「正義」を背負っている以上は
時を潰す権限は、私にある









〜killing time〜








「地下でも、ここは一応温かいんだぁ…」







シンとした室内で、ソファに沈みつつ
私は言葉を吐き出す







グリードのバカ面をからかってやろうと
いつもいるあの部屋に侵入したら





タイミング悪く入浴中でした







あん…グリードさんったら
エッチなんだからぁ」


「いいじゃねぇか、減るもんでもねぇし」


「やぁだグリードさん アタシもぉ〜」





しかも、女の人と一緒に…さすがセクハラオヤジ







「間が悪いかなぁ〜…ま、特に用もないし
諦めて出ようかなぁ」





と、呟いた言葉…これ実は何度目かのモノ







出ようかな〜と思ってはいるけれど


どうも今ひとつ出る気がしてこない







敢えて理由を言うのなら まず私が
ヒマだからここにそれを潰しに来たこと


次に、外はそれなりに寒い





後はまぁ…何となく気分で、かな?







特に用もないし 居座り続けて


風呂から出たグリードのエロ面
嘲笑うのも悪くないだろうけど





それまでの間 待つのは面倒だし
アイツお気に入りの部下が来ないとも







「あ」







声のする方を向くと、案の定


アイツのお気に入りその一がドアから
こっちを見てた





「えーと…たしかビトーだったっけ」


「誰か来てくれえぇ、あの女がいるぅ!」







フード姿のビトーくんが上げてくれた叫びに
どやどやと他の部下達が集まってくる







先頭の方には見覚えのある相手が三人ほど





「ああ、アンタは前に私のお腹刺したヤツ」


ドルチェットだ!テメェ性懲りもなく
ここに来やがったな!!」


「いーじゃん、ヒマ潰しで来たんだし
アンタらには迷惑かけてないハズだよ」


「そーいう問題じゃねぇ!出てけ!





キャンキャンと噛み付いてくる刀男に





「いくら人造人間とはいえ、部外者に
気安く侵入されるのは困るんだが」


「だって正面から入れてくれるとは
思えないし、息抜きでたまに来るだけだし」





ため息交じりで言葉を交わしてくる
ロアとかいうデッカイ牛男さん







その横からひょろりと出てきて





「来るタイミング悪かったわねぇ


「ニャハハ、実はちょっとそう思ってる」





笑いかけてきたマーテルに私も苦笑で返す





「マーテルっお前いつの間に
顔見知りになった!?」



「二回目に侵入した時くらいからかしら
妙に話が合っちゃって」


「商売女じゃない仲間で女の人って
いないもんねぇ〜ニャハハ」





刀男くんは展開に着いて行けずに
フリーズした模様です♪







他にも何人かの部下が見えるけど


私と正面きって話せるのは、
その三人くらいしかいないのが現状







牛男さんが辛気臭いため息と共に扉を差す





頼むから今日の所は出て行ってもらいたい
グリードさんは風呂に入っているし」


「そのつもりだったけどね〜
どんな変態面で女の人と風呂にいるか
見たいかなーってちょっとだけ興味出ちゃって」


「趣味悪ぃなお前!」





まぁそれに関してはそっちの言う通りだ







、今回はとりあえず大人しく
引き下がった方がいいと思うわよ?」


「あーそう?まぁそこまで言うなら」


「―何してんだお前ら







後ろの方から扉の開いた音がして





ヒタヒタと響いた足音に振り返れば







「キャーッ、ちょっと何ー!?」


「なんか外が騒がしいと思ったら
何でがここにいんだよ?」







そこにはタオルを腰に巻いただけの
変態さ丸出しなグリードがいた





お風呂の方にはいまだに女の人が
二人くらい漬かっているのが見える







「ちょグリードさんっ、その姿はマズイでしょ
せめて服着てからこっちに!」


「別にいいじゃねぇか 減るもんでもねぇし」


「いやこっちとしても対応に困りますから!」





刀男みたいにあからさまに慌てるのもいれば


牛男さんのように"いつもの事"的な雰囲気で
見ていたりするヤツや


ドサクサに紛れて風呂場にいる女の方を
見ようと首を伸ばしてる輩もいる







…ほほう こいつは面白いなぁ





モノのついでに、この混乱を
更にパワーアップさせてみましょうか!







