夢には「正義」も「悪」も絡まない
だから、面白くて無責任









〜prophetic dream?〜








冷房が追いつかない仮アジトの室内で
眼を覚ますと





エンヴィーの顔が超至近距離にありました







「…エンヴィー、今 何しようとしてる?」


「んー が中々起きないから
眠り姫になっちゃったのかなーって」





お互い笑顔で話しながらも、





「はいはい、寝込み襲うのはまた今度ねー」







言いながら 私は目の前の顔を
手で押してどけ、身体を起こす









ちぇー、と残念そうに言ってから







「ところでさぁ、よく寝てたけど
何か夢見たの?」





ニマニマと笑みを称えて、エンヴィーは
またこっちを見る





「ニャハハ それがさ変な夢なんだよね〜
かなりリアルでまるで予知夢っぽくてさ」


「どんな夢?ちょっと教えてよ」


「断片的で印象に残った部分しか
覚えてないんだけどね」







前置きをして、私は夢で見たシーンを
始めの方から手繰り寄せる









最初に見たのは…確か、







「まずラストが死んだことになってるの」


「ありえねぇー!」





のっけから目を剥いて叫ぶエンヴィー







あのおばはんは結構しぶとそうだもんねー
喉まで出かかるけど 何とか抑える









今はグラトニーと二人でお出かけしてて
ちょうどいないんだけれども





万が一うっかり聞かれたら殺されそうだもん


それもバラッバラのみじん切りレベルまで
ご自慢の爪で切り裂かれて







…いや、私もデタラメ人間だから
死んでもまだ大丈夫だろうけど





やっぱり痛いものは痛いし


わざわざ好き好んで死にたいわけでも
ないからさっ







それで?ラストがくたばった次は?」


「次はー、グラトニーがボロボロで弱ってて」


「もっとありえねぇ!」


「食欲魔人だもんねぇグラは」





言ったその途端、エンヴィーが首を傾げる





「…そんな可愛らしいものかな?」


「ニャハハ バカな子ほど可愛いって
昔からよく言うでしょ?」


「ああーそれもそっか」







納得していただけた所で話を再開する









ラスト、グラトニーと来て次はー







ああそうそうアイツだ!







「あとグリードは何でか知らないけど
糸目の優男になっててさ もうスッゴイ爆笑」


なにそれ!?どんなのどんなの
ちょっと紙に描いてみてよ!!」









差し出された紙とペンを受け取って







覚えてるうちに夢で見た印象を
大体の感じで描き込んでいく









「んー 大体こんな感じだったかな?」


「ぷっ…ハハハハハハ!何コレ!







完成した絵を見て、文字通り
お腹を抱えて爆笑するエンヴィー







言われてみれば やたら細い糸目しか
印象に残ってないから





他の部分はかなり適当だ


てゆーか、もはや人の形じゃないやコレ


どこの生き物だろ?合成獣?









