この何でもない日々を過ごしていた時だけは
私は自分の背負った「正義」の罪を忘れていられた









〜第八話 新鮮な日々〜








「あれ 、何やってるの?」


「ニーナと鬼ごっこ〜 アルこそエドと
何かしてたんじゃないの?」


「今してる最中、この資料室で僕達は
資料を探してるんだよ」


「ふーん」





部屋の中を見回したとき 後ろから
何かが引っ付いてきた





お姉ちゃん見ーっけ!捕まえた!





振り向くとニーナが抱きついていた


隣にはアレキサンダーもいる





「あーあ捕まっちゃった じゃー次、私が鬼だね?」


「楽しそうだね 二人とも」







すると ニーナがアルの手を握って、言った







「アルフォンスお兄ちゃんも、一緒に遊ぼう♪」


「ニーナ でも僕」


「いいじゃんアル 付き合ってあげよーよ」





アルは少し苦笑しながら、ニーナを肩車した





「分かったよ じゃあここじゃなくて
向こうのほうで遊ぼう」


「うん!あ、アレキサンダー!





何故か知らないけど さっきまで
大人しかったアレキサンダーが走り出す









「アル!アルフォンス!







アレキサンダーの向かう方向から エドの声が





そして―









「ぎにゃーーーーー!」





本棚の向こうに広がっていた光景は、
本日二度目の下敷きでした





「あ 兄さん」


「「あ 兄さん」じゃねーよ!!
資料も探さねーで何やってんだ!!」







犬に乗っかられたまま怒鳴るエド







「いやぁ ニーナ遊んでほしそうだったから」


「なごむなヨ」


「ニャハハいーじゃん こんな部屋で閉じこもってたら
カビ生えちゃうよ?


「うるせーこっちは大事な調べもんしてんだよ!」





ようやく身を起こしたエドに アレキサンダーの
容赦ない顔ナメが炸裂







「アレキサンダーもお兄ちゃんと遊んでほしいって」


「ふっ…この俺に遊んでほしいとはいい度胸だ…」





血管浮き出まくった顔を拭きながら言うエド







「獅子はウサギを狩るのも全力を尽くすと言う…

このエドワード・エルリックが全身全霊で
相手してくれるわ犬畜生めッッ!!!








相手はウサギじゃなくて犬だよって言う間も無く


エドがアレキサンダーを必死こいて追いかけだした









「あははははははは 頑張れエドワードお兄ちゃん!」


「子供だ…」


「あー面白っ
じゃ私達も続こうか、アル ニーナ







私は二人に笑いかけ 先を促した













「よぉ大将 迎えにきたぞ…何やってんだ?」







エドは見ての通り、アレキサンダーに敷かれてます♪







「偉そうな事言っておいて 結局犬に負けてるなんて
情けないね〜ニャハっ」


「うるせぇよ!」













結局その日に 目ぼしい資料が見つからず











それからしばらく私達は タッカーの家
(主に資料室)に入り浸る毎日を送った









その間 ニーナと一緒に
イタズラをする日々は楽しかった







一番のターゲットのエドが、全部にきっちり反応するし





ヒマが出来ればエドもアルも ニーナや私達の
遊びに付き合ってくれた


(エドはよくアレクサンダーの下敷きにされてたけど)













「よ〜し 今日は
ニーナに新しいイタズラを教えるよ☆」





資料を探す二人から少し離れた所で、ニーナと一緒に
イタズラ用の仕掛を作る


これももう すっかりお馴染みの風景になってしまった









「できたら…お兄ちゃん達やお姉ちゃんに
ずっとここにいてほしいな」


「どうして〜?」





作業しながら 私はニーナに聞き返す







前に お母さんがいなくなったけど、お父さんと
アレキサンダーがいるから平気って言っていた





今は査定のせいでタッカーは
ニーナの相手を出来ないけど


それが終われば 今までの日常に戻る





私達がずっといる必要は 無いはずだ







「だって お父さんとアレキサンダーも好きだけど、
お兄ちゃん達やお姉ちゃんも大好きだもん







顔を向けると ニーナはにこやかに微笑んでいた











表の世界でこんな風に、
人に「好き」って言われたのは 初めてだった









でも 私は人でない業を背負っている…









どう答えていいか分からなくて、
誤魔化すように作業を再開させた









イタッ!


