彼らの「正義」があのナイフの
生み出された場所へと誘っていく









〜第四十九話 影の誘い〜








「どわっ!?」


「ウニャアッ!?」





私とエドは同時に悲鳴を上げて
無様に席から転がり落ちた


痛ったー…ヒザ打ったぁ…涙出そ





「二人とも、大丈夫!?





慌てつつ手を差し出したアルに助けられつつ
身を起こしながら私達は言う





「ちっと頭打った」


「私はヒザかな、ついでに舌もちょびっと」


「大したケガは無いんだね?よかった…
それにしてもイキナリ何だろう?」







首を傾げたアルと数少ない他の乗客達の
ざわめきに対する答えは 意外とすぐに現れた







「この先のレールで事故があった模様です!」





窓の外で走りながら言うのは、乗務員の人





「事故って何だよ!」







窓から身を乗り出さんばかりのどっかの
オッサンに、汗タラタラで乗務員さんは返す





「詳しくはまだ何とも…レールが破壊されており
この先列車は通行不可能となっております」


「オィオィ 何とかしろよ!!」


冗談じゃないわ!
こっちには大事な用があるのよ!!」


「近辺の軍の施設に連絡を取り復旧作業と
交通手段を手配させていただきますので
しばらくお待ちいただくか、元の駅まで…」


「ふざけんな!!」







乗客達の非難が車内のあちこちで起こる中





エドとアルは、軽くため息をついた







「どうする?」


「…どーもこうもねぇだろ、とっとと
降りて先の駅まで行くぞ」


「えー、そこは国家錬金術師の力を使って
レールを直すとかすればいいじゃん」





とか言いつつ こっちも降りる準備は万全だ





「なんでオレがんな面倒くさいこと
しなきゃなんねーんだよ」


「ごもっともで」









喚き声に満ちた列車から降りて
雲の多くなった空を眺めながら先へ進む







「まさかこんな中途半端な所で途中下車なんて
ついてないよね〜ニャハハ」


「って何でそこで楽しそうに笑うんだよ
おかしいだろお前の感性」







軽口を叩きつつ列車の先頭を
ようやく追い越した所で





少し先にあるレールの残骸が目に入った







…なるほど 確かにコレはヒドイ







「このレール…何か固いモノで
無理やり壊したような感じだよね」


「ああ、枕木と地面の抉れ具合を見ても
普通のやり方じゃねぇな」





辺りに焼け焦げや火薬のニオイがないし
抉れ方が違うから、爆破じゃなさそう


けどこんなこと普通の人間が何もなしに
短時間で出来そうも無いのは一目瞭然





出来そうなのはエドみたいな国家錬金術師


もしくは私みたいなデタラメ人間


あとは…本当の化け物







「ねぇエド、もしかしてこれ」


「… 多分オレの考えもお前と一緒だ」







頷いて、真剣な顔でエドはレールを指差した





「恐らくコレをやったのは 今朝出くわした
あの合成獣の可能性が高い」


「でも兄さん、あの合成獣はが…」


あくまで可能性だ 同じ奴かの保証はないし
合成獣がやったと断定されたわけじゃねぇ」





その通り、今の時点では可能性でしかない





「…けどあの大きさの爪で抉ったなら
これくらいの跡は残りそうかも」





言いつつ私はレールの痕跡をもう一度見る







でも…この跡、ちょっとおかしいような…







何となく感じた違和感は


ガサリと響いた小さな物音に掻き消された





反射的に顔を向けた私に釣られて
二人が同じ方を見ると


木陰にちらりと人影が…あ、逃げた!





「ちょっと待てテメェ!」


「あっ、待って兄さん!」





すかさず追っかけるエドの後を
追いかけたそうに慌てるアル







まーこの状況でそんな動きしたら普通
何か関係があると思って間違いはないよねー





でももしアレ目撃者だったらどーすんだろ


なんて思いつつも面白いから





「見失わない内にエドを追っかけよっか」


「うん、そうだね」





敢えて止めず、共に走り出す











……で、こういう勢いに任せた行動をすると





大抵決まってお約束ともいえる
パターンに行き着くわけだけれども







「ちっきしょー…見失った…」


「てゆうか、ここどこ…?」





私達もそのお約束の例に漏れず


深い山の中で道に迷ってしまいました☆





「土地勘もロクにないのに人影だけ
見て突っ走るからいけないんだよ?」


ってオレのせいかよ!お前だって
アイツを挟み込もうとしてたろ!?」


「まーアレは惜しかったよねぇ
もうちょっとでいけそうだったんだけど」


「それより今は街へ出る道を探そうよ二人とも」





ため息つきつつ地図を見るアルを挟んで







「えーと北は…」





コンパスを取り出したエドの顔が
途端にしかめっ面になった





「どうしたの〜?ってアラ」


「何だよコレ…どうなってんだ?」





小さなガラスケースの中に納まった
コンパスの針がいつまでも北を指し示さずに
グルグルと回り続けている





「磁鉄鉱がある…ワケでもないよね?」


「だな、つーかこの辺りでそんなもんが
あるなんて聞いたことねぇぞ」


磁鉄鉱って何?」





…素朴な疑問を素直に口にしただけなのに
どーして呆れた顔をされるのかなぁ?