「わいせつ物陳列の罪により
火薬トラップ10連発の刑を執行する☆」








すかさずカバンから取り出したトラップに
点火して グリードの足元で炸裂させる







「どわわわわわわわぁぁぁ!?」





散る火花の熱さと不意打ちに驚いて
少しだけ退いた一瞬





駆け抜けざまに腰の結び目だけを


抜き出したナイフで切り落とした







当然、戒めが無くなったタオルは
ハラリとアイツの足元に落ちる





『ぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁ?!』







部下達の一斉の悲鳴が、部屋中に木霊した













…とりあえず混乱を収め、他の部下達を
ここから追い出して







「まさかお前がこーいう真似するとはなぁ
ちょっと今回のは頂けねぇぞ







三人のお気に入りとお風呂から出た
二人の女の人を前にして


いつもの服でいつものように
ソファにふんぞり返り、グリードは言う





顔はさすがにニヤケ面でなくて
ちょっとだけ不機嫌さを露わにしてる







そして私はと言うと 事が収まってから
キッチリ拳固を頂戴してました







「減るもんでもないって自分で
言ってたくせに〜ウソつき〜


「いや、さすがに全裸
部下達の前でも見せてねぇよ」





…うーん、一応このセクハラオヤジにも
そこまでの分別はあったのね





「とにかく、さっきも言ったが
出て行ってほしい」


「もちろんそのつもり〜ただし、
もうちょっとしてからね」


「ダメだダメだ!今すぐ出てけよ!」


「いーじゃん外寒いんだし、本当に
ちょっとしたらすぐ出てくからぁ」







微笑んで牛男さんに念を押し、そうそうと
マーテルの方に向き直って





「はいコレ、最近流行の香水
そういうの好きって言ってたよね?」





カバンから、前に買っておいた香水を
取り出して渡す







「そうそう これ欲しくってさぁ
ありがとね〜」


「いいのいいの、その代わり」


「仕方ないわねぇ ちょっとだけよ
それくらいはいいわよねロア?」





マーテルの言葉に牛男さんも、渋々
言った感じで首を縦に振る







あ゛ー汚ぇ、モノで釣りやがった!
グリードさんコイツ追い出しましょうよ」


「そーいう偉そうな口は私に勝ってから
言うようにね、刀男くん?」





ニッコリと笑いかけてやれば


ぐ、と言葉を詰まらせて刀男は
こうるさい遠吠えをピタリとやめた









当の雇い主が、私と三人のやり取りを
じっと見つめた後 ようやく口を開く







「お前ら、こっから出ろ…女達もな」







一部不満そうながらも、主人の命令には
逆らえず 三人は部屋の外へ出る









「えぇ〜アタシ達はぁ?


「そんな子に構うんですかぁ?」


「後で相手してやっから、今は出てろよ」





こっちから否定する前に 笑ってグリードが
退室を進め、女二人も三人へ続く









「別に今日くらいみんないても良かったのに」


「いいじゃねぇか、他の奴等がいるより
オレとサシの方が話しやすいだろ?」


「そうでもないけど、まぁさっきの
オネーさん達には悪いかもしれないからね」







近くの棚のボトルをテーブルに置き


コップに注がず、ビンから直接一口飲んで
グリードが私へ問いかける







「で、今日は何しに来たんだよ


「ただのヒマ潰し、さっきの騒ぎは面白かったし
もうちょっと温まったら出てくつもり」


「ヒマ潰しねぇ…お前、ビトーが騒いだ時
何でさっさとズラかんなかったんだ?





あの時お風呂場にいたハズなのに、
そこそこ聞こえてたんだ…





地獄耳は私の特権でしょ?
でも、なんでそんなこと聞くわけ〜?」


ただのヒマ潰しで来てて、オレの部下と
顔を会わせたがらねぇお前が騒がれて
モタつくのは腑に落ちねぇんだよ」


「…女と風呂に入って鼻の下伸ばしてた
エロオヤジ顔でも拝もうかな〜って思って」


「違ぇだろ?」







ニヤリと笑い グリードは私の前まで
近寄ると、顔をぐっと覗き込む







「ひょっとして、お前ぇ
女どもに嫉妬したんじゃねぇのか?









……私が 嫉妬?









「まさかぁ、それじゃエンヴィーだよ」







ふっと笑い返して、目の前のデコを
指で軽く弾いて一歩後ろへと下がる





「アンタは"強欲"、そして私は"正義"
分かりきったことじゃない」


「…ちっ、つれねぇなぁ
相変わらずオレの女になる気はねぇのか?」







腕を引き寄せ、少しだけ肩を抱いて
ささやいてくるグリードの





強めのアルコールの香りが漂う口に
軽めのキスを落として







生まれ変わったら考えてあげる
それじゃ、約束通り出て行くから」







私はその部屋から出て行った









「…ふふっ そこそこヒマは潰せたなぁ」







出て行く前の、あの呆気に取られた
グリードの顔を思い出して笑い





少しだけ足取りをふら付かせ 路地を歩く








――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:前回のグリード話で出てこなかった
デビルズ〜の人々を前面に出してみました


グリード:オィオィオィ、いくら何でも
これじゃオレが変態みたいじゃねーか


狐狗狸:女とジャグジーくらいはやってそうだし
別に違和感はないっしょ?


グリード:途中の下ネタの展開も…別の版権の
影響受けてんだろ、もお前も


狐狗狸:否定はしません(キパ)


グリード:しろよ オチも相変わらず
ありきたりだしな、もっと絡みをだなぁ


狐狗狸:その辺にしとこう マジで
エロオヤジみたいだからアンタ




ついでにちょこっと補足をば


グリードの部下には余り歓迎されてなく
この三人にも深い親交は無いんだけど


マーテルとは妙にウマが合い


後の二人とビトーぐらいは
グリードの口から色々聞くから


大体の詳細は知ってるカンジです




様 読んでいただいて
ありがとうございました!