軍人は嫌い 「正義」を大義名分にすれば
何をしても許される、と思う輩が多いから









〜第三話 執行前日〜








外に出ると 入り口から離れた隅の辺りに
エドワードとアルフォンスが座り込んで話していた





私は脅かすつもりで コッソリと二人の後ろに回った









二人の会話が耳に入ってくる







「…国家錬金術師になるって決めた時から
ある程度の非難は覚悟してたけどよ…」





「…僕も国家錬金術師の資格…」





「やめとけやめとけ 針のムシロに座るのは
オレ一人で十分…」







ちょっと距離を置いているのと、二人が小声で
喋ってるからいまいち聞き取りづらいけど…











この口調から察するに…エドワードは目的があって
敢えて"軍の犬"になったみたい









「おまけに禁忌を犯してこの身体…」







そう言って エドワードは自分の機械鎧に触れた













"禁忌"とは…やっぱり"人体錬成"を指すのだろうか?















人柱になる者は皆 何らかの形で"人体錬成"
関わりがあった















だとしたらこの兄弟は 何をしたのだろう?











ひょっとしてこの二人は







大切な誰かを――
















ふとそんなことを考えていると エドワードが
沈んだ調子で呟く









「師匠が知ったらなんて言うか…」










そこで二人が溜息をついた後 一拍置いて





「こっ…殺される……!!





メッチャ青ざめた顔で震え出しました








…後姿からじゃ何ともいえないけど、
絶対青ざめてるってあれは〜











二人の師匠って人間なのかな?


実はかなり凶暴なキメラとか?なんて思いつつも









私は思わず口元に笑みを浮かべた






今が 脅かすベストタイミング!












「ばぁ☆」


「「ギャ―――――ッ!!」」





後ろから思い切り二人の背中をどつくと
二人が正に文字通り飛び上がってて面白かった







「ニャハハ〜ビックリした?ビックリした?
イタズラ大成功〜!!






満面の笑みでガッツポーズ浮かべてたら
エドワードがいきなり私の胸倉掴んできた





自分では怒り心頭の顔つきみたいだけど
眼の中にあるビビリの色は隠しきれてないよ〜?









「テメェ 今のは洒落になってねぇぞ!!


「おどかさないでよ〜」





アルフォンスが、心臓の辺りを両手で押さえながら
不安そうな声でそう言う





「いや〜二人がなんか深刻な話始めちゃってて
話しかけづらかったから つ・い☆









その言葉に エドワードの顔色がまともに変わった





同時に 手を離されたから、距離をとる









「!…、ひょっとして 聞いてたのか?


「盗み聞きするつもりは 無かったけどね…
全部聞こえてた」







警戒されるのも 私の事を逆に聞き返されるのも
都合が悪いから、



どっちかが口を開く前に先手を取った







「…ずっと気にはなってたんだ
君達が、普通の人と違うのも」





エドワードとアルフォンスは、ただ私の話を聞いている









「実は私ね 帰る家が無いの、ずっと暗い地下にいて
…いつも一人ぼっちだったから」







少しだけ本当が混じった嘘をついて、







「だから…もっと二人の事を知りたい
仲良くなりたいんだ、エドとアルと









寂しげな微笑を作って 二人の同情を引いてみる











…」














……思った以上に効果があり過ぎて ちょっと
罪悪感が芽生えるなぁ





そんな私以上に悲しげな顔されたら
根掘り葉掘り"人体錬成"の事を聞けそうに無いじゃん;







…まあいいか とりあえずここはお茶を濁しても













なぁんて 暗い雰囲気は私に似合わないっしょ♪
気が向いたらとかでいいからいつか教えてね〜」





急に態度を変えた私に 二人が呆れていると


後ろからドカドカうるさい音が聞こえてきた









「何だ何だ?」


「…何だか物々しい雰囲気みたい」





店内に入ってきた軍人たちを見て、
エドワードとアルフォンスは同時に言う





「っていうかあのしょぼいのも軍人?
なんかすぐ死にそうなんだけど〜」







軍人達の中にいたひょろいオッサンを指差して笑う







「ひょっとして あれがヨキ中尉かな?」


「ああ、元炭鉱主のクズ人間?…そうかもね〜」





アルフォンスの呟きに同意すると、店内が何やら
険悪な雰囲気に変わっていく


…どうやら嫌味な事を言い合っているようで
ヒョロ軍人がやたらと偉そうな物言いをしていた





出し抜けに、





「という事は給料をもう少し下げてもいいという事か?」





ヒョロ軍人・ヨキが言ったその発言に
炭鉱のおっさん達が不満をあらわにして


耐え切れずにカヤルが、ヒョロ軍人に雑巾をぶつけた









すると他の軍人がカヤルを引き倒し、


もう一人がサーベルを抜いた











「見せしめだ」









カヤルに向かって 軍人のサーベルが
振り下ろされようとして













私がナイフをサーベルに向けて放ったのと


エドワードが機械鎧でサーベルを防いだのが同時だった







って 危ないなー、ギリギリナイフが通り抜けたから
良かったものの 当たってたら貫いてたよ?







