この出会いが 私の中の「正義」を変える
きっかけの一つとなる









〜第七話 ドアに耳あり窓辺にメアリー〜








駅での一件が収まったその足で、私達は
そのまま東方司令部にやって来て





エドとアルは、大佐と話があるとか言って





私を東方司令部の受付に置いてきぼりにした







…けど、それで大人しく待つほど私は甘くない


てゆーか 基本、人柱から目を離しちゃいけないし
ぶっちゃけ待ってるだけだと退屈だし☆









他の軍人の目を 上手い具合にかいくぐり








エド達の話し声が聞こえる部屋の前に到着!





早速 部屋の中の会話をレッツリスニング♪


(ここからは私の実況中継のみでお送りします/笑)









「いいだろう 何が望みだね」


さっすが♪話が早いね」





溜息混じりの大佐の声に、嬉しそうなエドの声が続く





「この近辺で生体錬成に詳しい図書館か錬金術師を
紹介してくれないかな」


「今すぐかい?せっかちだなまったく」


「オレたちは一日も早く元に戻りたいの!」







今 エドきっと、ムッとした顔してるんだろーなー





「久し振りに会ったんだからお茶の一杯くらい
ゆっくり付き合いたまえよ」


「…野郎と茶ぁ飲んで何が楽しいんだよ…」







もんの凄い不機嫌そうな声音で呟くエド







「ええとたしか…ああ これだ」





紙を捲る断裂的な音がやんで、専門的な言葉が
ひとしきり部屋の中で響き渡り





「"綴命の錬金術師" ショウ・タッカー







その名前を最後に、大佐の声が途絶えた









タッカー……確か、ラストが雑魚だから
構わなくていいって言ってた奴だっけ











人柱人柱にすらなれない雑魚に学びに行くのかぁー









何か かなり皮肉な冗談めいた話だな
エンヴィー辺り こういうブラックなネタ好きそう







なんて事をぼんやりと考えていると









早速そのタッカーさんの所へ行くぞ!
大佐 案内頼むぜ?」


「本当にせっかちだな君は…彼の自宅は
少し遠いから車で送っていこう、ついて来たまえ





部屋の内部から ドアに向かって足音が近づく







あ、やば 急いで逃げなきゃ―





素早くドアを離れ、部屋を出ようとした矢先


しっかり止めてなかったせいか
カバンの中身が零れて





ドンガラガッシャドゴシャドシーン





情けないことに中身をぶちまけながら盛大にコケた







「何だ今の音は!って !!


「ニャハハー 見つかっちゃった」





もうこうなったら仕方ないので 開き直ってみた







「どうやってここまで来たんだよ!
てか また盗み聞きしてやがったな!


「ふっふっふー 油断するのが悪いんだよ?」


 待っててって言ったのに…」


「だって待ってたらエドもアルも 私を置いて
どっか行っちゃいそうだったんだもん」







二人に反論しながら ばら撒いた中身を
カバンに収めていく









「こんな所まで来るとは まったく困ったお嬢さんだ」





苦笑しながら 大佐が中身の一つを拾って
私に渡してくれた サンキュー





「いやーそう言われると照れますねぇ」


「誉めてねーよ!」


「とにかく 僕らはちょっと用があるから
は宿でもとって待っててよ」







やんわりと頼むアルに かぶりを振って







嫌♪もちろん私も 二人についてくよ〜
知らない仲じゃないし、文句ないよね?」





ニッコリと微笑んで頼み込んだ







ダメだ、これはオレ達の問題だ」





けど エドは頑として譲らない感じで言い切った









むぅ〜まだ首を縦に振らないなら…









「ヒドイ…私の事 まだ信用してないんだね







私は目に涙を溜めて、三人の方を見つめて
悲しげにこう言った







これぞラスト直伝 "乙女の涙攻撃"!







思惑通り エドがうろたえた表情を見せ、





「兄さん 連れて行ってあげようよ…ほら
もしかしたらも関係あるかもしれないし」


「それに鋼の、彼女が信頼できる人物ならば
連れて行っても害は無いだろう」







アルは狙い通りとして大佐までもが、たしなめるように
エドを説得にかかった









…気になる事といい、関係といい もしかして
背中の傷のこととナイフが原因かな?









まーともかく、二人の説得についにエドが折れ





「だぁもうわかったよ 連れてきゃいいんだろ!


「ありがとう〜エドっ!」







こうして 上手い具合にエド達に同行する事になった





この大佐もだけど、ラストにも感謝しなくっちゃ♪













「2年前 人語を使う合成獣の錬成に成功して
国家錬金術師の資格をとった人物だ」


「人語を使うって…人の言葉を喋るの?合成獣が?