「普通分かるだろそれぐらい」


「いやいやいや、デタラメ人間だって
知識は個人差バラバラだから」


「平たく言うと磁石を含んだ岩とか鉱石だよ」





なるほど分かりやすい そんなのがあったら
コンパスが狂うのは当たり前…アレ?





「じゃあ磁石っぽいものがないのに
なんでコンパスが狂ってるの?」


「知るかよ オレが聞きたいっつの」


大丈夫だよ、コンパスがダメなら
時計と太陽で方角を調べれば」







明るく言いつつ空を指差したアルが
そのままの姿で固まった







曇ってきたね、ヤなタイミングで」


「うん…」









うっすらと淀んだ空の下、深い山の中で
どれぐらい歩き続けただろうか







「ウニャ〜…ここ、さっきも
歩いてなかったっけ?」


「そんな気がする 見覚えあるもんこの石」







確実に私達は山の中を彷徨っていた





と言っても会話してるのはアルと私のみ





「腹へったぁぁぁぁ…」





エドはいい加減疲れ果てて、虚ろな目のまま
足を動かしてるグロッキー状態です







「ずっと歩きっぱなしだから疲れたよね
ここらで少し休もうか?」


「なぁアル…腹の空き過ぎか幻覚が…
でかいガチョウが歩いてるように見える


「しっかりして兄さん、こんな山の中に
ガチョウなんて」


カツン、と鎧を軽く小突いた音がした







目線を下げると 鎧の足元を
クチバシで叩くその生き物は…





「「ガチョウだーーーー!!」」







まさかの事態に真っ先に行動したのは





「うわ〜君どこから来た「肉ーーー!!」


兄弟(特に獣の目をしたエド)だった





兄さん怖っ!この子怯えるから
いきなりは止めてあげて!!」


うっさい!世の中弱肉強食じゃーい!!
飢えたオレの所に来たのが運の突」





飛び掛られ身体を捕まれたガチョウが
早速エドのデコにクチバシ攻撃を繰り出した





「イダダダダダ!ちょ止めろテメェ!!」







首を押さえようとした手も噛まれて
見る見る内に形勢が怪しくなっていく







「ギャーッ!アンテナは、アンテナは
勘弁してぇぇ!!」



「兄さーーーーん!?」







うわーガチョウ意外に強っ!
エルリック兄弟タジタジです!!





「つか見てねぇで助けろ!!」


「えーせめて決着つくまで〜」


「本当にシャレにならなくなるから
お願い助けてぇぇ!!





そんな必死に頼まれちゃーしょうがないね







「静まれ!」







一声で嘘のようにガチョウの動きが止まり





「さぁ、巣まで案内してちょうだい」





続けて命令すれば大人しくなったガチョウが
先を歩き始めたので、後へついていく







「すごい…こんな力もあったの?」


「隠してたワケじゃないけど
特に使い所がなかったし、動物限定だから」


「ふーん で、何で巣になんか
案内させてんだよ」





足を止めないまま 私は当然の答えを口にした





この一匹だけじゃ足りないでしょ?
せめてもう一匹くらいいないと」


「なーるほど…お前冴えてんなぁ


「ふ…二人が黒い…」





不可抗力による必要措置って言ってよね?









けれどガチョウが歩いていくにつれ





予想に反して道が徐々に通りやすくなり…







「あれって、…だよな?」





私達は村らしき集落に辿り着いた








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:村までどーにか到着しましたね〜
ギャグ挟みたいと思ってたし、よかったよかった


エド:よくねぇ!あんの鳥畜生!!


狐狗狸:うわっ、本気で怒んない怒んない!
いくらボロ負けしてアンテナ千切らぶべら(殴られ)


エド:それ以上言ったらぶっ飛ばす!


アル:もう殴ってるし…でもに動物を
操れる力があるなんてビックリ


狐狗狸:本人も言ったように語る機会が特に
なかったからねー…(この辺で出さないと
今後の展開に響くし)


エド:え?今何つった?




訪れた村は、兼ねてよりの関わりが…


様 読んでいただきありがとうございました!