時には優しい嘘も「正義」になる
…と思うんだよね、個人的にはさ









〜a white lie〜








またまた東方司令部に遊びに来て、







色々イタズラを仕掛け ついでに屋上にやって来る









前にも着たけれど、見晴らしもいいし
結構こーいうところは好きなんだ





こんなに天気のいい春の日なら尚更







…不満があるとすれば、軍施設や旗が
見えることだけど コレはまぁ仕方ない









こう言った場所に人はあまり来ず







だからこそお気に入りにする常連と
同席することもあるけれど









「タバコさん どーしたの?」







今日はそのうちの一人 タバコさんが





フチにもたれてぼんやりと宙を見ていた







ちゃんか…
見ての通り、タバコすってるだけだけど」









淡々と言ってるけど、その顔はどう見ても
落ち込んでる人間のそれだよね?







そりゃもう一目でわかる不幸オーラ





目に見えそうなくらい滲んでる









「ニャハハ まーた振られたの?」


「ほっといてくれ!!」







図星らしく、タバコさんは涙目になった







「あーゴメンね傷心中の所〜」


「そーだよオレァ恋に破れて傷ついてんだ
頼むからどっかに行ってくれよ!」


「イヤだよーここお気に入りの場所だもん」







うっとおしそうに手を振り払うタバコさんに
まったく構うことなく





私は彼の隣までやって来る







「何でオレの隣に来るの?」


「ここから見る景色は最高だから〜
どうぞ私に構わず存分にたそがれなよ」










ニコニコ笑いながら しばらく景色だけに
目を向けて、一言もしゃべらずじっとする











爽やかな心地よい春風に混じって





鼻をすする音やためいきがポツリポツリ聞こえ





段々 「何で大佐ばっかり…」とか
「かわいかったなぁあの子」などのグチも混じる







今回は相当ショックらしい











「いったい オレの何が悪いんだ…」







随分大きなひとり言だなぁー、とか思いつつ







タバコさんの顔を見たら ものすごく
合いの手を欲しそうな顔でこっち見てた









「仕方ないなぁ、アドバイスしてあげましょう」







こうもグチくさい雰囲気はこの景色や天気に
あんまり合わないような気もしてきたし





ヒマだから付き合ってあげようかな?うん









「まずタバコくさいのが結構マイナスに
なりやすいかなぁー」


「ええ〜?」


「だってキスするときとか苦いし
服とかにニオイ付いちゃいそうだもん」







彼はむー、と眉間にしわを寄せて







「けどオレ ヘビースモーカーだから
禁煙できないしなぁ…」


「そんなんじゃ長生きできないよ?」


「軍人やってる時点でいつ死ぬかわからんし
大して代わんないって」


「…だとしても命は大事にしなさい!









思わずタバコさんにそう言ってしまった







私がこんなことを言うのも変な話だけれど





つい、言わずにいられなかったというか









「ど…どうしたんだよちゃん
なんかキャラが違くないか?」







ちょっと目を見開いているタバコさんに
私は軽く笑って 冗談っぽく







なーんてね それより
タバコさんはなんか趣味持ってないの?
今時そーいう売りがないと辛いよ?」


「さらっと話題変えたな…
って言われてもオレ 趣味ねぇし」





だったらーと言いながら背中のナップザックを
降ろして 口を大きく開けて





「今なら安くでイタズラ術を入門させて」


「いらないから、てか需要ないし」







そうでもないのに、ヒマつぶしの時とか
重宝するし 今なら3割引だよ?





と、誘ってみてもスルーされた





ちぇー、つまんないの
もうちょっとこっちの冗談にノってよね







まあいいや 次行こう次!







「イメチェンしてみるのはどう〜?
そのトゲトゲな髪を変えてみるとか」


「これは生まれつきなんだよ てか
どこをどう変えろと?