もちろん軍人の持ってたサーベルはポッキリ折れました





エドワードが防いだ辺りと私がナイフを当てた所の二箇所


しかもどっちも根元付近(笑)












「なっなんだ どこの小僧だ!?


「通りすがりの小僧です」










エドワードと軍人のやり取りを無視しながら 私は
ちょっと店の中の方まで飛んでいったナイフを探す







何か後ろがうるさいけれど そんな事はどうでもいいです











…あーよかった、


カウンター貫いてお酒のビン幾つか割って
止まっててくれたよ





下手するともっと後ろの方にまで跳んでいくもんなー


まあ 割ったビンや貫いたカウンターの修理費
エドワードの方に請求しておこう








なんて、ほっとしていたら









「また来るぞ!」





とかいいながら ひょろ軍人が出て行きました















「ぐわームカツク!」





と カヤルが叫び





「どっちが?」







それにのんびり返すアルフォンスに





『両方!!』







炭鉱のおっちゃん等全員の声がハモった










「両方って…あれ?アル エドは?





私はエドワードの姿が無いことに気が付いた







……まさか 見えなくなるくらい縮んだとか?









、気づいてなかったの?兄さんは
さっきの人と一緒に行っちゃったんだよ」





私の脳内の説を却下するかのように
溜息交じりで答えるアルフォンス









…ほーそうですか、軍人の所に行きましたか
そうですか







「ニャハハ裏切ったのか〜仕方ない 明日
会いに行って晒し首にしようか☆





ニッコリと言ったら 何故かアルフォンスも
カヤルも ついでに炭鉱のおっさん達も


見事に全員引いてました

















とりあえず明日皆でヒョロ軍人トコに抗議しに行く
って言うことになって、今日はもう皆寝ることに





…で さっきまで夢の中で楽しく
エドワードを処刑してたのに







…ちょっといい?」





貸してもらった宿の部屋で寝てたのに、ノックとともに
アルフォンスの声がした







何で寝てるのに起こすの?殺すよ?







目を擦りつつドアを開けて アルフォンスを中に迎えた


ちなみに今の格好は灰色のコートがない以外、
いつもの格好





怖っ…あの、寝てる所ごめんね
どうしてもカヤルが 言っておきたいことがあるって」


「ん 何を?」





聞くと アルフォンスの後ろから、
ひょっこりカヤルが出てきた









「あの時オレを助けるために サーベル防いでくれたエドと
ナイフ投げた姉ちゃんに…お礼が言いたくてよ





やや照れた顔でしゃべるカヤル





「別にいいよ〜お礼なんて」







ニヘッと笑いながら私は言った









別に、謙遜なんかじゃない あの時はただ単に





自分が「正義」みたいな顔したヒョロ軍人の行動が
癪に障っただけ










「じゃあ裏切り者のエドには明日 息の根止める前
カヤルの言葉を伝えてお―カヤル?


「どうかしたの カヤル?」





急に眉根を寄せて鼻をひくつかせだしたカヤルの様子に
会話を中断して 私とアルフォンスが尋ねる







「…何か 焦げ臭い匂いがする」







嗅いでみると 確かにきな臭い…何か近くに
焼けてるものがあるみたいな……









「まさか!!」





アルフォンスが何かに気づいて 急いで階下に走る












「………大変だ!皆起きて!火事だ!!





アルフォンスの叫びが聞こえてきたと同時に







私の部屋から火の手が上がった








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:はい 第三話出来ました〜今回は比較的
早かったです(苦笑)


エド:って言うか ひょっとしてオレ次回辺り
に殺される!?



狐狗狸:…ご愁傷様です(合掌)


エド:あっさり言うなー!!

っていうか何で国家錬金術師は大丈夫で
軍人が嫌いなんだよは!


狐狗狸:…私の口からじゃちょっとー あと軍人嫌いは
どこの場所でも起こりうることじゃん♪


アル:でもの場合は明らかにちょっと…
反応が激しすぎる気がするよ(汗)


エド:そうだよなー 分かってくれるか、弟よ!


狐狗狸:……次回死なないよう気をつけてね(ボソ/!?)




多分次で炭鉱の話が終わる…はず(何)
やたら長く伸ばしちゃってスイマセンっっ


様 読んでいただきありがとうございました!