勘違いの「正義」は 時として何かを奪う
弱い者から何もかもを









〜第四話 人造人間は見た〜








うーん 流石は木造建築、よく燃えるなぁ







…ってしみじみしてる場合でもないか









姉ちゃん!
何ボーっとしてんだよ、早く逃げなきゃ!!







いつの間にか部屋の外にいるカヤルが
私に向かって叫ぶ





「うわ、はっやいなぁ 待ってよ今い―」









火が燃え移る前に
荷物を手元に集めながら叫び返したら





これまたタイミングよく 部屋の入り口が燃えた







「っ 姉ちゃん!!







「あー…カヤル、危ないから下がってて 死ぬよ?









私はコートをナップザックにしまって
かわりにナイフを出すと





ザックを担ぎつつ 入り口に立ち塞がる炎を切り裂いた







「……え?」









切り裂かれた炎は そこだけ跡形もなく消え失せ





悠々と入り口から出てきた私を、
カヤルは呆然と見つめてた









「ニャハハ、珍しい光景だからって見惚れてたら
焼け死んじゃうよ?行こっ」







カヤルの頭をぽんぽんっと叩いて、二人で急いで下へ











下りたら丁度アルフォンスと鉢合わせした









「二人とも、早く此処から逃げて!


「でも 父ちゃんと母ちゃんがっ」


「カヤルのお父さんとお母さんは 僕が先に助け出した
後は二人だけだから、早く!





アルフォンスがカヤルと私の手をとって先へと促す





「…カヤル 早く行かないと焼けちゃうよ?」







何故か立ち止まって後ろを見ていたカヤルに、
振り向きざまに声をかけた時











火の手が一瞬 大きく膨れ上がって―弾けた







咄嗟にカヤルを突き飛ばして


炎を背中で受ける










「っ熱ち!


姉ちゃん!?」


っ!!」







急いでザックを背中に叩きつけて火を消し、
慌てふためく二人を押しとどめる







「っ大丈夫、もう背中に火はついてないし
軽く焦げただけだから〜あは♪」


大丈夫じゃねぇよ!早く背中冷やさないとっ!」


「そんな事より 脱出が先でしょ?









