツーに好かれる描写で書いちゃった
私の辻褄合わせですよーだ(いじいじ)


ロア:まぁそう拗ねるな


グリード:しかしよぉ、これ長編でも
出すつもりなんだろ?大丈夫なのかよ


狐狗狸:ええ、その為に設定の続きは
微妙にぼかしてあるでしょ?


グリード:かなり後付けクセェけどな


狐狗狸:ヒデェ!!




デビルズ組三人も含めたギャグのつもりで
お送りし…今では反省してます(意味ねぇ)


様 読んでいただいて
ありがとうございました!