んーと人差し指を口に当てて考え







「角刈りか丸ハゲに」


「そんなんでモテるか!」







確かにツルッツルのタバコさんを想像すると
笑いしか出てこないなぁ







「それじゃあマッチョになってみるとか」


「少佐みたいになるのはゴメンだ!」


「いっそ大佐みたいなカンジに整形するとか?」


「アドバイスどころか傷口によけい塩
擦り込んでんじゃねぇかよ!」







真面目にやってくれ!とタバコさんが叫ぶ









私としてはすっごく真面目





巫戯けたアドバイスをしてるんだけどなぁ〜







こっちのセリフにいちいち大げさな
リアクションで返されるのが楽しいんだよねー









「だって根本的に変えるくらいしか
大佐に対抗できそうに無いし?」


「…どうせオレは大佐みたいにカッコよくも
ないしモテモテじゃねーもん!!」







うーわー子供みたいなスネ方しだしたよ







しかも目に涙スッゴイためてるし、
コレは精神崩壊寸前っぽいね









少しイジメ過ぎたかなぁ 反省反省







「ゴメンね ちょっと言い過ぎたよ」


「同情するなら 彼女紹介してくれ!


「それ軍人が言う台詞としては
かなりダメな部類に入らない?」





つかみかかったタバコさんに、肩をすくめて





「てゆうかあちこち放浪してた身元不明の
私に期待する時点で終わってるし」


「くそぅ…やっぱりダメか…」











うーん なんだか目の前のこのおニイさんが
すっごく哀れに見えてきたよ









面白いしそれなりにカッコいいし







軍人だってことを含めても
好きになりそうな人がいてもいいのにね











「なんなら私とお付き合いする〜?」







あくまで本気で言ってはいない
冗談に近い形の 告白









タバコさんはちらり、と私を見てじっと悩む









あれ 本気にしたのかな…と
ちょっとだけ焦ったけれど





それは杞憂だったみたいで







ちゃんは胸があっても性格がなぁ
あと、ガキは趣味じゃないし」


「ひっどーいそれって差別〜
てか恋愛に年は関係ないよ」





そんな事言ってるからモテないんだよ、と
付け加えたら





「余計なお世話だっ!!」







って言いながら その場に座り込んで
また涙目になっていた











本当、軍人なのになんか情けないなぁ







でもこーいう人間くさい親しみやすさは
私は 好きでもある







大佐とか周囲の人とかはそーいう人間が
多いんだよねー不思議と









類は友を呼ぶ って奴なのかな?












「まーでも顔は悪くないし 気長に
生きてれば物好きも現れるんじゃない?」


「………マジで?そうかな?


「それにタバコさん面白いからさ
自分のキャラに自信もちなよ ニャハハ」







タバコさんは複雑な表情を浮かべると







「喜んでいいのかな微妙な言葉だな…
まあでも ありがとちゃん」







少し笑って 視線を空に向ける









特に言うこともなくなったから、
私も黙って 屋上からの風景を眺める













やがてタバコの煙と共に、彼は言葉を吐き出した







「あーあ、オレにも春がやってきてほしいなぁ」









その姿が 何となく可愛く思えて


(大の男にその表現は変なんだけどね)





私は小さく笑うと、手を伸ばし







「可哀想なタバコさんに春が来ますよーに」







少し硬い短めの金髪に触れて、頭を優しく撫でた











色素の薄い目が こっちをじっ
珍しそうに見つめている









そーいう目やめて欲しいなぁ







気まぐれでやってるだけなのに恥ずかしく
なってくるじゃん 顔には出さないけど









あれ、顔つきがちょっと引き締まった







何か 真面目なことでも言うのかな?と
思って次の言葉を待つ









「…ちゃん どうせなら胸も
貸してくれると嬉しいんだけど」








……真顔で何頼んでんだかこの人は







「それは有料だよ?払える?


「ツケといてもらえるかなぁ 出世払いで」







調子いいなぁ、どうせ出世する気無いくせに







「いいよ キッチリいただくからね?」








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:初 ハボさんとの話…なんですが、
これハボさん夢って言っちゃっていいか心配っス


ハボック:何を今更、似たような話やこれ以下の文
平気でって断定しておいて


狐狗狸:まーなっ!(自信満々)


ハボック:開き直ったよ つーか人の失恋話を
ネタにして楽しいのか!


狐狗狸:一番しっくりくるシチュエーション考えたら
自然とこうなっただけです それよりもー


ハボック:なんだよ?


狐狗狸:どんだけボイン好きなのさアンタ
ぶっちゃけとあの後何してたの?


ハボック:ちょっと頭抱きしめてもらっただけだっ
それにボイン好きで何が悪い!あれは男のロマン


狐狗狸:握り拳で力説せんでも(汗)




題名の意味は "罪の無い嘘"となります
遅くなったエイプリルフールにもちなんで


様 読んでいただいて
ありがとうございました!