本当は背中全体の皮膚が
ただれてる位の大火傷
だけど


わざと何でも無いように ニッコリ微笑んだ









そのまま何か言いたそうな二人を押し切って







ナイフで炎を切り裂きながら 崩れる前に脱出した















宿が完全に燃え尽きて、


悲しみにくれるカヤルたちを残して





私はコートを羽織ると足早に炭鉱へと向かった









どんどん再生していく背中の傷を見られない為





そして、


火をつけたあの軍人達をくびり殺しにいくため













気に食わない







あいつ等は「正義」を振りかざしながら、


弱い者から全てを奪っていく





金も 力も 住家も 人としての権利さえも







自分達が「正義」だと信じるなら、


その思い上がった心の臓を

跡形もなく引き裂いてや―








「兄さん!」











私の思考に割って入った声に思わず反応して


ついつい、側の木材に身を潜めてしまった





って、ワザワザ身を隠さなくていいんじゃん


…うーん 変な所で殺しの時の癖が出ちゃった













「兄さん待ってよ!」







ただ一人前を歩きつづけ、ようやく足を止めた
エドワードの姿が見えた





後ろから呼び声とともにガッシャンガッシャン
アルフォンスも隣に近づいてくる









「本当にあの人たち放っておく気…」


アル このボタ山、どれぐらいあると思う?」





エドワードの視線の先には トロッコに乗った
ただの石がこれでもかってぐらい盛られてた





「?一トンか…二トン位あるんじゃない?」







「よーし 今からちょいと法に触れる事するけど
おまえ見て見ぬふりしろ」





言いながら トロッコの上に乗っかるエドワード





へ!?…それって共犯者になれって事?」


「ダメか?」







パン と両手を合わせて練成のポーズ





「ダメって言ったってやるんでしょ?」







溜息混じりのアルフォンスの声を合図に、





エドワードが自分の乗っかったトロッコの石を
錬金術で金塊へと次々に変えていった







「なぁに バレなきゃいいんだよバレなきゃ」


「やれやれ 悪い兄を持つと苦労する…」











「本当にね〜」







いいながら私は ガバっとアルフォンスの首に抱きついた





!?』





今回もタイミングバッチリで脅かしたから
二人の驚いた顔が ものすっごく可笑しかった







「ニャハハ 軍人達を痛い目に合わせようと向かってたら
すごいものをみ〜ちゃった☆





真っ白になって立ち尽くす二人に 私は更に笑顔で





「あ でもアルの素顔見せてくれるんだったら
黙っといてあげるヨ〜」







と、交換条件を突きつけた











いや〜まさかこんなタイミングで二人の弱み握った上に


アルフォンス君の中身確認までできるなんて大ラッキー☆





とか思ってたら











「こうなったら…、テメェに恨みはないが
しばらく動けなくなってもらうぜ!!







なんて悪役っぽい台詞ぶっこきながら
エドワードが右手をハンマーに錬成した





「ちょっ 兄さん!!」







ありゃりゃ


追い詰めすぎてヤケになっちゃったみたい☆







「うーわー交渉決裂?
だったら自力で見ちゃうもんね!」





アルフォンスの肩によっかかったままで 兜に手をかけると







「だっ ダメだよ!





即座に背負い投げされて そこをハンマーが一直線





「おおっとぉ!」







間一髪でハンマーをかわし、再びアルフォンスに
向かって一直線に!







そしてそのまま 変な三つ巴の攻防が始まった













「まぁてぇ〜中身見せろぉ〜!!





エドワードの攻撃をかいくぐりながら
アルフォンスの兜をとろうとする私を







「ややややめてよ
兄さんも落ち着いて!!」






必死でかわしつつ エドワードを何とか
止めようとするアルフォンス







「オイちょっと待て
オレは無視かっ!!!






アルの攻撃を防ぎつつ 私に一撃加えようと
エドワードが追いかける













うーん、ナイフ使っちゃえば楽ではあるんだけどねー





下手に身体切っちゃったりして、大事な人柱
傷つけるのも流石にまずいからなーおっと!







「よそ見してると 病院送りになるぜ!」





攻撃をギリギリでかわした事で 不敵な笑みで
相対するエドワード









…わかってないなぁ 私が本気出したら
君たち病院所か地獄送りだよ?







でも そろそろ反撃しようかな〜なんて考えてたら











兄さん!やっと捕まえたっ!!」







と アルフォンスがエドワードを羽交い絞め







おっしゃ チャーンス!!











「アルの素顔 大公開!







二人が油断した一瞬をついて


頭の飾りをつかんで引っ張った









すると、抵抗なくあっさり頭の部分が抜けた







『ああっ!!』





「え!?」








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:のナイフ大活躍?と二人の掛け合い
書きたいがためだけに炭鉱話引っ張りまくり
で申し訳ない第四話です


エド:脈絡ねー、つかまた話脱線してんじゃねーかよ
いいのかこんなんで


狐狗狸:ハイハイ何とでも言ってくださいよ


アル:それよりものナイフってどうなってるの?
普通はなんて切れないよ…(汗)


狐狗狸:まーその辺も追々話に書くよ 今はただ
普通じゃないナイフだって認識で(苦笑)


アル:…そんな事より兄さん 幾らなんでも
女の子を殴るのは良くないって


エド:男女平等!つか金の錬成バレたら
オレ達マズいだろーがっ


狐狗狸:大佐に新たに 借り作りそうだしねー




次で必ず炭鉱の話終わります!(謝)
何だかんだ言ってやっぱこの話気に入ってます…


様 読んでいただきありがとうございました!