「テメェら何やってんだよ」


「あ、ちょうどよかったー
アンタの来世の姿を予想してたトコ」







どこからともなくやってきたグリードに
エンヴィーが笑いながら描いた絵を見せる







「何でオレの来世が妙な顔して寝てる生物
なんだよ せめてイケメンに描けよ」





絵は奪われ、ビリビリ破かれゴミ箱へ





「あーあ せっかく描いたのに〜」


「それよりさぁ、ダブリスからワザワザ
ここに来るなんて何の用なのさ?」


あぁん?酒を買いに来たついでに
寄ってみただけだ」







言いながらお酒のビンをいくつか見せる







「何ソレ、よっぽどヒマなんだね」


「まぁな お前が側にいりゃーちっとは
退屈しないですむんだがなぁ?」





何気に距離を詰めてセクハラを働こう
する手をあっさりと避ける





「相手にされないって分かってるのに
懲りないねぇ〜グリード」


「ニャハハ、アル中で頭イってるんだよ


「ちっ…所でよぉ、なんで急に
オレの来世の話になったんだよ?」







聞かれて、素直にそのまま答える







「ああ、それは私の見た夢の話だよ」


「ふぅん じゃ続きを酒の肴に聞かせてもらおうか」







どっかりと部屋の椅子に腰を下ろして
ついでに酒なんか飲み始めるグリード







「うっわー図々しい 一回斬ろうかなぁ」


「無視しなよ…ちなみに僕はどうなって?
の夢の中ではさ」


「えーエンヴィーはねぇ…ククッ」







話を続けようとして、思わず笑いがこぼれる





「え、何その笑い」


「だって夢ん中じゃエンヴィー…
小さな虫になってたもん!」


えぇー!何だよソレーー!!
僕の方こそカッコいいカンジで夢見てよ!」





そんなにガッカリされたって、夢で見た
印象的な光景なんだから仕方ないじゃん♪







「ガッハッハ 傑作だなソリャ」


「笑うなっ来世糸目のデカブツ!」


「お前お得意の変身じゃねぇのか?」


「いやいやいや元の姿の関係からいっても
昆虫サイズは無理があるって!」







犬サイズは平気なのにねー でも
アレから昆虫は重すぎだよねぇ









不機嫌そうにエンヴィーが先を急かす







「それで後は?スロウスとかプライドは
死んだり 姿、変わったりしてた?」


「ううん エンヴィーの所でおしまい」


「えぇ〜何ソレ、つまんない!
まあでも所詮夢だから仕方ないよね」


「けど夢って そいつの願望を映したり
先の事を予知できたりするからなぁ」







からかいを含んだ酔いどれオヤジのたわ言に
マトモに反応するエンヴィー







「…アレが予知夢ならアンタも糸目生物
なるんだってこと、分かってんの?」


「少なくともよりゃマシだな」







険悪な火花を散らし始めるので、とりあえず
ケンカになる前に止めておく





…散らかして片付けるの面倒だし







「そんなに私の夢に不満があるわけ?」





こっちを見る二人の目は「大アリ」って
如実に語っていたりする


しょーがないじゃん、夢なんだし





「つかよ、 お前自身は夢ん中じゃ
どーなってたんだよ?」


「そうだよ まさか自分は美化されてたり
なんかしてないよねぇ?」


「…それが、わかんないんだよねぇ」









語った、印象的なシーンを目の当たりにして







けれど皆は私と眼を合わす事も言葉を
交わすこともしなくて







私自身も何か言っていた気がするけど





何一つとして、伝わらないまま夢は終わった









「なんていうか、まるで映画でも
見るかのような感じだったから 夢の中じゃ」







エンヴィーとグリードが、チラリと眼を合わせ







「……ひょっとしてさ 夢の中じゃはさ」


実は死んでました ってオチだったりしてな」







順番に紡いだその言葉は 私の中で
妙に腑に落ちる感じがした









今にして思い返してみれば







おぼろげになった夢の記憶で感じた
何ともいえない感覚は







死に行く者 或いは死した者





見ているだけしか出来ないような
寂しいソレに似ていた気もする









……でも







「何を言ってますやら」





あえてそれを 鼻で笑い飛ばす





「仮にもビックリ人間の上に ラストには
負けるけどナイスバディのこの私が
夢とはいえ死ぬなんてありえないでしょ?」


「うっわー自分で言ったよ」


「たしかにその図々しさなら この国が
滅んでも生き残ってそうだな」


「アンタほどじゃないと思うけど?」







グリードは 確かにな、と笑う











所詮 夢は夢、気にすることは無い







もしそうなる時が来るのだとしても







悔いが無いよう やれることは全部やってやろう











「まあ仮に死ぬんだとしたら、その前に
をオレの女にしとくか」






酒臭いグリードがいつの間にか立ち上がり
私を自分の方へ強く抱き寄せれば







「おっと残念、悪いけど
僕が予約済みだよん」






負けじとエンヴィーがひったくるように
私を抱き寄せ返す







その腕から更に抜け出して







「そーいうご都合で勝手な言い分
私が通すと思うわけ〜?」





天使の微笑み浮かべて二人の頭に


こっそり仕掛けたタライトラップ(ダブル)
ほぼ時間差無しで発動させ





「…だからって何でタライトラップなのさ」


「しかもオレのだけ砂利てんこ盛りって
マジで殺す気かよ このアマ」







頭を押さえて涙目の二人を、思い切り笑い飛ばした









(例えあの夢が 本当に予知夢だとしても)








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:ウロボロ組夢で書くとどーしても
パラワ気味になっちゃってサーセン


エンヴィー:謝るトコ、そこじゃないでしょ?


グリード:原作ネタばらしも入ってるし、
あとオレの扱いが最近ヒドいんじゃねぇ?


狐狗狸:うん、ゴメン


エンヴィー:認めたのはいいけどさぁ、それで
済むほどココが甘いと思ってる?


狐狗狸:わかりましたっ今度君の夢も
キチンと書くから 本性は止めて!


グリード:オレの方はどうした?


狐狗狸:あいたたた、そっちも多分何とか
するんで硬化した手で頭握らないで身が出




狐狗狸、戦闘不能により強制終了(えぇ)


様 読んでいただいて
ありがとうございました!