タッカーの所に向かう道中、大佐がエド達に
奴のことを説明し始める





そう言えば タッカーのことって名前位しか
知らないんだよね、私







「タッカーさんって どんな人なんですか?」





隣にいた大佐にそう聞いてみた





ちゃんにはどうせなら 私に
興味をもって欲しいな」


「ニャハハ 私アナタには一ミリも興味ないです









一言で切り捨てたら 大佐がまたガクッ
肩を落とした…面白いこの人







「大佐 色ボケんなら後にして、質問に答えろよ」


「失礼な奴だね君は…まあとにかく
どんな人物か会ってみる事だね」









丁度会話が終わったと同時のタイミングで車が止まった













大佐が家の呼び鈴を鳴らしている間、私達は
その場で待っていた







「でっけー家」


「本当 タッカーって人、お金持ちなのかな?」


「さぁ?」







そんな事を三人で呟いていると 横手の茂みが
ガサリと鳴って―





振り向くと エドに大きな物体が覆い被さってきた







「ふんぎゃああああああああああああああ!!」









盛大な悲鳴と共に エドが下敷きにされる







「あ でっかい犬ー食べでありそう♪


「にっ、兄さーん!?」


「何やってるんだ君らは…」





大きい犬に圧し掛かられているエドは
まったく動けません









その時 家のドアが空いて、中から
可愛らしい声が聞こえた





「こら だめだよアレキサンダー」





声の方を見ると ドアから小さな三つ編みの
女の子が微笑んでいた







「わぁ お客さまいっぱいだねお父さん!」


「ニーナだめだよ 犬はつないでおかなくちゃ」









女の子の後ろに冴えないメガネがいる…
ひょっとしてこれがタッカーかな?





それよりこの子ニーナって言うんだー可愛いな〜
















「ねぇねぇお姉ちゃん、そのカバンの中には
他には何が入ってるの?







目をキラキラさせて質問するニーナに、私は
カバンの中から品物を出しては説明する







「他にはイタズラグッズでビックリ箱とか
カギつきロープとかも入っててね〜」









説明の途中でも アレキサンダーがしきりに
私の背中に圧し掛かったりする





「重いよアレキサンダー よっかかると食べちゃうよ?


「食べちゃダメだよ きっと
お姉ちゃんに遊んで欲しいんだよ」









エド達は タッカーと話があるからって家に入って行き





それについて行こうとしたらニーナとアレキサンダーが
遊んで欲しそうにまとわりついて来て、


身動き取れなくなったのだ









やたらと大きいアレクサンダーをモフモフしながら
ニーナと色々話をするのは楽しいけど…





部屋の中で何を話してるのか 気になるなぁ









「ゴメンねニーナ 私おトイレ行きたくなっちゃった
おトイレの場所 教えてくれる?







ニーナからトイレの場所を教えてもらうと







「すぐ戻るから 待っててね〜」










ニーナをそこに残して、私はこっそりと
エド達のいる部屋を目指した







途中 合成獣のホルマリン付けとかある
悪趣味目な実験室とか、





鍵のかかったドアを見かけたけど、







それを無視して 目当ての部屋の前にたどり着いた









私は気配を消して、ドアのそばに立ち寄ると


部屋の中の会話に 聞き耳を立てる









「なぜ 生体の錬成に興味を?」





タッカーの質問に 部屋の中に
戸惑ったような空気が流れるのが感じ取れた







「あ いや彼は…」


「大佐 タッカーさんの言うことももっともだ」





決意めいたエドの声が聞こえる









「なんと…それで"鋼の錬金術師"と―」







驚いたようなタッカーの声に 少し
部屋の中が沈黙し、









少しずつ エドが過去を語り始めた















エドとアルの過去を この時になって初めて聞いた









「お母さんを…練成しようとしたんだ」





ドアの外で 私は思わず小さく呟き





やっぱり、という言葉は 喉の奥に飲み込んだ









母親に会いたい一身で 人体錬成という禁忌を犯して
二人は身体を失った





エドは自分の右腕を犠牲に アルの魂を鎧に呼び戻し





アルの身体を取り戻すために、国家錬金術師になった







…まあ 人体練成を行って、人柱に確定される位だから
やる気になれば国家錬金術師にもなれるか





いや 確定はこっちが勝手にやってるけどね









そんでアルもエドの身体を元に戻したいと思い





二人で賢者の石と身体を戻す方法を模索して
現在にいたる―らしい













「役に立てるかどうかはわかりませんが
私の研究室を見てもらいましょう」







タッカーのその台詞を聞いて 私は急ぎながらも
さっきみたいな失敗をしないよう注意して







ニーナの所まで戻ってきた












「ただいまニーナ さ、何して遊ぶ?


「鬼ごっこ!」








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:原作沿い 引っ張るつもりは無かったのですが
ここまで来るのに8話分かかってしまいました(汗)


エド:引きすぎなんだ…まとめ方が甘いから
無駄に話を持ってくることになってんだろーが


狐狗狸:そんなこといまさら言わないでくれる?


アル:あと、の盗み聞きグセ よくないと思う…
てかあのカバン本当に何がどれだけ入ってるの!?


狐狗狸:盗み聞き云々は…(監視活動の一環だから)
置いといて カバンの中身はシークレットで(笑)


エド:置いとくな!しかも笑い事で済ませる気か!?


大佐:それよりも、鋼のから聞いたのだが…
彼女の怪我の異常回復見慣れない錬成陣のナイフ
どうも引っかかるんだが……


狐狗狸:それは本編で追々書くから待っててください




まだこの話は続きます、原作は本当
色んな意味で切なくて悲しいです…はぅ


様 読んでいただきありがとうございました!