大丈夫 お姉ちゃん?」







カッターでボール紙を切る手が力みすぎて、
左手の指を少し深く切ってしまった





すぐさま隠しながらティッシュで覆うけど





ニーナがまだ心配そうにこっちを見てる







「ニャハハ平気平気 かすり傷だし〜
おまじないをすれば…」







といいながら手をさするフリをして
床に落ちた血手の平の血をぬぐうと、


再生した手の平をニーナに見せた







「すごーい もう治った!」


「この事は姉ちゃんとニーナの秘密だよ?」


「うん、約束する!







二人で指を唇に当てて、ニッコリ笑った









「? お姉ちゃん?









ふと、誰かの視線を感じて振り返る…気のせいか







「ねぇニーナ、もうそろそろ出来上がりそうだし
このイタズラ エドに試しに行こうか♪







ニーナが 嬉しそうに首を縦に振った













「おぎゃあああああああああああああああ!」





「わ〜い エドワードお兄ちゃん引っかかったよ、
お姉ちゃん!」


「よくやったニーナ!エライぞ〜!!







頭を撫でてあげると ニーナは凄く喜んでいた


お子様は本当可愛らしいなぁ〜v







「よくも邪魔してくれたなテメェら…!」


「あわわ…に 兄さん!!









身を起こしたエドから 肉眼では見えない筈の
殺意のオーラが沸き立ってます、わー醜悪☆





「ニャハハ 豆粒鬼が怒った〜
それ逃げろニーナ!!」


「わーい 鬼ごっこだ〜!」





私はニーナの手を引いて すぐさま走り出した





「コラ待ちやがれーーーー!!」


「ちょっちょっと兄さん!!」







アルが止めるのも聞かず エドが猛然と追いかけてきて


今日も家中を駆け回る鬼ごっこが始まった















こうやって皆で楽しく騒いでいると、自分が
罪を背負っている事なんか 忘れられていた









そんな日々がずっと続くと思っていた







エドやアルには悪いけど、
資料を見るのが終わらなきゃいいって思った

















雲行きが怪しい今日も 三人で
タッカーの家にやって来た







「今日は降るな こりゃ」


マジで?今日はニーナに外用のイタズラ
教えようと思ったのに〜」


てめぇ ニーナにこれ以上変な事教えんな!


「まぁまぁ兄さん、とケンカしちゃダメだよ」







いつもの軽いノリで 私達は家の中に入った













その時 私は思わなかった…









まさか あんな形で
楽しかった日々が終わるなんて









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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:ほのぼの部分がこれで終了かと思うと
色んな意味で 悲しいです


エド:あのバカ女 ニーナに何教えてんだ!


狐狗狸:そりゃー色々なイタズラに決まってますでしょ?


ハボック:何気にちょい役でオレ初登場なんだけど
結局 鋼の大将は、何されたんだ?


狐狗狸:……ご想像にお任せシマス


エド:またかよ!手抜きしてんじゃねーよ!!


アル:…どっちかというと 資料探しより
やニーナと遊んでる方が長かったよね 僕ら


狐狗狸:イーじゃんイーじゃん じゃないけど
いい若いモンは運動しないとカビ生えるって


エド:お前が言うなこの半引き篭もりニート!


ハボック:…それで大将は背が低いのか


エド:ちっさい言うな!!(怒)


アル:兄さん落ち着いてー!




次でいよいよ大詰め あのシーンが…書くの辛い(泣)


様 読んでいただきありがとうございました!